5月3日は憲法記念日です。各地で憲法を考える集会などが行われています。一方で,国会での再議決や,イラク派遣が憲法違反になるという高裁裁判例など,憲法に関するニュースもいろいろと出ています。
そこで,憲法記念日を踏まえて,あらためて日本国憲法について考えてみようと思います。今回は,日本国憲法の条文に何が書いてあるのか,ダイジェスト的に説明したいと思います。また,制度趣旨や背景事情なども説明します。
なお,憲法の基本的骨格については,過去の記事(こちらで過去の記事に飛べます)を参考にしていただければ幸いです。
第1章 天皇(1条~8条)
天皇が日本国の象徴であること(前文と併せて主権が国民にあるということになる),天皇が行える行為は「国事行為」という非政治的行為のみであり,それも内閣の助言と承認が必要である。
第2章 戦争の放棄(9条)
戦争や武力行使を永久に放棄し,その目的達成のため,軍隊は持たないとした。
ちなみに,の「戦争」に「自衛のための戦争」が含まれるのか,また「軍隊」に「自衛隊」が含まれるのか,これが今日も議論となっている。
第3章 国民の権利及び義務(10条~40条)
いわゆる「基本的人権」と呼ばれている部分である。
まず,基本的人権はすべての国民に認められているが,一方で「人権だからなんでもあり」という態度はよろしくなく,権利を保持するためには国民は常に努力をしなければならない。また,人権といえでも,「公共の福祉」による一定の制約が認められており,人権だからなんでもありということではない(つまり,権利の上にあぐらをかくと,その権利は抹消される危険がある。)。
基本的人権には,大きく1精神の自由,2経済の自由,3身体の自由,4平等権があげられる。
精神の自由は,主に表現の自由,宗教の自由,思想良心の自由,学問の自由がある。
経済の自由は,主に引越の自由,職業選択の自由,営業活動等の自由,財産権の確保などがある。
身体の自由は,奴隷的拘束の禁止,法律に基づかなければ刑罰を受けない,裁判権の保障などがある。
第4章 国会(41条~64条)
国会は衆議院と参議院があり,いずれも選挙で選ばれた国会議員で構成されること,国会議員には国会活動に必要な特権や報酬をもらえること,任期などが定められている。
また,国会は年1回開くこと,衆議院の議決権に優越があること,その反面衆議院は解散する場合があることが定められている。
さらに,国会の役割は法律を作ることや予算を決めること,条約の承認や首相を指名することなどであると定められている(それゆえ,国会を立法府と呼ぶ。)。
ちなみに,国会議員に特権を定めた趣旨は,戦前に議員を一気に逮捕するなどして国会の審議をないがしろにしたという反省から,国会議員が自由にかつ安心して審議ができるようにすることで民主主義を守ろうとしたものであり,国会議員が特権階級であることを定めたものではない。
第5章 内閣(65条~75条)
内閣が行政権を握っていることや,国会から指名された首相が国務大臣を自由に選び,または首にできること,大臣の半分以上は国会議員であることなど内閣の要件が定められている。また,内閣の仕事は,法律や予算の執行という行政部門であること,内閣総理大臣は,衆議院を解散することができる権限があることが定められている。
ちなみに,解散権については,国会(衆議院)から「この内閣けしからん」という内閣不信任案が出された場合の対抗手段として定められているが,不信任案がなくても自由に解散できると言われており,実際不信任案が可決されなくても解散しているのが実務である。
第6章 司法(76条~82条)
最高裁判所に憲法違反の法律を審査する権限があり,内閣や国会から横やりが入らないようにするために裁判官や裁判所の独立(司法権の独立)が定められていることで,裁判官の身分保障がされている。
これは,裁判所が「法の番人」として,民主主義による多数者が少数者に対する横暴を防ぐ為にも,時の権力者に一切左右されない組織とする必要があることから独立を認めた。
第7章 財政(83条~91条)
国の財政や税金徴収は,すべて法律によらなければならないこと,予算は毎年国会で審議する必要があること,決算は会計検査院でチェックをして,毎年国民に財政状況を報告すること,国の財産は公益目的以外には支出できないことが定められている。
これは,国の財政を国民の民主的コントロール下におくこと(国会が民主主義の結晶であるため)により,一部の権力者が勝手に支出をすることや,意味不明な財政負担を許さないという趣旨によるものである。
第8章 地方自治(92条~95条)
地方自治体は,法律の範囲内ではあるが,住民自治(地方自治体のあり方は住民が決める)と団体自治(地方自治体は,国の指図を受けることなく,各自治体の判断で仕事ができる)が認められている。具体的には,首長や議会はすべて選挙で選ぶこと,自治体の自主立法たる条例制定権を認めている。
これは,戦前は地方自治体はすべて国の管理下におかれていたが,地方の独自性を認めることで,地域住民のニーズに即した行政が行えるようにということから規定された。
第9章 改正(96条)
憲法改正のための手続を定めたものである。
衆参両議院のそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成で憲法改正の発議(憲法改正案)を行い,これを国民投票にかけて過半数の賛成で憲法改正になる。
ちなみに,国民投票については,去年ようやく国民投票法が成立したため,それに基づいて処理されることになる。
第10章 最高法規(97条~99条)
憲法が最高法規で,憲法に違反する法律は作れないこと,天皇や国会議員等の公務員は憲法を尊重する義務があることが定められている。
ちなみに,条文上は国民に憲法尊重義務が定められていないものの,一般に憲法を尊重するべき責務があるといわれている。
第11章 補則(100条~103条)
憲法施行に必要な規定であり,今は特に関係ない。
以上が憲法の概要です。これを踏まえて,さらに個別の規定やいろいろな問題点等を見てみるといかがでしょうか。きっと,「憲法と現実の乖離」が多少なりとも理解できるかもしれません。この乖離が「憲法改正」の議論の原点になります。憲法を直すのか,それとも現実を改めるのか,そこが争点になるのです。
そういう点も考えてみるいい機会もしれません。
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そこで,憲法記念日を踏まえて,あらためて日本国憲法について考えてみようと思います。今回は,日本国憲法の条文に何が書いてあるのか,ダイジェスト的に説明したいと思います。また,制度趣旨や背景事情なども説明します。
なお,憲法の基本的骨格については,過去の記事(こちらで過去の記事に飛べます)を参考にしていただければ幸いです。
第1章 天皇(1条~8条)
天皇が日本国の象徴であること(前文と併せて主権が国民にあるということになる),天皇が行える行為は「国事行為」という非政治的行為のみであり,それも内閣の助言と承認が必要である。
第2章 戦争の放棄(9条)
戦争や武力行使を永久に放棄し,その目的達成のため,軍隊は持たないとした。
ちなみに,の「戦争」に「自衛のための戦争」が含まれるのか,また「軍隊」に「自衛隊」が含まれるのか,これが今日も議論となっている。
第3章 国民の権利及び義務(10条~40条)
いわゆる「基本的人権」と呼ばれている部分である。
まず,基本的人権はすべての国民に認められているが,一方で「人権だからなんでもあり」という態度はよろしくなく,権利を保持するためには国民は常に努力をしなければならない。また,人権といえでも,「公共の福祉」による一定の制約が認められており,人権だからなんでもありということではない(つまり,権利の上にあぐらをかくと,その権利は抹消される危険がある。)。
基本的人権には,大きく1精神の自由,2経済の自由,3身体の自由,4平等権があげられる。
精神の自由は,主に表現の自由,宗教の自由,思想良心の自由,学問の自由がある。
経済の自由は,主に引越の自由,職業選択の自由,営業活動等の自由,財産権の確保などがある。
身体の自由は,奴隷的拘束の禁止,法律に基づかなければ刑罰を受けない,裁判権の保障などがある。
第4章 国会(41条~64条)
国会は衆議院と参議院があり,いずれも選挙で選ばれた国会議員で構成されること,国会議員には国会活動に必要な特権や報酬をもらえること,任期などが定められている。
また,国会は年1回開くこと,衆議院の議決権に優越があること,その反面衆議院は解散する場合があることが定められている。
さらに,国会の役割は法律を作ることや予算を決めること,条約の承認や首相を指名することなどであると定められている(それゆえ,国会を立法府と呼ぶ。)。
ちなみに,国会議員に特権を定めた趣旨は,戦前に議員を一気に逮捕するなどして国会の審議をないがしろにしたという反省から,国会議員が自由にかつ安心して審議ができるようにすることで民主主義を守ろうとしたものであり,国会議員が特権階級であることを定めたものではない。
第5章 内閣(65条~75条)
内閣が行政権を握っていることや,国会から指名された首相が国務大臣を自由に選び,または首にできること,大臣の半分以上は国会議員であることなど内閣の要件が定められている。また,内閣の仕事は,法律や予算の執行という行政部門であること,内閣総理大臣は,衆議院を解散することができる権限があることが定められている。
ちなみに,解散権については,国会(衆議院)から「この内閣けしからん」という内閣不信任案が出された場合の対抗手段として定められているが,不信任案がなくても自由に解散できると言われており,実際不信任案が可決されなくても解散しているのが実務である。
第6章 司法(76条~82条)
最高裁判所に憲法違反の法律を審査する権限があり,内閣や国会から横やりが入らないようにするために裁判官や裁判所の独立(司法権の独立)が定められていることで,裁判官の身分保障がされている。
これは,裁判所が「法の番人」として,民主主義による多数者が少数者に対する横暴を防ぐ為にも,時の権力者に一切左右されない組織とする必要があることから独立を認めた。
第7章 財政(83条~91条)
国の財政や税金徴収は,すべて法律によらなければならないこと,予算は毎年国会で審議する必要があること,決算は会計検査院でチェックをして,毎年国民に財政状況を報告すること,国の財産は公益目的以外には支出できないことが定められている。
これは,国の財政を国民の民主的コントロール下におくこと(国会が民主主義の結晶であるため)により,一部の権力者が勝手に支出をすることや,意味不明な財政負担を許さないという趣旨によるものである。
第8章 地方自治(92条~95条)
地方自治体は,法律の範囲内ではあるが,住民自治(地方自治体のあり方は住民が決める)と団体自治(地方自治体は,国の指図を受けることなく,各自治体の判断で仕事ができる)が認められている。具体的には,首長や議会はすべて選挙で選ぶこと,自治体の自主立法たる条例制定権を認めている。
これは,戦前は地方自治体はすべて国の管理下におかれていたが,地方の独自性を認めることで,地域住民のニーズに即した行政が行えるようにということから規定された。
第9章 改正(96条)
憲法改正のための手続を定めたものである。
衆参両議院のそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成で憲法改正の発議(憲法改正案)を行い,これを国民投票にかけて過半数の賛成で憲法改正になる。
ちなみに,国民投票については,去年ようやく国民投票法が成立したため,それに基づいて処理されることになる。
第10章 最高法規(97条~99条)
憲法が最高法規で,憲法に違反する法律は作れないこと,天皇や国会議員等の公務員は憲法を尊重する義務があることが定められている。
ちなみに,条文上は国民に憲法尊重義務が定められていないものの,一般に憲法を尊重するべき責務があるといわれている。
第11章 補則(100条~103条)
憲法施行に必要な規定であり,今は特に関係ない。
以上が憲法の概要です。これを踏まえて,さらに個別の規定やいろいろな問題点等を見てみるといかがでしょうか。きっと,「憲法と現実の乖離」が多少なりとも理解できるかもしれません。この乖離が「憲法改正」の議論の原点になります。憲法を直すのか,それとも現実を改めるのか,そこが争点になるのです。
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