千葉県御宿町の御宿小学校更新にかかる公開討論会のファシリテーターを頼まれた。
御宿小学校は、開設以来、もう少しで60年を迎える。そこで、この学校を新築移転するか、改築するかで町をあげた議論になっている。
簡単に言うと、行政は、中学校に移設新築する案であるのに対して、議会の多数は、現状で改築する案に分かれて、先に進まない。予算を出しても否決になる。そこで、住民の意見を聴く公開討論会をやろうとなったわけである。そのファシリテーターを頼まれた。
ただ、この討論会の実施は急に決まった話なので、ほとんど準備期間がないなかでの開催である。正直、あまりに急の話だし、明らかに準備不足なので、お断りしようかと思ったが、御宿町のことなので、引き受けることにした。
私としては、まちの人たちが、みんなで議論できるようにという組み立てで考えたが、その以前に、たくさんの質問や疑問がでて、結局、質疑の会になった。
その詳細は、省略するが、そのなかで気がついたことを記録しておこう。
1.移転する理由・訳とその他の理由がごちゃごちゃになっている
たとえば、中学校への併設で、小中一貫の教育ができるという理由がある。小中一貫教育そのものもたくさんの論点があるが、これは移設と直接的な関係があることなのか。つまり小中一貫のための移設するのかという問題である。おそらく、そうではなくて、中学校へ移設する結果として、一貫教育がしやすくなるというだけなのだろう。となると、同じ場所でなくても小中一貫教育はできるんじゃないかという反論が出て、話がどんどん横道にそれる。
まずは、移設する直接的な理由と間接的な効果や理由をわけて、整理して議論する必要があるのだろう。改築と考える立場でも、同じことである。ズバリこれだから移設する、これだから改築するを明確にする。
2.10年、20年後の小学校の未来について、共通の理解が必要ではないか
聞くと毎年の新入生は、ほぼ10人くらいで、先に行けば行くほど、少なくなる。全体で50人くらいの小学校なのだろう。少子化が進めば、もっと小さな小学校になる。ここから、ハコモノのあり方や教育の内容が決まってくる。参加者は高齢者が多かったが、自分の小学校時代をイメージして発言しているように思った。
3.1との関係するが、移設や改修後に対応すればいい問題も、ごちゃごちゃに議論されている
中学校も入り口が道路に面していて危ないという意見があったが、これなどは、あとから改善できる。移設の決定的な話にはならない。むろん、親としては心配なので、対応する必要があるが、移設か改修かでは、必要な論点ではない。
4.費用などもよく分からない
現時点では、詳細で正確な費用は出ないかもしれないが、大まか、新設ではいくらなのか、改修ではいくらなのか、明確な説明がないと先に進めない。行政はあやふやなものは出せないというのは理解できるが、おおまかでも、それがないと先に進めない。
また、費用は設定する条件によって、金額が違ってくる。自分に都合のよい条件を設定して金額を出してもそれで紛糾する。将来の小学校の規模を想定して、既存施設や補助金など、使えるものは使ってなどという条件を設定して、それでもいくらかかるかを出して、判断の参考にしないといけない。
5、要するに、事実として前提すること(たとえば費用)とみんなで議論することをまずは整理して、話を進める必要がある
アスベストの話があったが、こんな問題は、あるはずだとか、ないはずだとか議論することではなくて、調査で決まっていることである。もしあるのなら、移転以前に、いますぐに対応することだからである。
6.これまで住民が意見をいう場をつくってこなかったこと
だから、議論が整理されず、さまざまな不安や疑問が混とんとして、話が混在して先には進めない。あと1回くらいは、自由な話し合いの機会をつくって、1~5で述べた事柄を整理して、みなで決める素材を整理する必要があるのではないか。結局、それのほうが早道だろう。
7.大事なのは、人口7000人の小さな町で、みんな子どもの未来を考えているのに、ちっとも議論が進まず、相手が無理解などと言って対立しあっててもしょうがない。もったいない。この問題をてこに、みんなで考え、違う意見を認め合い、止揚して、合意していく、いい機会にしたらよい。それができるはずだ。がんばれ御宿町。