夜明け
テレビを観ながらいつの間にやら眠っていた。
青年となったアコとサイクリングに出かけた夢を見た.
アコとはぐれてしまった。
漸く、出会って一緒に走り始めたところで目が醒めた。
2時間タイマーが切れずにテレビは放映していた。
もう一度夢の続きを見ようとしたが眠りにつけなかった。
時計は夜中の11時を回ったところだった。
「アコ,どのコースを走る?」
「お父さんにまかせる」
故郷の山裾を南北を走る大通りにふたりはいた。
この大通りは記憶にはない新しい道である。
夢によく出るこの山は南の裾から山を登ると、途中道は二手に分かれる。
深い木々に覆われた険しい山道の方を登ると森林に埋もれた山頂に出る。更に、暗い森林を下るとアルプスのような深い谷あいの町に出る。はるか彼方に雪を被った山々の白い峰々が続く。
もう一方の道は低木に覆われ、山腹を晴れ渡った青空を仰ぎながら登る。
なだらかな山道である。
頂上に着くと、眼下には草原が広がりゆるやかに下ってゆく。
山腹にはせせらぎが山を下り、夢を見るたびに、いつも花が咲き乱れ、空は晴れ渡っている。
アコはこのコースは知らない。
連れて行きたいが自転車では行けない。
「アコ、左に行こう。30分くらいで国道に出るから東に向かって走ろう」
「どこまで行くの」
「今日中に帰り着くように、引き返せるところまでいこう」
国道に出たところで迷った。
道は広くて平坦だが、変哲もないコースになる。
西へ向かえば中心街に出るだけで、きょうは街の喧騒から逃げたい。
「アコ、戻ろう。このコース面白くない」
そう云って踵を返した。
「アコ、道路地図を貰って来よう」
来る時にこの辺りでみた案内所を探してはじめた。
気がつくとアコがいない。
「はぐれた!}
携帯電話が内ポケットにあることに気づいた。
あわてて取り出そうとした。携帯電話が道路上に落ちた。
壊れたかもしれない。
アコと連絡が取れなくなる。
暗然としてダイヤルをした。
直ぐに、アコが出た。ほっとする。
「どこにいる!」
「おとうさんはどこ?」
「戻っているところだよ。行く先変更しようと云ったでしょう」
「〇〇があって気にしていたらお父さんがいなくなった」
〇〇とは何であったかわからない。
今も思い出せない。
「さあ、行こう」
自転車を元来た方向にUターンしょうとペダルに足を掛けた途端、
「おとうさ~ん!」と背中で遠く呼ぶ声がする。
急いで自転車をまわし、声の聞こえる方向にペダルを踏む。
橋の工事現場からであった。
さっき通った工事現場だ。
たくさんの人たちが仮の橋を渡っている。
その中に赤い服を着た若い女性がしきりに手を振っている。
アコだ。
「ここよ、はやく!」
あいつ、いつの間にあんなところまで行ったのか。
高所恐怖症のわたしはもう一本の仮の橋を渡り始めた。
意識が靄のように薄れていく。
橋だけが足元にあった。
「アッコ!」
そう叫んだとき、電灯の灯りがまぶしく目を射た。
おとうさ~ん!」
アコの声がいつまでも耳に残っていた。
あいつ、赤い洋服など着たことなかったのにーーー。
テレビを観ながらいつの間にやら眠っていた。
青年となったアコとサイクリングに出かけた夢を見た.
アコとはぐれてしまった。
漸く、出会って一緒に走り始めたところで目が醒めた。
2時間タイマーが切れずにテレビは放映していた。
もう一度夢の続きを見ようとしたが眠りにつけなかった。
時計は夜中の11時を回ったところだった。
「アコ,どのコースを走る?」
「お父さんにまかせる」
故郷の山裾を南北を走る大通りにふたりはいた。
この大通りは記憶にはない新しい道である。
夢によく出るこの山は南の裾から山を登ると、途中道は二手に分かれる。
深い木々に覆われた険しい山道の方を登ると森林に埋もれた山頂に出る。更に、暗い森林を下るとアルプスのような深い谷あいの町に出る。はるか彼方に雪を被った山々の白い峰々が続く。
もう一方の道は低木に覆われ、山腹を晴れ渡った青空を仰ぎながら登る。
なだらかな山道である。
頂上に着くと、眼下には草原が広がりゆるやかに下ってゆく。
山腹にはせせらぎが山を下り、夢を見るたびに、いつも花が咲き乱れ、空は晴れ渡っている。
アコはこのコースは知らない。
連れて行きたいが自転車では行けない。
「アコ、左に行こう。30分くらいで国道に出るから東に向かって走ろう」
「どこまで行くの」
「今日中に帰り着くように、引き返せるところまでいこう」
国道に出たところで迷った。
道は広くて平坦だが、変哲もないコースになる。
西へ向かえば中心街に出るだけで、きょうは街の喧騒から逃げたい。
「アコ、戻ろう。このコース面白くない」
そう云って踵を返した。
「アコ、道路地図を貰って来よう」
来る時にこの辺りでみた案内所を探してはじめた。
気がつくとアコがいない。
「はぐれた!}
携帯電話が内ポケットにあることに気づいた。
あわてて取り出そうとした。携帯電話が道路上に落ちた。
壊れたかもしれない。
アコと連絡が取れなくなる。
暗然としてダイヤルをした。
直ぐに、アコが出た。ほっとする。
「どこにいる!」
「おとうさんはどこ?」
「戻っているところだよ。行く先変更しようと云ったでしょう」
「〇〇があって気にしていたらお父さんがいなくなった」
〇〇とは何であったかわからない。
今も思い出せない。
「さあ、行こう」
自転車を元来た方向にUターンしょうとペダルに足を掛けた途端、
「おとうさ~ん!」と背中で遠く呼ぶ声がする。
急いで自転車をまわし、声の聞こえる方向にペダルを踏む。
橋の工事現場からであった。
さっき通った工事現場だ。
たくさんの人たちが仮の橋を渡っている。
その中に赤い服を着た若い女性がしきりに手を振っている。
アコだ。
「ここよ、はやく!」
あいつ、いつの間にあんなところまで行ったのか。
高所恐怖症のわたしはもう一本の仮の橋を渡り始めた。
意識が靄のように薄れていく。
橋だけが足元にあった。
「アッコ!」
そう叫んだとき、電灯の灯りがまぶしく目を射た。
おとうさ~ん!」
アコの声がいつまでも耳に残っていた。
あいつ、赤い洋服など着たことなかったのにーーー。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます