12第2話聴かずんばこれを去らん
ファウンデーションの夢
第三部
ウォンダとガールの地球探訪
第2話
聴かずんばこれを去らん
お招きの言葉
わたしYi Yinのサイエンス・フィクションはアイザック・アシモフの『ファウンデーション』シリーズをほぼ下敷きとして哲学者ノース・ホワイトヘッドの「移動と新しさ」の哲学に貫かれている。
あらすじ
セルダンの裁判が始まる前の年、つまり銀河暦12066年、ダニール・オリヴォーは、ガール・ドーニックをシンナックスから招き寄せるため、かつハリ・セルダンの「心理歴史学」と2つのファウンデーションを補強するため、人類の最古の故郷星「地球」への探索の旅に出る。
漸くダニールは、天の川銀河の半球過ぎに、それらしき海洋惑星を見つけた。
ダニールは、以前にしたようにヒューミンと名前を変えてシンナックス大学に何食わぬ顔で入り込み、ガール・ドーニックを待ち構えていた。
ガールは、どうしたわけか、彼が見いだしたことがらをとめどもなくヒューミンに話しはじめた。ダニールは、ガール・ドーニックの非凡な閃きを強く受けとめて、ロボットでありながら絶句する。
ダニールのこの探索からファウンデーションの新たな叙事詩がはじまろうとしていた。
彼がハリ・セルダンの故郷を目指したのは、ロボットにない人間の潜在能力に彼の第零法則を挑戦させたかったためであった。そこから何かが生まれそうな予感を抱いて!
ガールは、ダニールの指示通り、ダニールの多額のクレジット・バッグを抱えて、トランターに着いた。まではよかったが、ハリ・セルダンに会うやいなや、当のハリ共々裁判のために留置所に入れられてしまった。
ハリの未来予測は、将来500年以内に92・5パーセントの確率でトランター銀河帝国が滅亡するというものだった。
そこへ、弁護人としてハリ・セルダンから遣わされたロース・アヴァキャムが、ハリ・セルダンの代わりにガールにこの件に至った経緯を語る。
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「敵を包囲したら必ず逃げ道を開いておかねばならない。窮地に追い込んだ敵に攻撃を仕掛けてはならない。」(『孫子』孫武著)
「リンジ・チェン。銀河帝国を支えてきたチェン家の棟梁にして、公安委員長官。チェン家の初代はリンタイ・チェン。彼は人類の共通の故郷(ふるさと)の星のある時代のある体制を転覆させた。その方法が奇抜過ぎる禁じ手を使ったことから、もと兵法家の孫という姓からチェンという姓に変えた。その禁じ手というのは、極めて簡単すぎて、誰もが驚嘆するほどであった。」(『ハリ・セルダンの生涯』ガール・ドーニック著)
アヴァキャム わたしはロース・アヴァキャム。あなたの代理人を勤めるように、セルダン博士から指示されました。
博士からの君への伝言を預かっている。
ガール わたしは不法にも、ここトランターに来て、すぐ拘束されている。
皇帝に直訴の手続きを希望します。
こんな状態のために、やってきたつもりはない。
もういいから、あなたの手でなんとかして下さい。故郷のシンナックスに帰らせて下さい。
アヴァキャム 君には大変迷惑だとは思うが、これが最上の策なのだよ。
この日が来るのをセルダン博士はずっと待っていたんだよ。
長い年月だった!
今日が、18年前にユーゴ・アマリルとセルダン博士がつくりかけた心理歴史学の最終章であり、これからが本当の初まりなのだ。そのユーゴも10年前に死んだ。
ユーゴとセルダン博士とは、チェンを徹底的に研究した。チェンの世界をレプリカまで研究所に設置、何度もシミュレーションを行った。そのために洞窟までこしらえて。「瞑想」とやらまでやった。
裏の裏をかく、虚を衝く、そして利用する、それでしか、我らの「ファウンデーション」はつくり出せない。チェンの行動パターンは、彼の先祖の兵法に制約されているとセルダン博士は読んだ。チェンは、セルダン博士の影響力を恐れて、博士のグループを銀河の果ての星に追放するように仕組んだ。
ガール なんですって!それで、セルダン博士を「大烏」と言うんですね。銀河帝国が300年後には滅び、それに続く3万年後に新たな銀河帝国がやっと成立するという。
でも、なんで僕だけ、処刑される運命なんですか?
あのヒューミンさんは、そのために僕をここに導いたのですね。
アヴァキャム 心配しなくてもいい。
君が処刑される確率はごく僅かだ。「極素輻射体の照射では、1%未満だ」とセルダン博士は言ってた。
ガール そんなこと信じられるか。
アヴァキャム ドーニック君、よく聞いてくれ。チェッター・ヒューミンは、陰ながら、彼の特殊な能力で、帝国の政権をコントロールしている。
銀河の記憶と知識の集大成を管理する部門が、遥かな銀河のホライズンの彼方、我らが名付けたターミナス星で展開されるはずだ。
50人の中心スタッフを支える1万人のスタッフと3万人の家族が、そこに移住する。
その名目上の目的は『銀河百科辞典』編纂財団だ。
そしてその真の目的は、『第1ファウンデーション』!
次の銀河帝国の到来を限りなく短くするということが最上の策になる。
そして、君ガール・ドーニックが51人目の数学者であり、同時に統括責任者となる。
ガール なんですって!
yatcha john s.
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