あれは,あれで良いのかなPART2

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ブルドックvsスティールの最終決戦はブルドックの噛み付き勝ち

2007年08月08日 17時39分50秒 | 裁判・犯罪
スティールのブルドックに対するTOBをめぐる新株予約権差し止め仮処分について、最高裁は、ブルドックの新株予約権発行を適法と認め、スティールの許可抗告を棄却しました。
これにより、この一連のTOB問題は、まずはブルドックの完全勝利という形で終わりました。

最高裁がスティールの抗告を棄却、ブルドックは株数が3.6倍(ロイター) - goo ニュース

しかし企業買収対策は常に考えなければならない

この問題、最高裁は「誰かが買収かけてきたら、それから会社は対策考えれば十分だよ」という雑な議論はしていません。したがって、当然の前提として、企業買収対策は事前にしっかり行う必要があります。
そのうえで、今回の最高裁の理論は次のとおりでした。

1 株主平等原則に反するかについて
  企業買収などで会社自体の存立を危ぶむなどほかの株主の利益を損なうと認められるときは、ほかの株主が自分の利益を守ってほしいと考えて特定株主を差別的に扱ったとしても、その取り扱いがものすごく不利益な取り扱いでない限り、直ちに株主平等原則に反するわけではない。
  ただし、株主にいい加減な情報を流して、「みんなで反対しよう」などした場合は、株主は適正な判断をしていないから、このような場合はいくら株主が反対しているといってもだめだよ。
  今回は、ブルドックは株主総会で正しい情報を流していたこと(スティールも株主総会に参加して自分たちの意見を主張していたので、双方の主張を株主は聞くことができた)、その上で8割を超える株主が防衛策たる新株予約権発行に賛成していたこと、株主たるスティールには相当な対価が支払われたことなどを踏まえると、スティールが乱用的買収者かどうかは関係なく、これでスティールだけをものすごく不利益に扱ったとはいえない。
  とにかく、株主が決めたことが大きい。

2 著しく不公正な発行といえるか
  本来は事前準備が必要であるが、急な買収もあるため、事前準備がなかったから即防衛はできないということはない。今回のスティールへ対価を払った点は、まさに企業の価値を維持する緊急措置だし、相当な対価といえるので、仕方ないだろう。
  また、新株が社長や取締役の経営権維持だけを目的にしていたら、そりゃあ不公正といえるが、今回は企業価値の維持という面が強いため、これまたセーフ。

最高裁の理論はこんな感じでした(もちろん、こんな砕けていませんよ、実際は。)。
つまり、もっと簡単に言えば、①株主の3分の2以上が賛成したという点(しかも正しい情報で判断した)を尊重しよう、②スティールにだってちゃんとアタックチャンスを与えられていたが、うまくものにできなかった、③スティールにそれなりの対価は払っているから、別に損したわけではない、④今回守ったのは社長個人の座ではなく、あくまでも「会社」そして、そのブランドであったこと、⑤株主も結局「ブルドック」という会社ブランドが好きだった、という理由から最高裁はブルドック勝利に導いたといえるのです。

さて、これが今後のメルクマールとなりますが、冒頭にも書きましたとおり、最高裁は何も企業防衛を場当たり的にやることを無条件に認めたわけではありません。あくまでも「緊急措置」と言っています。しかも、この防衛策により会社側にそれなりの損害が発生していますが、これについての責任論については最高裁は一切論じていません。
したがって、今後考えられるのは、株主から「会社の場当たり的な企業防衛で会社に損害を与えた」などとして、株主代表訴訟や取締役の損害賠償責任訴訟などが提起される可能性はありえますし、これが認められる余地は十分に残されています
当然ながら、ほかの企業においても、同じことです。すなわち、場当たり的企業買収防衛策は、無条件に認められるものではありません。一番のポイントは、「正しい情報を既存株主に提供し、株主の3分の2以上の賛同を得る」という点です。
しかし、日本の企業の場合、この「正しい情報」というあたりが、非常に危なかしいような感じがします。今回の場合、株主総会に買収会社が同席できたことから、手続き保障が確保できていることで「正しい情報」と認定しました。しかし、日本独自の「浪花節的企業防衛論」だけを株主に繰り広げ、「とにかく、わが社を鬼畜米英の会社から守ってください」と株主に泣きながら訴えるだけでは、最高裁は「正しい情報」と認めてくれない場合があります。
また、防衛策はあくまでも「既存株主の利益」が尊重されます。会社の取締役の利益だけを考えているような防衛策では、当然最高裁は「ノー」というでしょう。
したがって、事後的防衛策の場合、事案によっては、「役員は総入れ替えしてでも企業を守ります」という態度で臨む必要があるかもしれません。

とにかく、今回の決定は、「めでたし、めでたし」ではなく、「事前の企業防衛をちゃんとやっておいてね」という警鐘を鳴らしたものである、と認識したほうがよいでしょう。

これから本格的な企業買収時代がやってきます。買収=悪ではありませんが、買収がどんなメリットをもたらすのか、本格的に考える時代に来たといえます。個人的には、企業買収により、価格低下など消費者へのメリットがあること、買収会社も買収された会社も従業員含めより効率的な事業展開が可能となり、従業員の給与や会社の業績向上が図られたこと、会社の規模が大きくなる一方で地元企業や商店街との取引が増加して地元密着型大企業となることの「三方よし」という近江商人的な企業買収が理想的では、と思います。

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