SSF 光夫天 ~ 詩と朗読と音楽と ~ 

◆ 言葉と音楽の『優しさ』の 散歩スケッチ ◆

秋の詩 「秋の日」

2015-11-03 08:40:41 | 「尾崎喜八を尋ねる旅」
今日は、秋晴れのいい天気になりそうだ!

2015年秋 後半スタート。



自註 富士見高原詩集(尾崎喜八)より

秋の日

そしてついに玉のような幾週が来る。

夏の醗酵をおわった自然は

おもむろにまろく熟して安定した層になり、

きょうの秋の日には下ほど濃く、

上へゆくほど晴れやかにすきとおって、

かろく きらきらと

うっとりと 甘く 涼しい。

山にかこまれた此の地方は

あたかも震えるふちを持った

薄い大きな杯のようで、

快美な秋は流れて隣る国々への祝福となる。

しかしその喜びには深くまじめなものがあり、

酔いそのものも健康で、

充実した仕事の毎日が彫塑的だ。


【自註】
すきとおるばかりに澄んだ秋が毎日つづく。日に日に輪郭のはっきりしてくる遠近の山脈の限界線。華やかにもみじしてゆく野山の草木。それを暖かに照らす太陽とそよ吹く涼しい西の風。今は賑やかな繁茂の時がすぎて静かな成熟の季節である。すべての物にそれ自体の重みが増し、好ましい味がつき、真実頼もしい健康さが感じられる。

農夫たちは取り入れに忙しく、私も自分の仕事にいそしむ。詩や文章を書くにも翻訳をするにも張り合いがあり、それらが一つずつ形を成してゆくのが嬉しい。物の造形とその成就。私のような詩人にとって、その喜びは美術家や酒造りのそれに通じるように思われた。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿