松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆行政区長の位置づけ、考え方の整理

2022-04-22 | 1.研究活動
 このブログで、「行政区長に関する記事が、人気ベスト1に、なっているときが多いが、その理由はなんででしょうか」。と聞かれたことがあった。

 実は、記事の人気ランキングそのものを、ほとんど意識したことがないので、そんなランキングがあり、それを意識した人がいることに驚いたというのが、率直な印象だった。

 たしかに、たしかに、この記事の人気は高い。ということは、それだけ関心が高いということなのだろう。

1.地方公務員法の改正
(1)増える仕事 
 ・自治体の仕事はどんどん増えている。その理由は、いろいろあるが、公共的関与が必要な課題の増加である。今までなら、個人の責任に任せていたものが、自治体に仕事になった(例えば、空き家問題。これは、不動産の所有権という、最も私的な事柄である)。
 ・これまで自治会町内会、行政区など公共的組織の弱体化である。
 ・その分、自治体への期待が高まっているからである。

(2)増えない公務員
 ・自治体の財政が厳しくなってきた。簡単には公務員を増やせない。
 ・政治的動向として、公務員削減の動きも大きい(市長選挙挑戦者がすぐに掲げる)。

(3)代替措置としてのバイト職員
 ・増える仕事と減る職員のはざまで、どうするか
 ・定数にものらない、職員を採用する。
 ・税金を増やすこともままならず、結局、職員の人件費で帳尻を合わせることになり、正規職員の給料を下げるわけにもいかないから、バイトの職員を入れるようになった。

(4)困ってしまって地方公務員法の改正
 ・とりあえずで始まったので、そのバイトの採用身分は、 特別職非常勤、一般職非常勤、臨時的任用職と、要するに、そのときの予算等のやりやすさで採用した。
 ・それぞれは、本来、根拠条文によって、義務の範囲等が違う。例えば、特別職は、地方公務員法の適用がないので、法上の守秘義務を負わない。
 ・それでも適当にやっていたが、すでにバイトが60万人以上に膨れ上がってしまった。
 ・その他さまざまな要素もあって、もう、そのままでは放置できない。そこでいよいよ手を付けたのが、平成29年の地方公務員法の改正である。
 ・バイトの公務員は、会計年度任用職員という制度に囲い込み、その反面、特別職非常勤、臨時的任用は、本来の趣旨に合うものに限定するなどの改正を行った。

2.行政区長の位置づけ
(1)元は特別職非常勤公務員が主流
 ・これまで、行政区長は、多くの市町村が特別職非常勤職員に任用していた。これは、行政実例(昭 26年5月1日付 地自公発第179号福岡市長あて 公務員課長回答)において、 町世話人は同条同号に規定する特別職の地方公務員と考えるとされているところに由来する。
・しかし、地方公務員法の改正で、特別職非常勤職員は、厳格に運用されるようになった。地方公務員法第3条第3項第三号は、三 臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職であるが、これにプラスされ、
➊専門的な知識経験又は識見を有すること、
❷当該知識経験等に基づき事務を行うこと
❸事務の種類が、助言、調査、診断又は総務省令で定める事務であることの全ての要件を満たす必要がある。
・総務省は平成32年4月施行予定の改正地方公務員法に関するマニュアルをつくっている。
 総務省の回答では、「「町(村)からの配布物の配布・アンケートの回収」や「住民からの要望の対応」は、「助言、調査、診断その他総務省令で定める事務」に該当しないため、第3号の特別職非常勤職員として任用することはできない」とされている。

(2)行政区長の方向性(自治体ごとの事情に応じて)
ア.自治体の対応は、大別して3つに分かれる。
 公務員としたい場合は、①特別職非常勤か、②会計年度任用職員として任用することになる。
地方公務員に任命する必要がない場合は③私人(業務委託、有償ボランティア等)として整理することになる。

イ.会計年度任用職員
 会年年度任用職員というのは無理、現実的ではないとされる。
 ・バイトとはいえ、常勤の公務員である。そうすると、地方公務員法の適用があり、「職務に専念する義務」、「政治的行為の制限」等が課される。これは区長となる者の私生活を著しく制限することになる。区長業務に対する萎縮・敬遠につながり、ただでさえなり手が少ない現状を悪化させることになるとされる。
 ・さらに言えば、公務員なのであるから、職務に専念する義務があり、人事評価制度が義務付けられることになる。町の職員が区長の業務を常時監督することになるが、いろいろな意味で、職員が評価することは実際にはできないだろう。町の職員から、評価を受けるくらいなら、区長にならないという事態が続出するとされる。
 北見市は、この制度のようで、特異な例である。調べてみると面白いかもしれない。

ウ.総務省は、「私人」というのを推奨している。
 ・国の指導もあり、これが今日の主流である。
 ・行政区への委託や補助、行政区長との有償ボランティアとする方法がある。行政区への委託等では、行政区と区長が、契約することになる。行政区長も、行政区から謝礼金、活動費の補填金をもらうことになるが、こういうやり方は、区長は嫌がるという意見もあるが、このあたりは、私はよく分からない(プライドが傷つけられるのだろうか?)。
 ・私人だと、 地方公務員法の信用失墜行為の禁止(同法第 33 条)や 秘密を守る義務(同法第 34 条)の適用がない。 また、私人なので、地方公務員災害補償法(昭和 42 年法律第 121 号)、労働者災害補償保険法(昭和 22 年法律第 50 号)及び非常勤職員の公務災害補償等に関する条例は適用されないので、別の対応が必要になる。

エ.特別職非常勤(私はこれがいいと思う)
 ・行政区長等の事務が「町と地区住民の連絡調整や回覧文書等の配布等」に限定されると、特別職非常勤の要件に当てはまらない。
 ・新城市の区長等の設置に関する条例では、
(区長の職務等)
第3条 区長の職務は,次のとおりとする。
⑴ 市が行う事務又は事業であって,当該行政区に関するものについて助言し,及び調査すること。
⑵ 市が行う事務又は事業であって,全部又は一部の行政区に関するものについて,その知識経験に基づいて意見を述べること。
⑶ その他市長が必要と認めること
としている。
 単に回覧文書の配布ではないことを明示している。これは総務省の回答を意識したつくりとなっている。実際、新城市は、区長を単なる配布物配りと考えていないことは承知している。
 ・要するに、行政区長の活動を回覧配りではなく、特別職非常勤にふさわしいものに転換していこうという期待でもある。
 ・特別職非常勤公務員ならば、過剰な服務等を課さないし、私人よりは、行政区長の担い手の適正な人材確保及び任用が可能となるとみているのだろう(公務だという意識・誇り)。このあたりも、私にはわからない。

3.日本型地方自治システムとの関係(私の関心)
 この行政区長の位置づけは、日本型地方自治システムの今後と密接に関係しているというのが私の問題意識である。
 要するに、日本の地方自治を下支えする行政区長などの行政連携組織のあり方はどうなのかということである。
 私は、準公務員化(ボランティア型公務員、まちづくり型公務員という新たな枠組み)が、実態に合った一つの方向性ではないかと考えているが、考えてみようと思っている。

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