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伝統の伊吹そば「伊吹在来そば」を全国PRへ

 千年近い歴史を持ち、国の地理的表示(GI)保護制度に登録されている米原市の特産品「伊吹在来そば(伊吹そば)」の知名度を高めようと、伊吹そばを扱う米原市と彦根市の7店舗でつくる「伊吹在来そばの会」が、クラウドファンディング(CF)に挑戦している。膽吹(いぶき)邦一会長(68)は「おいしさを広め、そば栽培の技術を後世に残したい」と意気込む。CFの目標金額は30万円。期限は6月2日まで。

↑写真:中日新聞より

 「伊吹そば」は伊吹山で修行する僧らによって、平安時代後期から鎌倉時代にかけて栽培が始まったとされる在来種。実が直径4.5mm以下と小粒で、製粉すると淡い緑になり、香りや甘みが強いのが特徴だ。生産量は年間平均で30トンほど。2019年、滋賀県内では近江牛に次いで2番目に、GIに登録された。

 伊吹在来そばの会は2022年4月に発足。開店準備中も含めて米原市内の5店と、彦根市内の2店でつくる。店舗で提供する際、商品に占める伊吹そばの割合が7割以上、乾麺などを販売する際は5割以上で「伊吹在来そば」の名称を使用できる店舗として認定している。

在来種伊吹そばHP

伊吹在来そばの会HP


 GIに登録された在来種の伊吹そばを使っていないものの、現状では「伊吹そば」や類似の名称を使っている乾麺などが販売されているケースがあり、会では「伊吹在来そば」の名称をブランドとして使用していく考えだ。CFで調達した資金は、のぼり旗の作成やイベント開催などに活用する予定。

 会長の膽吹さんは、これまで25年以上、伊吹そばの生産や製麺に携わり、そばの打ち方なども研究を重ねてきた。ブランド化のためには販路や提供先が必要として、自身も4月末から、自宅の離れを改装して10割そばを提供する「麺工房 伊吹長兵衛」(米原市伊吹)を開店する。
 「そばは、おいしければ遠方からも客が来てくれる。伊吹在来そばを日本三大そば長野県の『戸隠(とがくし)そば』、島根県の『出雲(いずも)そば』、岩手県の『わんこそば』)に負けないブランドにしたい」と力を込めた。

伊吹在来そば

古くから山岳信仰の霊場、修業の場として神聖視されてきた伊吹山で、平安時代後期から鎌倉時代にかけて中腹に開かれた太平護国寺で修行をする修行僧たちが食料を確保するためにそばの栽培を始めたことが起源とされる。

 松尾芭蕉の弟子、森川許六の文献「本朝文選」(1706年)には「伊吹蕎麦。天下にかくれなければ。からみ大根。又此山を極上とさだむ」と記され、そば文化が花開いた江戸時代にはすでに「伊吹在来そば」の美味しさが全国に知られていたことがうかがえる。

 江戸時代に膳所藩が編さんした「近江與地志略」(1734年)には秋になると琵琶湖の船の上からも伊吹山に広がるそばの白い花を見ることができたと伝わり、「伊富貴山之図」(1739年、彦根藩井伊家文書)には伊吹山の西面にそば畑が描かれている。

 太平護国寺が衰退した江戸時代以降は太平寺村の名産としてそば栽培は継続されたが、昭和の高度経済成長期に伊吹山の一部がセメント鉱山になったことに伴って住民が麓に移住し農家が激減。そばの栽培量も大幅に減少し、太平寺地区に近い峠地区で一部の農家が在来そばの栽培を守り続けていた。

 地元のそば愛好家が1995年に農家から種子を譲り受けて栽培したのを機に復活の機運が高まり、現在は姉川の渓谷沿いをはじめ谷口から広がる米原市内に栽培が拡大している。年間生産量は平均30㌧ほどになるという。

<中日新聞、滋賀夕刊新聞より>
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