116第7話航海日誌
ミーターの大冒険
第四部
コンポレロン
第7話
航海日誌
あらすじ
ミーターとイルミナを乗せたファー・スター2世号は、シンナの軌道上、カルガン以来、初めての惑星探索を果たした。はじめはドローンで、そしていよいよ、ミーターはコンポレロンの地表に到達し、人間社会にも扮装して紛れ込んだ。人間たちは、透明なドームの鋼鉄都市に住みはじめていた。それはトランターの繁栄した時代のような外界の宇宙空間から身を守るような形態であって、ターミナスやその周辺星域の惑星とは異なっていることに二人(?)はいわゆる懐古趣味というような違和感をおぼえた。さらに、コンパーやジスカルド・ハニス、オリンサスの縁故がいないのには何故か落胆したが、ミーターの洞察力はにわかに鋭さを増していく。
ミーターは、コンポレロンの人々が最古の星の話題に異常な恐怖感を持つのに、あるもう一つの理由があることに思いつく。
それは、太古の星についての忌まわしい伝説、地表は放射能で焼けただれているという。それは真実なのか?ただの迷信なのか?
問題なのは、コンポレロンからオーロラという禁断の星へのルートがわからない。困難に直面した二人(?)であったが、そのとき、突如としてイルミナにある異変が生じた!イルミナは、いよいよフィードフォアード症候群の症状が起きる。そしてある感応者の精神と繋がる。その感応者とは?
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ミーター イルミナ、どういう具合でそういう学者を抽出できたんだ?ヴァジル・デニアドールという個人名まで、お前の神経が繋がるとは!
イルミナ それなのよ。まず懐疑主義のリストを五千人位ピックアップしたわ。銀河聖語アルファベットの1番からチェックしても何日もかかるわね。そうしたら、なんとなく、このヴァジル・デニアドールという名前に釘付けになったの。なんというか、例えていうなら人間の頭脳のニューロンとニューロンの間に放電するシナプスのような、そんな感覚よ。あの方(かた)が私たちのためにデニアドールという名前を明示してくれたんだわ、きっと。
ミーター それでデニアドールの心理に到達できたのか?
イルミナ できたわ。二つの情報よ。一つ目は「航海日誌」よ。デニアドールが保有する資料で彼が肌身離さずバックにしまっているものよ。しかもこのコンポレロンが人間によって植民された時代のものよ。ある航宙船の残骸の中で発見された代物よ。その航海日誌のなかに幸運にも、オーロラを含む三つに星の宇宙座標のデータがあったのよ。
ミーター オーロラのね。アタカナのデータはなかったのか?
イルミナ オーロラとね、ソラリアとメルポメニアよ。残念ですけど、アタカナはなかったわ。
ミーター そのデータを早速、ファー・スター2世号に読ませよう。
そしてあともう一つの情報というのは?
イルミナ 起源の恒星系(カビレ)の異様さについての伝説よ。
ミーター 異様さ、だって?
イルミナ この銀河にはまるっきりないというわけじゃないけど、その恒星系には異様な天体が二つあるって言う。
ミーター 「イルミナ、それは対(つい)ってことだな。」
イルミナ そうよ。一つ目の異常な天体はカビレを回っている惑星群の中の一つで、そのガス惑星を取り囲む光る巨大リングがある星のことよ。
もう一つはカビレを回る惑星の一つのそれを回る衛星が異常に巨大であるっていう伝説だわ。この特異性が故郷の恒星系の特徴だって。
ミーター ありがとう。それは興味深い。意味深長だ。
Photo はコンポレロンの貴重な歴史的遺産の「航海日誌」。
115第6話イルミナの異変
ミーターの大冒険
第四部
コンポレロン
第6話
イルミナの異変
あらすじ
ミーターとイルミナを乗せたファー・スター2世号は、シンナの軌道上、カルガン以来、初めての惑星探索を果たした。はじめはドローンで、そしていよいよ、ミーターはコンポレロンの地表に到達し、人間社会にも扮装して紛れ込んだ。人間たちは、透明なドームの鋼鉄都市に住みはじめていた。それはトランターの繁栄した時代の外界の宇宙空間から身を守るような形態であって、ターミナスやその周辺星域の惑星とは異なっていることに二人(?)はいわゆる懐古趣味というような違和感をおぼえた。さらに、コンパーやジスカルド・ハニス、オリンサスの縁故がいないのには何故か落胆したが、ミーターの洞察力はにわかに鋭さを増していく。
ミーターは、コンポレロンの人々が最古の星の話題に異常な恐怖感を持つのに、あるもう一つの理由があることに思いつく。
それは、太古の星についての忌まわしい伝説、地表は放射能で焼けただれているという。それは真実なのか?ただの迷信なのか?
問題なのは、コンポレロンからオーロラという禁断の星へのルートがわからない。困難に直面した二人(?)であったが、そのとき、突如としてイルミナにある異変が生じた!
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イルミナ ミーターさん、あのね、私、あなたが、地上に降りてた間、自分の能力をチェックしていたんですけど、妙に気になる感覚が起きたんです。あなたには今まで言わなかったんですが、いわゆる「フィードフォワード」症候群って言って、問題の焦点を突き詰めると、その先がちょっとだけ見えるような気分なんです。
ミーター イルミナ、まさかお前って人間で言う千里眼という能力者のことだな。
イルミナ なにかね、感応能力者と繋がるような、そんな気分なの。なんかね、向こう側の存在がいて、こっちに向かって手招きしているような。私は、「私たちの道を示してください」と銀河の大霊に波長を合わせたのよ。
ミーター それって、前に話した極素輻射体と同じ反応だ。まさにお前はハイパーリサーチ能力を着火させたんだ。きっとそうだ。
ということは、誰かが手招きしているってことだ。「感応間主体」って言うんだ。
実は、俺が目論んでいたのは、まさにこんなことなんだ。何かが俺らを呼んでいる。
イルミナ ミーターさん、そういうことなんだわ。相手は、あるときは霧でヴェールを懸け、あるときはそのヴェールを払う。ということはあの方(かた)の仕業としか思えないわ。
ミーター う~。この銀河のその時が迫って来ている証拠だ。お前のおかげで、いよいよ秘密のヴェールが開けられる時が差し迫ってるんだ!歴史記録消滅の、今度は逆転の時代のはじまりかもしれない。このコンポレロンでか~。
イルミナ、俺って、また感動の涙が出てきた!
イルミナ、このコンポレロンの先って言ったって半球180度のどの方向なのかわからないんでは、このファー・スター2世号を進められないよな。仮に直線コースが正しいとも限らない。なにかもう少し手がかりが欲しい。
イルミナ そうね、今度は、コンポレロンの地上に向かって、私の感応照射をある人物に当てたらいいんじゃないかと思うの。たとえば、あなたがさっき言った懐疑主義者のある人物の心理に入り込むとか。リストはもう出来上がっていますから。どうでしょう?ヴァジル・デニアドールっていうらしい大学に籍があるんだけど、学生からは人気がない、変わりものの学者さんらしいの。その人の心理にちょっとだけ入らせてもらうわ。
ミーター イルミナ、そんなことできるのか、それができたら願ったりだが、お前って案外、凄いんだなあ!
イルミナ ミーターさん、あなたっていつも私を見くびっているんですこと。まあいいわ、じゃあやってみるわね。
Photo は地球から見た月と土星。次回その表示の意味を明かします。
114第5話放射能
ミーターの大冒険
第四部
コンポレロン
第5話
放射能?
あらすじ
ミーターとイルミナを乗せたファー・スター2世号は、シンナの軌道上、カルガン以来、初めての惑星探索を果たした。はじめはドローンで、そしていよいよ、ミーターはコンポレロンの地表に到達し、人間社会にも扮装して紛れ込んだ。人間たちは、透明なドームの鋼鉄都市に住みはじめていた。それはトランターの繁栄した時代のような外界の宇宙空間から身を守るような形態であって、ターミナスやその周辺星域の惑星とは異なっていることに二人(?)はいわゆる懐古趣味というような違和感をおぼえた。さらに、コンパーやジスカルド・ハニス、オリンサスの縁故がいないのには何故か落胆したが、ミーターの洞察力はにわかに鋭さを増していく。
ミーターは、コンポレロンの人々が最古の星の話題に異常な恐怖感を持つのに、あるもう一つの理由があることに思いつく。
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ミーター イルミナ、アルカディアの話しで思い出したことがある。
それは「放射能」についてのことだ。
この銀河には、「放射能」という言葉が「暗闇」、「混沌」、「焼け焦げ」または「絶望」、「恐怖」と同義語で使われるってことを知ってたか、イルミナ?
コンポレロン人が怖がっているのは、最古の星の記憶だ。それは原子力放射能の「恐怖」だ。きっとそうだ。
イルミナ ミーターさん。ここ100年の間、ここ天の川銀河の多くの星が放射能汚染によって住民の生存が脅かされているのわ。
皮肉にも当初はファウンデーションの科学技術によって数多くの銀河の惑星が潤った。われ先とファウンデーションの科学技術を導入したり、援助を受けた。とくに全エネルギーを原子力に頼っていた星々は、よけいに悲惨になって来ているみたい。原子力発電所の老朽化によって、技術者の不足や維持技術の技能が廃れ、それによって原子力発電所の爆発事故が多発したのよ。その星は放射能漏れで汚染され、その星を遺棄せざるを得なくなり、住民は他の住居可能な星に移住をせざるを得なくなった。
人類の文明は消滅しかけているのよ。そのことによって多くの星が、どんどんとファウンデーションとの関係を絶って来ているという事実にも表れているわね。そしてこの銀河の暗黒がファウンデーションのせいだと憎悪を抱きはじめたのよ。約100年前まではファウンデーションとの親交星が銀河の三分の一まで増加したのに、今では数える位に減ったんですから。
この問題に抜本的に取り組んだのが、アルカディアさんだったんですから。ミーターさんは彼女のメイン・スタッフだったんですね。それだけでも尊敬いたします。
ミーター いやいや、まだまだそれは解決されているわけではない。というよりはこれからが序の口っていうところだ。お前と俺でその解決の手がかりを見つけ、チャレンジして行かなくてはならない。
イルミナ ということは、ミーターさん、その最古の星、いわゆる「アタカナ」というのは、まさか今では人類住居不可能な星なのかも知れませんね!
ミーター う~ん。そうだとすると、非常に痛恨極まりない。ホントに残念なことだ。
しかし、もし、そうだとするとその星を見つけたとしても、その地表に降り立つのは困難ということか?その放射能の程度にもよるが、ある程度以上だとすると、ロボットでも数時間内に機能が全部破壊されてしまう。
イルミナ 難問山積みねぇ!
Photo は放射能で焼けただれた地球。ミーターの時代には、悲愴にもその事実も忘却の彼方へ。