バロックリュートでバッハ

バロックリュート、ギター合奏、旅行などの趣味の記録

「(続)音と演奏の良いCD」 交響曲編(5)

2024年12月28日 | リュート


マーラー交響曲

佐渡 裕(指揮) トーンキュンストラー管弦楽団 
録音 2019~2024年   ステレオ・ライブ録音
録音場所 ウィーン、ムジークフェラインザール、第5番のみハンブルク、エルプフィルハーモニー

現在までに発売されているCD
 交響曲第1番 巨人 録音2023年、交響曲第2番 復活 録音2019年
 交響曲第3番 録音2021年、交響曲第4番 録音2022年
 交響曲第5番 録音2019年、交響曲第6番 悲劇的 録音2024年
 交響曲第7番 夜の歌 録音2023年、交響曲第8番 録音2023年
 
全般的に音が良いのは特筆ものだ。その要素としては色々考えられる。
 第1は、録音場所でムジークフェラインザールでライブ録音されている。シューボックス型のこのホールは最新の技術で音響設計されたホールと比べると色々と指摘される点もあるが、録音する場合は適度に音がこなれて聴きやすい音になると感じる。それはここを本拠とするウィーンフィルの録音を聴いてみても分かる。トーンキュンストラー管弦楽団はこのホールで定期的にコンサートを開催している。
 第2は、録音スタッフの技術と録音機器の進歩。
レーベルはあまり耳にしないAVEX CLASSICS。社長の中島氏は、ワーナーミュージック・ジャパンのクラシック担当を経て、クラシック部門を設立したエイベックスに移籍してクラシック分野で功績をあげている。佐渡裕氏とも色々な仕事をしており、このCDもその一部となろう。注目のレーベルだ。

演奏については
 トーンキュンストラー管弦楽団は日本では知名度が低いものの100年以上の歴史あるオーケストラ。聴くのは初めてだがさすがウィーンに根付いた地の利でウィーンフィルと共通する優美な音色と迫力も併せ持った素晴らしい楽団と感じた。
 2015年から佐渡裕氏が音楽監督を務めているのだが着実に実績を重ねているようだ。このCDでもオーケストラの能力を十分に引き出して細部にわたって魅力的な音とハーモニーが聴ける。2025年にはこの組合せで来日するようだが日程の都合で行けないのは残念。

マーラーは少し曲が長いので今まで敬遠していたが初めて聴く気がする演奏に出会うことが出来た。



「(続)音と演奏の良いCD」 交響曲編(4)

2024年07月19日 | リュート


シベリウス交響曲全集

クラウス・マケラ(指揮) オスロ・フィルハーモニー管弦楽団 (4CD)
録音 2021年   ステレオ(デジタル)

シベリウスの交響曲全集には名演奏、優秀録音が多い。
以前、取り上げた「パーヴォ・ヤルヴィ パリ管弦楽団 録音2012年~2016年」、そして「Okko Kamu ラハティ交響楽団 録音2014」、「ロウヴァリ エーテボリ交響楽団 録音2019」等だが、素晴らしいクラウス・マケラの新録音が出てきた。

 クラウス・マケラはフィンランド生まれ現在28歳の天才指揮者。経歴は華やかで、2020年にオスロ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、2021年にパリ管弦楽団の音楽監督に就任。また、2027年にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者に就任予定。

 さすがに自国の指揮者とノルウェイのオーケストラの演奏らしくシベリウスの爽やかな風を感じる音。
マケラの指揮は最近の新鋭指揮者のような新しい解釈が新鮮だ。昔は聴こえてなかったような音が随所で聴こえてくるので興味深い。しかしながら全体的な完成度が高くこれからどこまで行くのだろう、と期待される。今、生演奏を聴いてみたい指揮者の筆頭に躍り出てきた。
 録音も新しく優秀で周波数特性も自然でダイナミックレンジも広く迫力もある。現在のNO.1 CDではないだろうか。

バロックリュートのガット弦をAquila製に戻す

2024年03月07日 | リュート


4年半前、バロックリュートに初めて張ったガット弦はAQUILAのHUタイプ。(Unsplit lamb gut strings type "HU")
  
当時はまだHLタイプはなかったと思うが、現在はHUタイプとHLタイプについて以下のような説明がある。
  HU タイプの弦は、リュート、テオルボ、アーチリュートなどの撥弦楽器のchanterelleには使用できません。
  そのような楽器には、オイルを塗った滑らかな牛ガット弦 HL を使用する必要があります。

 *Oiled smooth beef gut strings HL Type(HLタイプは最大径が1.6㎜なのでそれ以上はVタイプを使用するになる。)

 *Venice gut roped strings V type
   オイルを塗った弦でロープのように撚られていますが表面は滑らかで、他のナチュラルガット弦よりも高いねじれ強度を誇り
   高い弾性が特徴です。これにより、高調波が豊かになります。

*HUタイプは3ヶ月のみの使用でGamut製に変更し4年間使用してきた。
 今回エクステンション(9コースー13コース)の5本以外をAquila HLタイプに変更した。
 その理由は、
  ①Gamut製は弦がかなり柔らかいので1フレットの音程が高くなる。
   この対策としてナットの内側にクラシックギター用サドルを加工した板を必要なコースに挟んでいた。
   この傾向はAquila製でもあるが程度は低いのでサドル板は外した。ただ抑える指の力を弱めにフレット近くを抑える事が必要。
  ②最近の円安で輸入弦は高くなったが元値がAquila製の方が安い。
  ③ネットの購入サイトはドイツの Music-strings を使っているので、Aquila以外のSAVAREZ、PYRAMID、KÜRSCHNERも同時に購入出来て便利。

*HLタイプの印象
 まだ張ってからの日数が少ないが、期待通りのパフォーマンスを持っているようだ。
 HUタイプは中域の音のざらつき感がガットらしいと思っていたが、HLタイプはオイルを塗って有るためそれほどでもない。
 これくらいが自然で良いと思う。1フレットの音程問題も抑え方に慣れれば克服できるレベルだ。




(参考)CDストリングス
    バスライダー式のバロックリュートには中低域にCDタイプの合成弦を張っているが、AQUILAのサイトに分かりやすい特徴が掲載されている。
    発売当初は結構切れたが現在ではそれは解消されている。

   *CDストリングス
    CD タイプの弦は、リュートおよびバロックギターの低音域および中低音域で使用される合成弦で、
    押出成形段階で合成材料に金属銅粉末を充填してあり比重が大きいことが特徴です。
    表面は天然腸の表面に似ています。 弦はパーカッシブでボーカルのトーンを持っていますが、そのサウンドは豊かで、
    オクターブでペアの弦と完全にブレンドされます。
    弦はチューニングの安定性に優れています。 明るすぎてリュートの本来の性質に適合しない現代の巻弦の代わりとなります。

目覚めよと呼ぶ声が聞こえ(BWV645)を弾く

2024年01月02日 | リュート
2024年元日に、Wachet auf ruft uns die stimmeを録音した。
 以前も録音しているが、Nigel Northの新CDに収録されていたのを聴いてTAB譜を見直しした。
色々と気になるところもあるがなんとか納得できる録音になったと思う。
パイプオルガンで弾かれる四声の音をなるべく省かないようにしたつもりだが演奏は非常に難しい。

https://youtu.be/kA07Sp5g2NM




プレリュード BWV996をバロックリュートで弾く

2023年09月11日 | リュート
 BWV996はバッハがLautenwerckの為に作曲したもので色々な楽器用に編曲されている。
クラシックギター界ではリュート組曲第1番と呼ばれているがあまり適切とは言えないだろう。
ファクシミリは五線譜で書かれており、そのままTAB譜に書き直してもバロックリュートでは弾けないので演奏家の方々が編曲したTAB譜が出版されている。
クラシックギターで弾く場合は音域や弦の数の制約を受けるのでは編曲にはかなりの妥協が必要となる。

 この曲は単なるプレリュードとは異なり、後半はfughettaになっている。
このフゲッタ部をバロックリュートで弾くのが非常に難しく、今まで弾いてきた曲の中で最も技術的に困難であった。
もう少し速めのテンポで弾きたいところだが私にはこれが精一杯。

https://youtu.be/TS3niYt1duE

ブーレ BWV1009を弾く

2023年04月23日 | リュート
 BWV1009全曲録音プロジェクトは、5曲目のブーレを録音した。
この曲は私にとって最も重要で思い出深い曲だ。最初に弾いたのはクラシックギターで大学時代、今から57年前。
当時は現在のようにネットでなんでも分かる時代とは違い、電気科の私には楽譜以外何の情報も無かった。
セゴビアの編曲を再編したと思われる楽譜を当時は何の疑問も持たずにそのまま弾いていたが解釈も運指も??
とにかく一生懸命練習して、京都会館第2ホールで開催された大学のギタークラブ定期演奏会で独奏した。
ところがここで一生忘れられない事件が;;;;
聴衆は千名近くいただろうがスポットライトを浴びていたので暗黒の空間で一人ぽつんと弾いている異様な感覚。
終盤に入ったところで止まってしまいやり直してもまた止まる。少し戻って弾き直して何とか最後まで。
アンケートに、「・・さんの演奏はバッハとは違う」とあり当時は意味が分からなかったが今になって納得。
バロックリュートに転向した今もあの時の事は鮮明に思い出すし、大きな糧になっていると思う。
 当時よりは勉強したつもりだがやはりバッハもバロックリュートも難しい。

https://youtu.be/zMZEIIDh8zU

Nigel North氏のバッハ新録音を聴く BACH ON THE LUTE 5-6

2023年03月31日 | リュート

4月21日のCDリリースに先立って演奏を聴くことが出来た。

以下、「前作」は「BACH ON THE LUTE 1-4(1993-1996)」を、「今回」は「BACH ON THE LUTE 5-6(2022)」を指す。この間30年近くの歳月が経過している。

CD収録曲
 前作は、無伴奏チェロ組曲(BWV1007-1012)と無伴奏ヴァイオリンソナタ・パルティータ(BWV1001-1006)のリュート版
 今回は、Bachのリュート作品とされているBWV995,996,997,998,999,1000,1006a 他

楽器について
 前作が、Thomas Neitzert 1986のジャーマンテオルボ、今回は、Lars Jönssonのバスライダータイプ。
 弦は写真から推測すると、前作では、高音がナイロン、フロロカーボン、低音は巻弦という当時主流の弦と思われる。
 今回は、高音はAquila社のナイルガット弦、低音もAquila社のCD弦と思われる。

音色について
 前作では低音弦が巻弦だったので残響時間が長いが、今回はCD弦なのでガット弦に近い自然な感じの低音が聴ける。
 今回は高音についてもナイルガット主体と思われガット弦に近い音が聴ける。

演奏について
 予想に違わず素晴らしいもので従来からの巧みなテンポの揺らぎによる繊細な表現が健在。
 前作では若干派手と思われるアーティキュレーションで、聴けばNigelの演奏とすぐ分かった。
 今回は円熟味を加えてこれぞBACHという域に。逆に誰の演奏かは聴いただけでは分からなくなった。

テンポについて
 同等の曲であるBWV1000,BWV995,BWV1006aの13曲について演奏時間をもとにテンポを比較してみた。
 (BWV1000はBWV1001のFugueよりも2小節多いが、無視できる程度)
 BWV995のSarabandeとBWV1006aのLoure以外は、以前の演奏に比べてテンポが0.8~0.93倍と遅くなっている。
 Sarabandeはベルリンの壁が崩壊した時にロストロポーヴィチが弾いた曲だが少し速くなっている。Loureは同テンポ。

 前作の演奏は結構速くそれが非常に刺激的で大きな魅力にもなっていた。
 今回の演奏は自然なテンポで気持ちよく聴くことが出来る。
 指揮者の場合でもよくある傾向だが年齢を重ねて円熟の境地に至りじっくりと聴かせるべくテンポも遅めでと。

録音について
 今回は、最新の機器と技術で行われたと思われ非常にクリアだがマイルドさも感じる優秀なもの。
 楽器の大きさや距離感も好ましく表現されている。

 私はBWV1001-1006やBWV1007-1012のトランスクリプションが好きでBWV995-1006aはあまり弾いてなかった。しかしながら今回の演奏を聴いて少し勉強してみようかという気になった。


Nigel North 氏のBACH新録音

2023年01月23日 | リュート


 「BACH ON THE LUTE」という4CDが1990年台に出されている。無伴奏ヴァイオリンソナタ/パルティータ(BWV1001-1006)と無伴奏チェロ組曲(BWV1007-1012)をバロックリュートにトランスクリプションしたものである。
私はクラシックギターでバッハを弾いていた頃から現在までこれらのCDは数えきれないほど聴いてきたものだ。

 今回、「Volumes 5&6 of BACH ON THE LUTE」と位置付けて2CDを出すそうだ。
Complete Lute Works (BWV 995,996,997, 998,999,1000, 1006a)と何曲かのおまけ付き。
録音は昨年7月に終了していてこの3月にリリースの予定。

 今回が氏の最後の録音になるかもしれないとの事だが、費用を賄うためのクラウドファンディングが行われている。
私も僅かばかりの寄付をしたが、これは氏への今までの感謝の気持ちともう一つ。。
100ドル以上の場合、「a Bach on the Lute tablature edition of the Lute Works. (Le Luth Dore, 2022).」という一節に目が眩んだということで。
 バロックリュートを始めて以降、氏の演奏したTAB譜が喉から手が出るほど欲しかったが、出版予定は公表されていたものの出なかった。私も最期のバッハ録音を始めたところなので3月が待ちきれないところだ。





プレリュード BWV1009を弾く

2023年01月20日 | リュート
 新年から始めたBWV1009全曲録音プロジェクトだが、正月のAllemandeに続いて第1曲のPreludeを録音した。
Allemandeと順番が逆になったが、順に聴いてみると自然につながって聴こえたのでまあ良いかな。。

https://youtu.be/jW-yoTlYPM0

 プレリュードは9年前に録音していたが、今聞き直してみると隔世の感がある。
低音が巻弦だったので残響が長すぎて聴きずらいが今よりずっと速いテンポで弾いていた。やはり当時のほうが指が良く動いていたのだろう。もう一つは、当時メトロノームのように一定のテンポで弾いていたから速い。
 今は、最初はメトロノームで弾けるまで練習し、その後は自分のアーティキュレーション、フレージングで練習を重ねるだけ。

 でも今でもよく分からないのが、弾いている時に聴いている演奏と録音したものを聴いてみた時のギャップの大きいこと。
 強弱やテンポの変化を付けたつもりでもその何分の一しか付いてない。非常に速く弾いているつもりでも聴いてみるとゆっくりとか・・ (プロの演奏ではゆったり弾いているようでも演奏時間は予想よりずっと短い)
音楽とはなんと奥深く不可解なものだろうか。

なんでこうなったのか分からない??? まるでminiサイバー攻撃のよう。。。

2023年01月03日 | リュート


 昨日の夕方にYoutubeにアップしたアルマンドだが、異常な勢いで視聴回数が増加した。
丸1日で約950回という自分史上経験のないペース。7年前に同曲をアップしたものは7年で僅か600回;;
バッハとかバロックリュートとかのマイナーな分野で、しかもアマチュアの下手な演奏だから後者が当たり前の数字。

 少しYoutubeのアナリティクスページで調べてみた。
リンク元は、Facebookやgooブログは数パーセント、Youtubeのチャネル登録者も数パーセントで殆どはYoutubeのトップページから入っている。
コメントを見ると、英語が5件、フランス語が1件でみんな好意的な内容。いいね!も50個付いていて私的にはかなり多い。
日本の夜中ということも考えると殆どが海外からのアクセスということだろう。正月でみんな暇ということか。
まあ、単純に喜んでおこうかな。

 以前、「玉川温泉地獄の噴煙」という短い動画をアップしたときは1時間ほどで4,000回以上だった。
他に、国道で大型トラックに幅寄せをされ接触事故になりかけたドラレコ動画をアップしたらこれもすごいペースで視聴された。嫌がらせのコメントも入ってきたので即削除したが。


アルマンド BWV1009 を弾く

2023年01月02日 | リュート
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお付き合いください。

 さて、今日は天気も良く温度も適度に上がってガット弦の音も安定するのでエアコンを切って録音をした。
今年は無伴奏チェロ組曲第3番全曲をバロックリュートで録音する、という第1番に継ぐプロジェクトをスタートした。
プレリュードから順番に録音する予定だったが、弾きやすいアルマンドが最初になってしまった。
学生時代からクラシックギターで弾いていた曲なのでバロックリュートで弾くのは比較的簡単だった。
しかしながら、後期高齢者になってからは難しい曲に思えてきた;;;

https://youtu.be/7BqKNmdjxfY

 実は、7年ほど前に、低音に巻弦を張った同じ楽器での録音をアップしているが聴き比べてみると全く違う音がする。
興味ある方は聴いてみてください。
https://youtu.be/jGy_39BO9h0

ジーグ BWV1007 を弾く

2022年12月13日 | リュート
8月終わりの暑い時に始めたBWV1007プロジェクト、3か月半経った師走にやっと最後の曲の録画を終了した。

 ジーグはたった2分ほどの短い曲だが何しろテンポが速いので難儀をした。十分な速さではないがこれが精一杯。
ゆっくりの曲は一音一音を頭で制御しながら弾いていくことが出来て、TAB譜の色々な記号も見ながら弾く余裕がある。
速い曲は頭の回転が追い付かないので指が勝手に動くようになるまで練習が必要だ。他の方がどうなのか聞いてみたいです。
   https://youtu.be/Wpt9psey5Jc

これで組曲の6曲が揃ったので再生リストを作成してみた。全部で22分位なので短い組曲ですね。
   https://www.youtube.com/playlist?list=PLyp66vUzbGrZxkhbJBgN8geWS6lCnCBhZ
 多分、このリンクで視聴できるはずですが。

新年からはBWV1009プロジェクトをスタートしたいと思っています。
既に6曲中5曲は巻弦やCD弦で録音していますが、古いものは動画でなかったりで新たにガット弦で揃えたいと思います。


 

クーラント BWV1007 を弾く

2022年11月21日 | リュート
 BWV1007(無伴奏チェロ組曲第1番)の録音プロジェクト
第5弾は第3曲目のクーラントを録音した。
 これで残りは最終曲のジーグだけになった。暑い夏にプロジェクトを始めたのにもう冬になってしまった。。。
クーラントはテンポの速い舞曲なのでもう少し速く弾きたいのだがこれが限界;;;

https://youtu.be/7n-WsOtvsYY