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秋の詩 「晩秋」

2015-11-09 14:40:53 | 「尾崎喜八を尋ねる旅」
=箕面ダム(大阪)=

秋の始まりの9月に訪れた時の写真。

冬が来る前に、もう一度、行ってみよう。



「自註 富士見高原詩集」(尾崎喜八)より

晩秋

つめたい池にうつる十一月の雲と青空

たえず降る緋色のもみじが水をつづる。

遠く山野を枯らす信濃の北かぜ、

もう消えることのない遠山の雪のかがやき。


枯葉色のつぐみの群がしきりに渡る。

牧柵にとまって動かない最後の赤とんぼ。

ゲオルク・トラークルの「死者の歌」が

私の青い作業衣の膝で日光にそりかえる。


【自註】
分水荘の森のそとには、山から水を引いて集めた小さい池がある。その池の縁に一本大きなクルミの木が立っているが、その木陰でクローヴァを敷物に見馴れた景色を眺めたり、本を読んだり、訪れて来た友人と話をしたりするのが楽しみの一つである。しかし今は風も冷たい秋の末、そのクルミの葉もとうに散って、池には風に送られて来た木々のもみじが模様のように浮かんでいる。其処で即興的に書いたのがこれである。

私はオーストラリアの詩人ゲオルク・トラークルの詩を、戦前もかなり早くから読んで愛していた。ドイツの或るアンソロジーの中でその作品を発見して好きになったのが最初だった。第一次世界大戦に従軍して一九一四年二十七歳の若さで死んだ彼の死には、私の内に或るいくらかの悲劇性への傾向に訴えるものが多かったせいであろう。ここへ出て来る『死者の歌』もその詩を集めたインゼル発行の文庫本である。最近日本でも彼のためにそれぞれすぐれた訳詞集が幾種が出た。

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*緋色(ひいろ)<Scarlet> :やや黄色の赤を表す。伝統的に、炎の色とされる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88

*つぐみ
分布:中華人民共和国南部、台湾、日本、ミャンマー北部、ロシア東部。
夏季にシベリア中部や南部で繁殖し、冬季になると中華人民共和国南部などへ南下し越冬する。日本では冬季に越冬のため飛来(冬鳥)する。和名は冬季に飛来した際に聞こえた鳴き声が夏季になると聞こえなくなる(口をつぐんでいると考えられた)ことに由来するという説がある。日本全国で普通に見られる。ウィキペディア


*ゲオルク・トラークル
オーストリアの詩人。第一次世界大戦前夜、凝縮された表現と象徴主義にも通じる色彩感覚で世界苦 をうたった、ドイツ表現主義最大とも評される夭折の天才である。 ウィキペディア

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