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4月21日のCDリリースに先立って演奏を聴くことが出来た。
以下、「前作」は「BACH ON THE LUTE 1-4(1993-1996)」を、「今回」は「BACH ON THE LUTE 5-6(2022)」を指す。この間30年近くの歳月が経過している。
CD収録曲
前作は、無伴奏チェロ組曲(BWV1007-1012)と無伴奏ヴァイオリンソナタ・パルティータ(BWV1001-1006)のリュート版
今回は、Bachのリュート作品とされているBWV995,996,997,998,999,1000,1006a 他
楽器について
前作が、Thomas Neitzert 1986のジャーマンテオルボ、今回は、Lars Jönssonのバスライダータイプ。
弦は写真から推測すると、前作では、高音がナイロン、フロロカーボン、低音は巻弦という当時主流の弦と思われる。
今回は、高音はAquila社のナイルガット弦、低音もAquila社のCD弦と思われる。
音色について
前作では低音弦が巻弦だったので残響時間が長いが、今回はCD弦なのでガット弦に近い自然な感じの低音が聴ける。
今回は高音についてもナイルガット主体と思われガット弦に近い音が聴ける。
演奏について
予想に違わず素晴らしいもので従来からの巧みなテンポの揺らぎによる繊細な表現が健在。
前作では若干派手と思われるアーティキュレーションで、聴けばNigelの演奏とすぐ分かった。
今回は円熟味を加えてこれぞBACHという域に。逆に誰の演奏かは聴いただけでは分からなくなった。
テンポについて
同等の曲であるBWV1000,BWV995,BWV1006aの13曲について演奏時間をもとにテンポを比較してみた。
(BWV1000はBWV1001のFugueよりも2小節多いが、無視できる程度)
BWV995のSarabandeとBWV1006aのLoure以外は、以前の演奏に比べてテンポが0.8~0.93倍と遅くなっている。
Sarabandeはベルリンの壁が崩壊した時にロストロポーヴィチが弾いた曲だが少し速くなっている。Loureは同テンポ。
前作の演奏は結構速くそれが非常に刺激的で大きな魅力にもなっていた。
今回の演奏は自然なテンポで気持ちよく聴くことが出来る。
指揮者の場合でもよくある傾向だが年齢を重ねて円熟の境地に至りじっくりと聴かせるべくテンポも遅めでと。
録音について
今回は、最新の機器と技術で行われたと思われ非常にクリアだがマイルドさも感じる優秀なもの。
楽器の大きさや距離感も好ましく表現されている。
私はBWV1001-1006やBWV1007-1012のトランスクリプションが好きでBWV995-1006aはあまり弾いてなかった。しかしながら今回の演奏を聴いて少し勉強してみようかという気になった。