ゼミ生でも、遊んでくれるのは結婚してない人である。ただ、みな結婚するつもりはあるようだ。多くは、適当な結婚相手が見つからないであって、要するに、それは努力して、相手を見つけようとするまでの、結婚のメリットを感じられないということだろう。
結婚のメリットについて、結婚の経済学のG・ベッカーは、結婚のメリットを①夫婦の分業によるメリット、②家族の規模の拡大によるメリット、③その他精神的充足など結婚固有のメリット、の三つに分類して分析している。
①分業によるメリットは、家庭外で就労して収入を得ることと、炊事、洗濯、掃除などの家事一般を賄うことにより生活が成り立っているとした場合に、夫と妻がそれぞれ両者をこなすよりも、役割分担をしてそれぞれが一方に特化した方が効率的だとするものである。
ベーカーの時代ならばともかく、これは今の日本には通用しない。まず、男女共同参画に代表されるように、男女平等の考え方が徹底してきた。具体的には女性の高学歴化が進んでいる。その結果、男女の賃金格差も縮小しつつある。男女の所得が逆転する場合だってある。だから、「男性が外で所得収入を得ることが家計にとって最も効率がいい」とは必ずしも言えない。
家庭生活面でも分業のメリットは不明確になってきている。例えば、24時間営業のコンビニエンス・ストア、弁当、そう菜などを含めた外食・中食産業、生活の利便を向上させる多様な家電、そしてインターネットの普及などにより、相手に頼まなくても、単身で暮らしてもできることが増えて、それほど不便でなくなってきている。
②規模の拡大によるメリットは、夫婦が一緒に暮らし共同生活を行うことで、二人がそれぞれ単身で生活する場合に比べて、様々な生計費の一人当たりにかかる費用が圧縮され、節約できるということである。
一人暮らしが増えてきて、それに対応したサービスが、増えてきた。食事なども、配給サービスが充実して、いろいろな会社や組織が、質の高さと低価格を競っている。多少の値段の高さはあるかもしれないが、規模によるメリットは、それほど大きくはない。
水道料金などは、逓増体系になっていて、最初は安く抑えられていて、量を使うと急速に高くなるが、これなどは、むしろ規模のデメリットだろう。たしかに、温泉旅館の値段など、二人を前提にするものが多く、結婚による規模のメリットは未だ存在するものの、徐々に、変わっていくであろう。規模の拡大によるメリットを感じることができる未婚者は少なくなってきていると言える。
③その他結婚固有のメリットは、パートナーからの愛情や思いやりなど、心理面において得られる大きな満足といったものである。どちらかが病に倒れるなどの不測の事態が生じたときに、配偶者と助け合えるという言わば保険としてのメリットもある。
「家族や子どもを持てる」や「精神的な安定が得られる」、「好きな人と一緒にいられる」又は「人生の喜びや悲しみを分かち合える」、「家族の団らん」や「安らぎの場」などである。ただ、この面のよさは、なかなか伝わりにくい。
我が家に当てはめると、一番大きいのは、どちらかが病に倒れるなどの不測の事態が生じたときに、配偶者と助け合えることだろう。連れ合いが、最近、また腰の骨折したが、そのため靴下を履いたり、腰を折り曲げて、電源プラグを差し込んだりできないから、それが私の役割である。靴下を履かせるために、商業サービスを受けたり、公共サービスを期待するのは、できないであろう。
要するに、生活サービスの商業化と公共サービスの充実が、これまでの結婚のメリットを上回ってきたために、結婚の意義が薄れてきたということなので、未婚率を下げるという政策は、簡単にはいかないということだろう。
しかし、商業化や公共化では、カバーしきれない部分も大きい。年を取って、一人で暮らす不安はみなあると思う。結婚という形式にこだわることはないが、連れ合いを求めるという部分は、誰にでも共感できるのではないか。
一人でいることは権利でもあるとともに、望まない孤住もあるので、その政策的対応は難しいですね。
考えてみたら、自分たち夫婦とその子どもというのが兵十家庭とされ、それで家もつくってきました。
望まないひとり暮らがふえているなかで、住まいという面からも新たなアプローチが必要ですね。
本当に考えるべきことがたくさんありますね。