前編に続きます。
4 どんなときに解散できるのか
では,内閣は,好きなときに解散できるのでしょうか。
結論は「
微妙!」です。
憲法上,解散を明記している条文は,
7条と69条の2つあります。そして,7条は「天皇の国事行為」の規定であり,その中で天皇は内閣の助言と承認を得て「解散」を宣言できるとするものです(決して,天皇が自らの石で解散できるわけではありません。)。
69条は,国会からのちょーむかつくといわれた「
内閣不信任案」に対して,内閣は総辞職するか衆議院を解散するのかを選択することができるという規定になっています。
とすると,憲法的には実質的には69条の場合,つまり,不信任案が提出されたときしか解散できないようにも見えます。
しかし,
実際は,不信任案が提出されていない場合でも解散している場合がかなりあります。現に,ここ最近の解散の事由は,ほとんどの場合「憲法7条により」と謳っています。
5 それならどんなときに解散できるというのが憲法上の建前か
ここで,解散の根拠をもう一度考えてみますと,前述のとおり「国会に対する武器」として使うことになるわけです。つまり,
先ほども言ったとおり,「この国会,使えねー」と思ったときは解散できると言うことになります。
では,「使えねー」と思う場合とはどういうときでしょうか。
大きく分けると次の2つになります。
(1) 「この国会,国民の意見聞いてないじゃないか,俺(総理)の意見の方が絶対国民の多数を占めてるはずだぜ,嘘だと思うなら国民に選挙で聞いてみな」と思ったとき(民主主義的側面)←民主主義へのアタックチャンス
(2) 「やべー,こいつら,俺の言うこときかねえや。このままじゃあ,国会が力持ってきて,行政にまで口出してきそうだ。危ないから,ここいらで力を封じておこうか。」と思ったとき(自由主義的側面)←行政の防衛行為
以上のいずれかの時にのみ解散が可能とされています。したがって,
必ずしも内閣不信任案が提出されていなくても,解散は可能といえます。よって,
参議院での否決を理由にした衆議院の解散は,憲法上「あり」ということになります。
ただし,いくら解散権が総理にあるといっても,自由気ままにできるわけではありません。「今日は夫婦喧嘩して気分が悪いから解散しちゃおう」とかいうことは許されません。
6 解散するのは衆議院のみで参議院は解散しないのはなぜ
これまた話が長くなりますので,簡単に言うと
,「衆議院と参議院の役割が違うこと」によります。つまり,衆議院の任期が4年,参議院の任期が6年のため,
単純に考えると,衆議院の方がより直近の民意を反映していることになります。
そして,5で説明したように,解散の理由の一つとして,「国民の意見を聞こう」という点があります。とすれば,
最新の意見を聞いた方がいい,ならばやっぱり衆議院だなあ,ということで衆議院を解散することになります。
あとは,実質的には,両方解散できちゃったら,議員0という状態が起こってしまい,その状態で何か問題が発生したとき,国会という抑止力がなくなってしまい,三権分立が崩壊する,という点から,
誰か残しておこうということで,参議院は解散しない,という点もあります。
7 解散後はどうなるの
衆議院議員選挙を行います。そして,選挙後に特別国会を開催し,
そこで改めて内閣総理大臣を指名します。
つまり
,「俺の意見が正しい」と主張した総理大臣は,最新の民意によって選ばれた衆議院から指名されればアタックチャンスは成功したといえるが,別の人が指名された場合,アタックチャンスは失敗したといえることになります。
これにより,民意を忠実に反映した国会と内閣が成立し,めでたしめでたしということになるわけです。
8 おまけ(仮に今回参議院で郵政民営化法案が否決された場合の対応)
まず,解散できるかが議論となっていましたが,前述のとおりできます。
この場合,「俺の意見が正しいはず」という民主主義的な観点からの解散になると想定されます。つまり,小泉首相の「アタックチャンス」になります。
あとは,選挙の結果,どのような民意になるのかによって,小泉内閣継続か否か決まってくることになります。
9 まとめ
以上が憲法学的に見た解散です。
衆議院の解散といっても,その趣旨や理由は深いものがあるということがご理解いただけたかと思います。
ただし,法律的にはきれいにまとまっていますが,現実の国会から見ると「???」的な説明部分が結構あったと思います。
このギャップが政治学的な解散や国会運営ということになり,国民に分かり難い政治になってしまっている一因であるといえるでしょう。
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