172第10話途中下車 火星
ミーターの大冒険
第七部
太陽系
第10話
途中下車 火星
あらすじ
ファウンデーション暦492年(西暦25059年)末、いよいよミーターとイルミナを載せたファー・スター2世号はアルファ星から出発して太陽系に入った。
人類の故郷の星系。懐かしい星、地球。
かつて、カビレ星系と言われていた太陽系。かつてアタカナと言われていた地球。
R・ミーター・マロウの主人アルカディアの志しを携えて、アルカディアや同士ジスカルド・ハニスらのなし得なかった志しの実現の領域に確実に入ろうとしていた。
はたして地球の放射能汚染を除去することができるのか?
そしていよいよ太陽系外縁部のオールトの雲を抜けて待望した太陽系に突入して行く。
鋭さを増したミーターの推理力は予測通りに土星に遭遇させ、地球のかたわれともいわれる月に不死の従僕の気配を感じさせる。
そしてついに不死の従僕が太陽系第3惑星地球の大きな衛星、その名も月(Luna )にいることを確信する。
新たな天体物理学者のミーターは、不死の従僕が月にいる理由を全て「宇宙潮流」理論で纏めあげる。
そしてミーターは人類と「宇宙潮流」との関わりについて惑星環境の土壌「墾化」現象に言及する。
ところが、ミーターとイルミナを乗せたファー・スター2世号は月の軌道目掛けて一直線のコースをとろうとしたところ、手前の火星地表で有機体とロボット(通常のロボットの反応とは違う)の存在をキャッチした。
ミーターの直感は火星に着陸する選択をする。
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ロボット やあ、はるばる銀河の反対から来られましたね、ミーター・マロウ君。
ミーター お初にお目にかかります。長年、この時が来ることを願っておりました。光栄です、サー。
ところで隣にいる女性はどなたですか?
ロボット ペイリー・リャン。わたしの身の回りの一切の世話をさせています。もう私の体は終焉を迎えている。何しろ2万歳ですから。
彼女はコンポレロンで身内がなく、孤児だったのでここ太陽系に連れて来ました。彼女は、全て私の思考通りに動いてくれます。
ミーター ところで、私どもは、あなたのおられる月に向かう最中でした。
なぜ、あなたはここにおられ、何をなさっておられるのですか?
ロボット 月には地下層に相当量の水があります。月でその作業が完成したので、もっと埋蔵量の多い火星に来て、同じ作業をしていたのです。
ミーター えっ!!
と言うことは、地球の海洋回復の目的!
ロボット そうです。月や火星からだと、磁場膜チューブで送水できます。アルファからだと、宇宙潮流に沿って運ぶには、だいぶ年月がかかりますが。
ミーター と言うことは、地球放射能除去にもすでに着手されておられるのですね。
ロボット さよう、私とジスカルドがなした人類に対する不都合への謝罪の行為として。銀河復興と連動してかねてよりの念願だ。私が引き起こした責任は私が償うのが、妥当だ。
ミーター かつてアルカディアは「人間の体に対しては、放射性物質は、9割くらいが放射性ヨウ素で、残りの1割くらいが放射性セシウム」と語ってくれました。
ロボット 放射性セシウムに対する処方はウェルスクリーク産ゼオライトが有効だ。
ミーター それではたった1割だけの解決でしょう。あとの9割はどうやって?
ロボット ミーター君、それについては、君の専売特許のはずだ。
ミーター えっ!
ロボット 君の推理力は尋常でないが、基本的な記憶力は相当乏しいらしい。あのイオス星の熱い温泉。
イオス星のポニェッツ仕様のラヴェンダー・エキスだよ。
あの時は危機一髪だった。生還不能だと覚悟した。何しろブラック・ホールに突っ込む寸前だったからね。
ミーター そうだったんですね。
ロボット いずれポニェッツ仕様のラヴェンダーのエキスが月に届く。すべてドースの手配でね。
ミーター そこまで用意周到なのですね。
そしたら、私の出る幕はほぼゼロですね。
ロボット そんなことは全くない。私の準備はほんの手始めだ。ほぼ残り全部が君の肩にかかってる。
ミーター う~!
ところで不死の従僕様、あなたをなんとお呼びすればいいのですか?
ロボット ダニールだ、ダニールでいい。