48第2話深夜、窓を叩く音がする
ファウンデーションの夢
第七部
アルカディア・ダレル
第2話
深夜、窓を叩く音がする
いよいよ、この『ファウンデーションの夢』の最終章になってしまいました。
アルカディア・ダレルと彼女が幼友達のオリンサス・ダムにつくらせた作文プロセッサーとの会話から始まる。
アルカディアは、祖母ベイタ・ダレル(マロウ)の生涯を題材とした伝記を書き始めようとしたやさき、二階の彼女の部屋の窓を叩く音がした...
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アルカディア・ダレル 行くわね、ミーター。
ははは、しめしめ、同級生のオリンサス・ダムをデートに誘ったら、特殊盗聴機を作ってくれたわ。これでお父さんたちの密談を傍受できるっていうことだわ。夜な夜なの会合なんて、普通じゃないんだからね。
このあいだの作文、学校でボツになったなんて悔しい。
その理由が馬鹿げているんですから。名門ダリル家のご令嬢の作文としては国家秘密に入れなければならないくらい、優等過ぎるっていうのよ。
ある学者なんて、一回読んで、手が震えていたというの。そんなことあり得る?こっちは宿題で書いただけだというのに。
ミーター、これはボツだわ。初めから行くわね!
ミーター・マロウ アルカディアお嬢ちゃま、私、作文作成機といたしましては、ボツの方が嬉しいのです。
あなたの論文は、纏めようのない独り言みたいですから。
気にさわられたら謝りますけど。
アルカディア お嬢ちゃまはやめてね。アルカディーと呼んで、お願いね。
うん、タイトル、『追憶の鍵を開けて』を書く気になった動機は、50年前の祖母ベイタの新婚旅行からの出来事からである。
夫の故郷ヘイブンに着いたそうそう、カルガンに行ったと思ったら、数日もしないでターミナスに戻り、あの忌々しいミュールの占領にあった。
占領間際、辛くも脱出したもののその後、暫くしてターミナスに戻り、老後を安らかに過ごしたのであるが、その間の出来事が一切、謎なのだ。
....................
(窓を叩く音がする)
トントントン。
ミーター アルカディー。途中ですみませんが、やはり文脈が合いませんが?トントントン、とは?
アルカディア ミーター、私、トントントン、なんて言ってないわよ、深夜であなたも疲れたのかしら!
ペレアス・アンソーア ごめんください。
さっきから窓ガラスを叩いているんですが、開けてくれませんか、僕は、ペレアス・アンソーアと申します。決して怪しい者ではありません。
ちっちゃくてかわいいアルカディーちゃん。
アルカディア まあ、失礼ね、もう私、たいした淑女ですから。
泥棒でも二階の窓なんか、叩いたりしないわよ、怪しくないわけないでしょう。
多分、父さんに会いに来たのでしょう。わかってるわよ。
今頃は一階の玄関でブザーを鳴らしても無駄ですもん。お手伝いさんはずっと留守ですからね。
それに「かわいい」はよして、誰が窓なんて、開けてあげるもんですか。今は私忙しいんですから!
https://youtu.be/LalcO7Kdvhc
yatcha john s. 「深夜、窓を叩く音がする」『ファウンデーションの夢』第七部 その2
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