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ミーターの大冒険 第七部 太陽系 第5話 土星から月へ

2023-01-08 21:40:25 | 太陽系
167第5話土星から月へ
ミーターの大冒険
第七部
太陽系
第5話

土星から月へ

あらすじ

 ファウンデーション暦492年、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星から出発して太陽系に入った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウの主人アルカディアの志しを携えて、アルカディアのなし得なかった志しの実現の領域に確実に入ろうとしていた。

 はたして地球の放射能汚染を駆除することができるのか?

 ミーターは、太陽系と地球についての最終的情報を得ようとしてアルファに降りることにした。
 その前にメルポメニアで入手した図書館の蔵書に記されていた地球と地球人類、そしてアルファの住民の起源の土地、ニフについての恐怖の出来事について驚嘆する。

 その古文書のなかに、メルポメニアの滅亡寸前に記されたであろう『スペーサーとアルファ』なる書物をミーターは、イルミナに提示し、その概略の説明をさせる。

 ニフの起源と核戦争の事実であった。

 イルミナはまたニフ人が二種類いることを語る。

 ニフ人たちは、核融合という理想のエネルギーを人類に提供するものの、謙譲の美を進んで実行し、祖先がそうであったように、移動の民に目覚め、密かに宇宙に出て行った。
 彼らは後にシンナックス人として知られるようになる。それは、ナックの思想に同調していたニフ人以外にも地球全土に人種を越えて散らばっていったからである。

 残ったニフ人たちは、地球各地で放射能に汚染された環境浄化をしつつ、最後まで地球を守り続けた。が、最終的には地球を手放さなくてはならなかった。そして彼らはテラフォーミングを必要としていたアルファに移住した。

 イルミナは、銀河の歴史的収束点前後の大事件について繙(ひもと)く。

 それは、ケルドン・アマディロ博士の「核反応増強装置」による「地球放射能汚染計画」であった。

 アマディロは、イライジャ・ベイリーとハン・ファストルフ博士への恨み骨髄に達するほどに執念を燃やし、ついに復讐の刃を地球人撲滅という悲惨で残酷なシナリオを完成させようとしていた。

 ついに太陽系の入り口にたどり着いた。人類の母なる太陽系。そして夢の地球。

 ミーターは、ロボットには病原菌は感染しないことを承知のうえで、万全の防備態勢でアルファに降り立った。そこには一人の少女が待ち受けていた。

 ミーターは、まずこの少女が語る彼らの星の名称がメルポメニアで入手したデータと食い違っていることに驚嘆する。

 さらにミーターはアルファ人の特異性について知らされる。

 そしていよいよ待望した太陽系に突入して行く。
 
 鋭さを増したミーターの推理力は予測通りに土星に遭遇させ、地球のかたわれともいわれる月に不死の従僕の気配を感じさせる。

167
イルミナ 土星ですね。見事な光景です。これが、デニアドールのデータのなかにあった太陽系の特異性のですね。驚きですねぇ!

ミーター しかも驚くことに、この星の環の厚みは、最大で数10~数100メートルほどしかない。間違いない。この星系が太陽系だ。
 
イルミナ 「老年の神」というなまえにふさわしい風体ですね!
 ミーターさん、それにしても、もの静かに眺めて、何を考えているのですか?

ミーター うむ、我らの長い年月だよ。

イルミナ そうですよね。約5年目ですから。

ミーター もっと長い時間だよ、イルミナ。アルカディアの思いからはじまって、過去にどんどんさかのぼり、500年前のトランターでのボー・アルーリンに投げかけたハリ・セルダンの言葉を思い出していたんだ。

イルミナ そうでしたか。たしか、「きみは心理歴史学プロジェクトに参加する。約束するが、きみはこの決心をけっして後悔しないだろう」と言ったのね!

ミーター そうだ。イルミナ、じゃあおまえに訊くが、銀河帝国辞典編纂図書館の棚の一番最初の蔵書はなんだ?

イルミナ まあ、よく存じてますよ。わたし自身のことですから。
 まず、「銀河百科辞典」の第1巻からはじまって、492年分の蔵書が続いてます。

ミーター それじゃ、次の棚には?

イルミナ ハリ・セルダンの論文集です。
 ハリ・セルダンの著作権がハリ・セルダンのもの4冊あります。
一冊目は『歴史は数学的分析に役立つか? (仮説)』 トランター数学研究協会機関誌 Journal vol.239 2.12011。

二冊目は、『心理史』12035、ストリーリング大学出版局。

三冊目は、『 入門心理史』、12039、
ストリーリング大学出版局。

4冊目は、『ファウンデーション募集マニュアル』12042、ファウンデーションプレス、ターミナス。その4冊目は、ターミナスでガール・ドーニックがたずさわった。

ミーター だな。そしてその続きが、ちょっと分厚い『ガール・ドーニックによるハリ・セルダンの生涯』だな?そして、ハニスさんのお手柄でベリス岬の洞窟でこの文書の欠落していた部分がみつかった。

 それの最後の章を反芻していたんだ。

イルミナ どういうことですか。?

ミーター 「極素輻射体」の謎めいた暗号の意味が今わかったような気がしたんだ。

 「極素輻射体」は、ユーゴ・アマリルが主に考案した、後で、複数個あったと思われるが、ハリはそれら二分して、一方をウォンダとステッティン・パルヴァーの精神感応派に渡した、残りは自分が保持し、ガールに渡したと思われる。
 そしてウォンダとの別れがやって来る。最後の段落で、二人は、「極素輻射体」を最後に一緒に照射した。
 「セクション33A2D17ー星界の果て」!

 第1ファウンデーションに渡された「極素輻射体」というのは、おまえ自身だ!
 そして、そのうちの一つは、惑星に不釣り合い衛星-月にいる存在が保有している。

 その月にいる存在が、不死の従僕、いわゆるRダニール・オリヴォーだ。

 地球が、「セクション0」なんだよ、イルミナ!
 地球が、「星界のはじまり」なんだ!

イルミナ まあ!! じゃあ、ミーターさんは、やっぱり、後悔してないのですね!


ミーターの大冒険 第七部 太陽系 第4話 オールトの雲

2023-01-07 11:15:34 | 太陽系
166第4話オールトの雲
ミーターの大冒険 
第七部 
太陽系
第4話 
オールトの雲

あらすじ

 ファウンデーション暦492年、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星から出発して太陽系に入った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウの主人アルカディアの志しを携えて、アルカディアのなし得なかった志しの実現の領域に確実に入ろうとしていた。

 はたして地球の放射能汚染を駆除することができるのか?

 
 ミーターは、太陽系と地球についての最終的情報を得ようとしてアルファに降りることにした。
 その前にメルポメニアで入手した図書館の蔵書に記されていた地球と地球人類、そしてアルファの住民の起源の土地、ニフについての恐怖の出来事について驚嘆する。

 その古文書のなかに、メルポメニアの滅亡寸前に記されたであろう『スペーサーとアルファ』なる書物をミーターは、イルミナに提示し、その概略の説明をさせる。

 ニフの起源と核戦争の事実であった。

 イルミナはまたニフ人が二種類いることを語る。

 ニフ人たちは、核融合という理想のエネルギーを人類に提供するものの、謙譲の美を進んで実行し、祖先がそうであったように、移動の民に目覚め、密かに宇宙に出て行った。
 彼らは後にシンナックス人として知られるようになる。それは、ナックの思想に同調していたニフ人以外にも地球全土に人種を越えて散らばっていったからである。

 残ったニフ人たちは、地球各地で放射能に汚染された環境浄化をしつつ、最後まで地球を守り続けた。が、最終的には地球を手放さなくてはならなかった。そして彼らはテラフォーミングを必要としていたアルファに移住した。

 イルミナは、銀河の歴史的収束点前後の大事件について繙(ひもと)く。

 それは、ケルドン・アマディロ博士の「核反応増強装置」による「地球放射能汚染計画」であった。

 アマディロは、イライジャ・ベイリーとハン・ファストルフ博士への恨み骨髄に達するほどに執念を燃やし、ついに復讐の刃を地球人撲滅という悲惨で残酷なシナリオを完成させようとしていた。

 ついに太陽系の入り口にたどり着いた。人類の母なる太陽系。そして夢の地球。

 ミーターは、ロボットには病原菌は感染しないことを承知のうえで、万全の防備態勢でアルファに降り立った。そこには一人の少女が待ち受けていた。

 ミーターは、まずこの少女が語る彼らの星の名称がメルポメニアで入手したデータと食い違っていることに驚嘆する。

 さらにミーターはアルファ人の特異性について知らされる。

 そしていよいよ待望した太陽系に突入して行く。
 

166
ミーター イルミナ、太陽系に入ったな。

イルミナ そうです。アルファ三連星の引力圏を離脱しました。
 まず、オールトの雲に突入します。
 オールトの雲は、ホウキ星と言われる彗星の生じる揺りかごとも呼ばれているところです。

ミーター コメットのことだよね。

イルミナ そうです。恒星(太陽)に近づくと
長い尾を放つようになる天体のことだわ。
 それが太陽に接近し、太陽系の内円あたりに来ると尾を持ち始めるのよ。そして地球あたりでその光景は見事に綺麗な尾をもつ、ってことね。
 それで、なかにはあの流星や流星群の母体のもとでもあると言われてます。

ミーター 流星の母体ね!
 さぞ、地球上に降り注ぐ流星雨は素晴らしいだろうな。

イルミナ でもミーターさん、もし地球に大気がなかったら、直接地表に降り注いで、恐ろしい状態になってしまうわ。綺麗だ、って言ってる場合じゃ、ないですよ。

ミーター そうだな、問題は、どの程度、地球に大気の層が残っているかだよなぁ!

 待てよ、そう言えば、あのアルファのモノリーさんが教えてくれたアルファの天候のコントロールの技法の秘密。

イルミナ なんですか、もしかして、バイオテクノロジーの応用のことですか。

ミーター そう、アルファの気候コントロールはバイオテクノロジーによる。
 そしてそれはキノコの菌糸をカビレ山頂から飛ばすっていう方法なんだ。

イルミナ なんですって!

ミーター まさしく、キノコの菌糸の流星化だ。地球の大気蘇生に応用できるかもしれない。
 イルミナ、またしてもお前のお手柄だかもしれない。

イルミナ ありがとうございます。でもそうであった場合、そのキノコ、どこで栽培し、調達するのですか?







ミーターの大冒険  第七部  太陽系   第3話  仏陀の悟り

2023-01-04 20:38:33 | 太陽系
165第3話仏陀の悟り
ミーターの大冒険 
第七部 
太陽系
第3話 

仏陀の悟り

あらすじ

 ファウンデーション暦492年、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星から出発して太陽系に入った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウの主人アルカディアの志しを携えて、アルカディアのなし得なかった志しの実現の領域に確実に入ろうとしていた。

 はたして地球の放射能汚染を駆除することができるのか?

 
 ミーターは、太陽系と地球についての最終的情報を得ようとしてアルファに降りることにした。
 その前にメルポメニアで入手した図書館の蔵書に記されていた地球と地球人類、そしてアルファの住民の起源の土地、ニフについての恐怖の出来事について驚嘆する。

 その古文書のなかに、メルポメニアの滅亡寸前に記されたであろう『スペーサーとアルファ』なる書物をミーターは、イルミナに提示し、その概略の説明をさせる。

 ニフの起源と核戦争の事実であった。

 イルミナはまたニフ人が二種類いることを語る。

 ニフ人たちは、核融合という理想のエネルギーを人類に提供するものの、謙譲の美を進んで実行し、祖先がそうであったように、移動の民に目覚め、密かに宇宙に出て行った。
 彼らは後にシンナックス人として知られるようになる。それは、ナックの思想に同調していたニフ人以外にも地球全土に人種を越えて散らばっていったからである。

 残ったニフ人たちは、地球各地で放射能に汚染された環境浄化をしつつ、最後まで地球を守り続けた。が、最終的には地球を手放さなくてはならなかった。そして彼らはテラフォーミングを必要としていたアルファに移住した。

 イルミナは、銀河の歴史的収束点前後の大事件について繙(ひもと)く。

 それは、ケルドン・アマディロ博士の「核反応増強装置」による「地球放射能汚染計画」であった。

 アマディロは、イライジャ・ベイリーとハン・ファストルフ博士への恨み骨髄に達するほどに執念を燃やし、ついに復讐の刃を地球人撲滅という悲惨で残酷なシナリオを完成させようとしていた。

 ついに太陽系の入り口にたどり着いた。人類の母なる太陽系。そして夢の地球。

 ミーターは、ロボットには病原菌は感染しないことを承知のうえで、万全の防備態勢でアルファに降り立った。そこには一人の少女が待ち受けていた。

 ミーターは、まずこの少女が語る彼らの星の名称がメルポメニアで入手したデータと食い違っていることに驚嘆する。

 さらにミーターはアルファ人の特異性について知らされる。

 そしていよいよ待望した太陽系に突入して行く。
 

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イルミナ それにしてもスペーサーのオーロラのアマディロたちは地球を滅亡させ、今度はメルポメイア人たちが地球の移民のアルファ人たちを殲滅しようとして、失敗しているんですね。

ミーター 失敗した理由の最たるものは、ハッキリしている。一回目も実はアマディロの陰謀を見破っていたにもかかわらず人類が強く銀河に展開するのに故郷喪失という代価を支払う必要がある、とのジスカルドの第零の法則による切羽詰まった計らいであったんだ。
 でも、二回目は、それを敢えて許さなかった。セッツラーの冒険心に地球人類の将来を賭けたんだ。ダニールはスペーサー文明の衰退、いや歪みを決して見過ごしにはしなかった。スペーサーがいずれ滅ぶ運命であると達観していた。

イルミナ そういうことね。それにしても、第零の法則は、地球文明の曙時代のある布教者の教えに似ていますね。

ミーター それって誰だっけ?

イルミナ 地球太古のテンジクのシッダールタ、とかいった人物よ。「汝、執着するなかれ!」っていう、あれよ。

ミーター なるほどね、地球人は、地球に執着した。スペーサーはスペーサー・ワールドに執着した。
 今度は銀河帝国は銀河に執着した。だから滅んたんだ。

イルミナ 深い真理ですね!
 じゃあ、それが真理でしたら、地球の汚染も、銀河の復興も、そのままにしておいた方がいいのではないんのでしょうか?

ミーター 本当だ。おまえの言うのが正しいのかも知れない。
 う~。深い。悩むなあ。折角、太陽系の入り口に来たというのに、断念することが正しいのか?

イルミナ ごめんなさい。要らぬことしゃべっちゃいました。わたしとしたことが...
 また軽はずみでした。取り返しがつかないわ。

ミーター いいや、おまえの言ったことは実に意味深い。それでこそファウンデーションの図書館の存在意義だ。かえってお礼を言いたいくらいだ。
 恐れ入った!
 それに、地球復興と銀河復興もアルカディアの悲願であるからと言って、そう単純に「はい、そうですか」と言っておめおめと従うというのも皮相的判断だ。
 この考えは、今までの努力と俺の仲間たちの願いと言えども、それを引き換えにしても、根本から考え直す意味があると思う。実に大事で究極的チャレンジだ。
 イルミナ、おまえだったらどうする?

イルミナ やっぱりふってきましたね。 
 
 どうでしょう、地球まで行ってからでも遅くはないと思いますけど。不死さんにお会いしてからでも遅くはないと思いますけど。

ミーター うむ!

 それから、ここアルファの空間座標の位置なんだが、メルポメイアで入手した宇宙立体図表を頼ってここまでやって来たんだけどな。

イルミナ なんですか?

ミーター メルポメイア人がアルファに破滅兵器を投下するにはだいぶ不利な位置にアルファはある。
 太陽系からみると、アルファはどちらかというとメルポメイアの反対側に近い。

イルミナ じゃあ、わたしたち、遠回りして来たっていうことになっちゃったていうのね。

ミーター そうなんだ、でもこれが不幸中の幸いになった。

イルミナ どういうこと?

ミーター 座標の誤差を船のコンピューターが計算して、太陽系の正確な位置を明示してくれた。
 それから、もう一つのこともわかった。
 
 スペーサーたちの50の惑星群の座標をみると、太陽系を包んでいるような配置なんだ。
 ところが、ここアルファから銀河深遠部に向かって極めて狭い抜け道っていうか、ここだけがポカンと開いてた。ここから抜け道ハイウェイがひらかれている。

イルミナ ということは、のちにセッツラーが銀河に向かって拡散していった中継地が、ここアルファっていうことね。
 このルートを設定したのは、ダニールさんっていうのね。ダニールさん、凄いわ。
 それでかえって太陽系の位置がわかったっていうのね!


ミーターの大冒険 第七部 太陽系 第2話 ダニールの壮大なトリック

2023-01-03 18:20:27 | 太陽系
164第2話ダニールの壮大なトリック
ミーターの大冒険 
第七部 
太陽系

第2話 
ダニールの壮大なトリック

あらすじ

 ファウンデーション暦492年、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星から出発して太陽系に入った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウの主人アルカディアの志しを携えて、アルカディアのなし得なかった志しの実現の領域に確実に入ろうとしていた。

 はたして地球の放射能汚染を駆除することができるのか?

 
 ミーターは、太陽系と地球についての最終的情報を得ようとしてアルファに降りることにした。
 その前にメルポメニアで入手した図書館の蔵書に記されていた地球と地球人類、そしてアルファの住民の起源の土地、ニフについての恐怖の出来事について驚嘆する。

 その古文書のなかに、メルポメニアの滅亡寸前に記されたであろう『スペーサーとアルファ』なる書物をミーターは、イルミナに提示し、その概略の説明をさせる。

 ニフの起源と核戦争の事実であった。

 イルミナはまたニフ人が二種類いることを語る。

 ニフ人たちは、核融合という理想のエネルギーを人類に提供するものの、謙譲の美を進んで実行し、祖先がそうであったように、移動の民に目覚め、密かに宇宙に出て行った。
 彼らは後にシンナックス人として知られるようになる。それは、ナックの思想に同調していたニフ人以外にも地球全土に人種を越えて散らばっていったからである。

 残ったニフ人たちは、地球各地で放射能に汚染された環境浄化をしつつ、最後まで地球を守り続けた。が、最終的には地球を手放さなくてはならなかった。そして彼らはテラフォーミングを必要としていたアルファに移住した。

 イルミナは、銀河の歴史的収束点前後の大事件について繙(ひもと)く。

 それは、ケルドン・アマディロ博士の「核反応増強装置」による「地球放射能汚染計画」であった。

 アマディロは、イライジャ・ベイリーとハン・ファストルフ博士への恨み骨髄に達するほどに執念を燃やし、ついに復讐の刃を地球人撲滅という悲惨で残酷なシナリオを完成させようとしていた。

 ついに太陽系の入り口にたどり着いた。人類の母なる太陽系。そして夢の地球。

 ミーターは、ロボットには病原菌は感染しないことを承知のうえで、万全の防備態勢でアルファに降り立った。そこには一人の少女が待ち受けていた。

 ミーターは、まずこの少女が語る彼らの星の名称がメルポメニアで入手したデータと食い違っていることに驚嘆する。

 さらにミーターはアルファ人の特異性について知らされる。

 そしていよいよ待望した太陽系に突入して行く。
 

164

イルミナ それがそうだったら、都合がいいですね。アルカディアのご期待の大きな二つを一緒に応えられるんですから。それって一石二鳥って言うんですよね。

ミーター イルミナ、そんな軽い表現で、銀河復興の大役を言っちゃよくない。仮にも、その一石が「一流星」と言うのは当たっているけど二鳥というのは少し不謹慎じゃないのか。

イルミナ そうですね。ごめんなさい。また軽はずみでした。それでも都合がいいと思ったものですから。

ミーター そこだよ、イルミナ。キミって、必ず 
ずれた表現する時に限って、なぜか究極のまとに嵌まる。言うなれば、事態を要らぬ方向から力を抜いた態度で接すると、物事の核心を衝く。ヤッパリ、その能力、例の「フィードフォワード症候群」というんじゃないかい。

イルミナ お褒め頂いて恐縮です。

ミーター そのことなんだが、一石三鳥という可能性もある。
 一見、我らの使命、アルカディアの悲願の達成を目指して我らは必死に励んで来た。ところが、どうであろう、一方の不死の従僕も向こうから我々を引き付けて来た、とも言えるんじゃないのか?
 いわゆる、答えというものは、答え自身の方で、答えられることを望んでいるのじゃないかい。

イルミナ そうですね。それって引力って言うんですよ。きっとそうに違いありません。それで、一石三鳥の三番目は不死の従僕に会うことですよね。

ミーター イルミナ、よくぞ言ってくれた。もしかしたら、一石四鳥かも知れないぞ。

イルミナ 一石三鳥の三番目が不死の従僕さんに会うことでしたら、一石四鳥の四番目はなんでしょうか?

ミーター うん、それなんだがなあ、我ら今までここに到達するまで、ずっと謎解きっぱなしだったと思わないかい。
 いわば、銀河の歴史の結束点を抉じ開けてきたっていう感じだ。地球の位置や歴史的事実などをな。
 そこで思い出したことは、ハニスさんからのメッセージだよ。

イルミナ なんでしたっけ?

ミーター 我らのあとでくる別動隊のメンバーに歴史学者がいるってことさ。たしか、ジャノヴ...

イルミナ ジャノヴ・ペラロットでしたわ。

ミーター そう、そう。ジャノヴ・ペラロット。
 全銀河の歴史を掘り出す人物。
 我らが不死さんに会ったら、もう不死さんとジャノヴ・ペラロットに、銀河歴史の問題は全部丸投げできるっていうこと。これで五つあるなかの四番目の使命をまず最初にクリアできるってわけ。
(おさらいしよう。アルカディアの六つの悲願
1. 地球を探す
2. 地球の放射能除染
3. 不死の従僕に会う
4 銀河歴史の記憶消滅の再起動
5. 4つのグループの結束
6. 以上5つのプロセスで銀河を再復興できる)

 この太陽系にこれからユックリと侵入して行く。そしたらどっかで不死さんと遭遇できるに違いない。
 まずネプチューンの軌道内に入るんだ。それから内側をユックリと。
 地球は太陽から三番目に近い軌道を回っているはずだ。そこに行き着けば、当然、ターゲットを見つけたんだから、一個目の使命はクリアだ。
 三個目の使命は、不死さんに会うこと。

イルミナ それでは三個目と一個目は同時に達成できるっていうのね。
 それで、ミーターさんの推理って、どうして不死の従僕は太陽系にいるっていう確信がもてたのですか?おおよその察しはつきますけど。

ミーター わかってんだったら、聞くな!
 でも、教えて損なことはないから、折角だから教えてしんぜよう。
 まず、不死さんの手法だよ。俺の謎解きとなる前提ともなるダニールさんの流儀だよ。
 いわゆる「漸次的手法」だ。彼だって魔法を使うわけではない。ロボット固有の論理的思考を駆使する。
 あのデニアドールの思考に接着できたおまえのフィードフォワード症候群だよ。おまえの機能にヒューミン(不死の従僕)は感応した。そして数多くの事実群から最適なものを抽出して流し込んだ。
 またデマーゼル(不死の従僕)的トリックもふんだんに使う。

イルミナ 変幻自在の不死さんですこと。

ミーター 時間差を使った。それも途方もない時間差だ。ガイアのトリックを覚えているな。航海日誌とファー・スター2世号のデータの違いからガイアの存在がわかった。
 コンポレロン人の無関心からかえって地球の実在がわかるように誘導した。
 今度は、アルファの位置だよ。
 メルポメイアは弱体化しつつあったスペーサー世界の覇権を握るためにアルファを殲滅しようとした。その焦りが、かえって我が身に跳ね返ってきた。アルファ人を全滅させるために開発したこけ兵器の自爆で自滅に陥ってしまった。
 そう仕組んだのは誰だと思う?

イルミナ 不死の従僕さんっていうのね。

ミーター 最初にアルファ人は、アルファ・ケンタウリのA星のある惑星に地球から移住していた。そして不死さんは、メルポメイアの陰謀の実際投下の前にそれに気がつき、アルファ人を今のプロクシマ・ケンタウリの惑星に再度移住させた。メルポメイアはそれに気がつかないで、アルファ人がいない惑星を汚染させた、っていうトリックだよ。

イルミナ どうしてミーターさんはダニール(不死の従僕)さんがそういうことをしたとわかったのですか?メルポメイア人はその兵器を投下する前にその惑星に人間の姿を確認して上で投下したんではないのですか?

ミーター たしかに人間の姿はあった。

イルミナ それじゃ、どうやって?

ミーター ロボットをアルファ人に変装させておいたんだ。それが投下される寸前、ロボットたちは俊敏な動きで地表から回避したっていうトリックだよ。

イルミナ あらまあ!でもどうしてるミーターさんは、それがトリックだとわかったんですか?

ミーター 不死さんは、以前に同じ手を使ったんだ。

イルミナ 同じ手ですって!

ミーター アルカディアの時代、ターミナスの時の政府はターミナスの繁栄を脅かす敵として第2ファウンデーションを殲滅しようと企んだ。ターミナスに潜入していた第2ファウンデーションのエージェントを捕まえて処刑までした。
 それを察知したダニールさんは、念のためトランターにいた第2ファウンデーション員をコンポレロンにかくまい、ターミナスのエージェントたちの身代わりとして配下のロボットたちに変装させた。それでエージェントたちはからくも難を逃れたんだ。
 この事件のトリックを何度もダニールさんは使った。それを銀河帝国が誕生するずっと以前、スペーサーのいた時代にダニールは実行した、というわけさ。

イルミナ なるほどね。相当回りくどいけど納得だわ!コンポレロン人の無関心と今度は大々的演技のアルファ撲滅事件ね。今度はド派手に太陽系の入り口はここだぞという大アピールね。なるほど!

Photo  銀河を反射する南米ボリビアのウユニ湖

ミーターの大冒険 第七部 太陽系 第1話 不死の従僕の居場所

2023-01-03 10:26:36 | 太陽系
163第1話不死の従僕の居場所
ミーターの大冒険 
第七部 
太陽系
第1話

不死の従僕の居場所

あらすじ

 ファウンデーション暦492年、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星から出発して太陽系に入った。

 人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
 
 かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。

 R・ミーター・マロウの主人アルカディアの志しを携えて、アルカディアのなし得なかった志しの実現の領域に確実に入ろうとしていた。

 はたして地球の放射能汚染を駆除することができるのか?

 
 ミーターは、太陽系と地球についての最終的情報を得ようとしてアルファに降りることにした。
 その前にメルポメニアで入手した図書館の蔵書に記されていた地球と地球人類、そしてアルファの住民の起源の土地、ニフについての恐怖の出来事について驚嘆する。

 その古文書のなかに、メルポメニアの滅亡寸前に記されたであろう『スペーサーとアルファ』なる書物をミーターは、イルミナに提示し、その概略の説明をさせる。

 ニフの起源と核戦争の事実であった。

 イルミナはまたニフ人が二種類いることを語る。

 ニフ人たちは、核融合という理想のエネルギーを人類に提供するものの、謙譲の美を進んで実行し、祖先がそうであったように、移動の民に目覚め、密かに宇宙に出て行った。
 彼らは後にシンナックス人として知られるようになる。それは、ナックの思想に同調していたニフ人以外にも地球全土に人種を越えて散らばっていったからである。

 残ったニフ人たちは、地球各地で放射能に汚染された環境浄化をしつつ、最後まで地球を守り続けた。が、最終的には地球を手放さなくてはならなかった。そして彼らはテラフォーミングを必要としていたアルファに移住した。

 イルミナは、銀河の歴史的収束点前後の大事件について繙(ひもと)く。

 それは、ケルドン・アマディロ博士の「核反応増強装置」による「地球放射能汚染計画」であった。

 アマディロは、イライジャ・ベイリーとハン・ファストルフ博士への恨み骨髄に達するほどに執念を燃やし、ついに復讐の刃を地球人撲滅という悲惨で残酷なシナリオを完成させようとしていた。

 ついに太陽系の入り口にたどり着いた。人類の母なる太陽系。そして夢の地球。

 ミーターは、ロボットには病原菌は感染しないことを承知のうえで、万全の防備態勢でアルファに降り立った。そこには一人の少女が待ち受けていた。

 ミーターは、まずこの少女が語る彼らの星の名称がメルポメニアで入手したデータと食い違っていることに驚嘆する。

 さらにミーターはアルファ人の特異性について知らされる。
 

 
163

イルミナ ミーターさんたら、ご無事でご帰艦は結構ですが、わたしのこと、あのアルファ人のツムギさんに、わたしに対して失礼なこと言ってなかったですか?「女というか、人間じゃないとか」。

ミーター 聴こえていたのか。

イルミナ それになによ、鼻の下のばして、わたしに対する言葉とまるっきり違うんですから。丁寧語なんか使ってね。

ミーター あれは、礼儀って言うもんだよ。銀河の反対側に来て、不躾な言い方、できないんじゃないのか。それにまだ、古代銀河聖語
はおまえのようにはしゃべれないからな。
 もしかしたら、イルミナ、おまえ、彼女に嫉妬しているのかよ。

イルミナ まあ、お言葉ですこと。
 あんなどぎまぎして女性と話すミーターさんだとは知らなかったものですから。そんなにツムギさんって美人だったんですね。

ミーター なにをいう、イルミナ。
 確かに可愛いかったには違わないが、彼女って上半身なにもつけていなかったんだ。

イルミナ まあ!

ミーター イルミナ、こんなことで言い合ってなんかいられないんだ。アルファの神秘がだいぶ開かれた。

イルミナ どういうことがわかったんですか? 

ミーター うん、まず、カビレの意味だ。太陽系の太陽を俺ら今までカビレと呼んでいたよな。なぜ太陽系がカビレと呼ばれたか。なぜ地球がアタカナと呼ばれてきたか。地球が太陽系のどの位置で太陽の軌道を回っているか。
などなど。

イルミナ それから、ミーターさん、それにそんなお荷物になるような品物。おみやげですか?
 ミーターさん、地上で何人と会われたのですか?

ミーター 二人だけだ。ツムギさんがあとで、だいぶ年配者のモノリー先生を連れて来たんだ。
 モノリーさんからそいつをもらった、きっとあとで役に立つと言われた。

イルミナ それってなんですか?

ミーター アルファ人が「繭ベッド」とよんでいるシロモノだよ。モノリーさんは、「直感できっと役に立つ」と感じてもって来た、と言っていた。

イルミナ ところで、どうなんですか、他にわかったことは?

ミーター 数知れない。

イルミナ なんですか?放射能除染の方法ですか?銀河復興の手がかりですか?歴史消滅の逆転換?

ミーター 正直言って、まだはんば不確かだが、おおよそのことが見えて来た。

イルミナ どういう意味ですか?

ミーター モノリーさんがそれとなく教えてくれた。相当曖昧で、回りくどかったが、俺の直感が騒いだ。

イルミナ 教えて、そのこと、ボス。

ミーター ジョン・ナックの教えの真髄というやつだよ。
 モノリーさんはこう言った。ジョン・ナックが地球にいた頃、アルファ人に語ったとされる言い伝えがあるという、
 「ヒトとは、森羅万象と交信できるのは当然であるなら、もっと確かなこととは、ちょっとした差異のあるヒトに対してはより深く融け合うことができるはず」、とね。
 言い換えれば、このことばには二つのことが言われてる。
 一つは自然との交流。もう一つは、兄弟同士から分離がはじまるが、このことが一番厄介であり、ホモ・サピエンスの特徴というか弱点だというのだよ。

イルミナ 少しだけわかった気がします。要するに、ジョン・ナックはあらかじめ彼の未来を見据えて、アルファ人とシンナックス人が、分離してはいても、決して仲たがいしないように戒めたのね。

ミーター そうなんだ、彼ら二つの星は別な展開へと移行していくが、それぞれ意味のある形態には違わない、との真理なんだ。今は全く別々な形態で存在しているが、きっと未来、それぞれが有意義な存在として機能するという。

 たとえば、アルファは原初的ニフ人の形態を残し、科学技術を文字記録に頼らない、発声言語の口伝で残す。たとえば芸能など。かたやシンナックス人は機械技術を駆使し、銀河から飛び出しはるか他の銀河に到達できる。

イルミナ そうだわね、第1ファウンデーションと第2ファウンデーションの確執なんてその最たるものだったんですから。
 それから?

ミーター 不死の従僕は太陽系内にいる。

イルミナ なんですって!

ミーター 推論に推論を重ねるとそういう事実にぶち当たる。
 
Photo 「二人のタヒチ女性」ポール・ゴーギャン(1899年)