松下啓一 自治・政策・まちづくり

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○公費で空き家を撤去する(長崎市)

2016-05-06 | 空き家問題

 土地建物を役所に寄贈し、解体後の土地を地元で管理することを条件に、公費で空き家を撤去するものである。

 老朽化した空き家の解体については、解体費用の一部が補助される「補助金型事業」と、土地・建物を寄贈・貸与する代わりに解体費用の全額を公費で出す「公費解体型事業」の2つに分類ができる。

 長崎市では2006 年度から、公費解体型事業である「老朽危険空き家対策事業」を行っている。なお、2011 年度からは、補助金型事業の「老朽危険空き家除却費補助金」も行っていて、補助と公費の両方で、空き家解体に力を入れている、「先進的」な自治体といえる。

 長崎市の特徴は、坂である。戦後から高度成長期にかけての急激な人口増加に対して、平地が乏しい長崎市では、斜面地への市街地が拡がって行った。長崎市の既成市街地の約7割は斜面地にあって、車両が侵入できない道や急な坂道が多い。ここから、人口流出が起きて、著しい空き家の増加となっている。こういった背景から、公費解体型の空き家対策が、事業化されたのだろう。

 公費解体型のメリットであるが、補助金型の場合、跡地は私有地のままなので、地域住民が出入りできる可能性は低く、公的資金が投入されているにも関わらず、地域において公共的利用は困難である。
 これに対して、公費解体型の場合は、土地は、寄贈を受けるので、地域住民の希望に沿った用途として活用する事もできる。

 老朽危険空き家対策事業は、こうした空き家を公費で解体する事業である。下記の条件にすべて当てはまるものの解体を行う。
 1.対象区域内にあるもの。対象地域は市全域ではなく、市が定めた「特に整備の必要な既成市街地」と範囲が限定されており、空家が地域に及ぼす危険性の高さや、解体後の活用の見込み等を考慮する。
 2.所有者から土地と建物を長崎市へ寄附又は無償譲渡されること
 3.解体後の土地の日常の維持管理を、地元の町内会等でおこなうこと

 手順としては、申込者(所有者または相続人)⇒まちづくり推進室受付⇒現地調査⇒地元意向調査⇒申込者申請書提出⇒判定⇒申込者へ通知⇒解体⇒整地⇒地元利用・管理となっている。 

  解体後の用途については、周辺住民のための広場、休憩場所や公園、駐輪場、ゴミステーション等にも使われている。

 率直に言って、公費を投入をしてまで、空き家を解体するのは、過ぎたるものはないかと考えていたが、長崎市ならではの事情もあるからである。公費で撤去した空き地は、地元町内会等が管理するが、当事者が責任を持つという方式は、好ましいものである。

 調べてみると、この長崎方式を採用する自治体もいくつか散見される。山形市、滑川市なども同じ方式である。小松市でも、2015年9月1日に、土地、家屋ともに寄付された同市桂町にある空き家の解体を始めた。整地後、地元の桂町町内会が公園として活用する。市が設けた「市未活用住宅等の対応措置要綱」の適用第1号とのことである。

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