224第42話もうひとつの最後の晩餐
ミーターの大冒険
第九部
エピローグ
第42話
もうひとつの最後の晩餐
おおまかな銀河史
本編を繙(ひもと)く前にこの物語に至る歴史の概要をお示しすることは読者には有益になるでしょう。
前史
地球暦12500年=銀河暦元年
トランター帝国、銀河帝国となる。
銀河暦500年ごろ
身代わりの天使出現。
銀河暦900年ごろ
最後の地球残留人(ニフ人)、地球を去ってアルファ星に移住。
銀河暦2000年ごろ
ダニール・オリヴォー、イオス星にロボット修理・製造工場を建設。
偉大なるルエリス、穏和な統治システムを提唱。
銀河暦8789年
惑星リゲインの「文芸復興」、8年で破綻。
銀河暦11865年
女性型ロボットドース・ヴェナビリ、イオスで製造。
銀河暦11988年
ダニール・オリヴォー、デマーゼルと名乗って、銀河帝国の宰相となる。
クレオン一世、ハリ・セルダンの誕生。
銀河暦12028年
ダニール・オリヴォー、首相を辞任。後継にハリ・セルダンを指名。
銀河暦12038年
ハリ・セルダン、宰相を辞任。
銀河暦12040年
ウォンダ・セルダン生まれる。
銀河暦12048年
ドース・ヴェナビリ、死去。ベリス・セルダン生まれる。
ハリ・セルダンの盟友ユーゴ・アマリル没。
銀河暦12066年
ダニール・オリヴォー、地球探索。
ダニール・オリヴォー、ガイアを計画。
銀河暦12067年=ファウンデーション暦元年
ガール・ドーニックら百科辞典財団、ターミナスへの計画決定。
ハリ・セルダンに対する裁判の結果、公安委 員会は百科辞典財団をターミナスに放逐。ガール・ドーニック、ファウンデーションの51番目の委員になり、第1ファウンデーション全般を仕切る。ボー・アルーリン、ガールを補佐し、第2ファウンデーションとの繋がりを助ける。
ファウンデーション暦
(ほぼデイヴィッド・ブリンの銀河史の概略に従っております。)
あらすじ
アンセルムは、いよいよ3人に分担して行動するように促す。
ハニスとペイリーはターミナスのモーヴに向かう。
そしてターミナスの帝国辞書編纂図書館の役割は、完全に終了した。暫定的に帝国辞書編纂図書館(イルミナ)の機能はファー・スター2世号のコンピューター内で機能し、新たなリーディング場所に近いうちに再設置される。
方や、ミーターとアンセルムは、イオス星のドース・ヴェナビリとレオナルド・セノビアレッラに面会していた。
ハニスとペイリーはアルカディア農園への帰途、紅く紅葉したコキアの丘 (Red Wall )に火を点け迫り来る政府軍を無防備にさせる。
それはすでにペイリーの策謀でアルカディアそっくりの2万体のチクタクをターミナス全土に繰り出させ、市民を反政府運動へと仕向けたからであって、政府軍のアルカディア農園殲滅を事前に防いだばかりでなく、市民と燃え盛る紅い壁に挟まれて、政府軍は一目散に丘から海岸めがけて武器を放棄して退散したからであった。
すでにドースは、アンセルムの意向を理解しており、マジェラン銀河への遠征隊をアンセルムに担ってもらうことを彼に話すのであった。
ミーターは、アンセルムとの同行を希望したのであったが。
ターミナスでの任務を無事終了して、ハニスとペイリーはイオスに帰ってきた。
いわゆる、地球時代、原初の「最後の晩餐」より数えて、おそらく28000年後にもうひとつの「最後の晩餐」がイオス星で執り行われていた。
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(イオス星のロボット製造・修理工場の大広間)
ドース ご苦労様でした、ペイリーさん、ハニスさん。こちらでは、あなた方のご活躍をしっかり、その一部始終をハイパー・ウェーブ画像で捉えられておりました。
あの Red Wall の輝きは、ターミナス全土の方々にも、銀河の全住民にも古い時代が過ぎ去って、新しい時代の到来を知らしめたことでしょう。
ハニスさんには、10年前の屈辱を覆す状況となられたに違いありません。
ハニス そこまでご同情いただき、まことに恐縮です。
アルカディア屋敷では、第2ファウンデーションのイプセン・モルガン殿にお会いできて、今のブラノ政権後の希望に満ちた、新たな銀河の統治構想について、第1ファウンデーションと第2ファウンデーションとの連繋・融合の真摯なご提案をいただきました。
ミーター どのような?
ハニス 銀河の新統治機構は、サンタンニに設置します。今、ファー・スター2世号に移送された図書館機能がサンタンニに移植されます。
ドース それは具体的には、我ら第零ロボットグループの能力を超えております。想像もできません。
ペイリー イプセンさんのおっしゃるには、具体的には、まだ全く白紙だそうです。これから具体的には、全銀河からの全政府代表をお招きして、ご意見を伺ったり、ご提案をいただいて、構想の集約を図っていかれるとか。
ミーター そりゃ、長い年月がかかりそうですね。
ハニス アンセルム殿、これから大マジェラン銀河に向かわれる。ご無事と成功を願っております。
わたしも行きたかった。けれどミーター君は、それ以上だったとか、歯ぎしり噛んでいたとか。
ミーター それはもう言わないでください。
ドースさんに言われました、再度の地球訪問の後に、第2次派遣隊があると言われるのです。
ハニス それは良かった。第2次派遣隊か?
わたしはどうでしょうかね!
ドース 宇宙の大霊がお許しになられたら。
ペイリー わたしはどうかしら?
ドース まあ、ハニスさんからお聞きしましたよ。この銀河をお花畑にしたいって、幼いお子さん方に天空のお話しをする語り部となられて全銀河を巡って行かれたいとか。
ペイリー ええ、その通りです。わたし、少し欲張りでした、ね。
アンセルム 人にはそれぞれ天召というか天命がございます。
でもこの銀河は人間には計り知れない絶妙な宇宙潮流によって時々刻々変化しております。
その聖なる欲が、また新たな志しを人に悟らせることも真理ですね!
ハニス まさしく。
ペイリー アンセルムさんなら、超亜空間航行に成功されて、目指す大マジェラン銀河のヤマブキ星系の惑星ヤマブキに間違いなく到達できますね。
ミーターさん、アンセルムさんこそ、もうひとつの夢を断念された悔しさを噛みしめられておられるのですよ。
ミーター 悔しさ?
アンセルム 隠しだてする必要はございません。わたくしも地球をこの目で一度は拝みたかったのです。
ハニス さもありなん!
ドース 皆さん、さあさあ、御膳を召し上がってくださいな!
本日は、天召(てんのめし)という料理ですよ。
ミーター 何が入ってるんですか?
ドース 「天召を全うする」というオパールの粉をまぶしたロブスターです。
ミーター またロブスター!
あの、飾られていた大マジェラン産のオパールを潰したのですね!
ペイリー はい、いただきます!
『ミーターの大冒険』「第九部エピローグ」完
Yi Yin