松下啓一 自治・政策・まちづくり

【連絡先】seisakumatsu@gmail.com 又は seisaku_matsu@hotmail.com

☆書評『事例から学ぶ 若者の地域参画 成功の決め手』

2020-08-07 | 1.研究活動
 新城市の穂積市長さんが、第一法規の「政策法務Facilitator」という冊子に、私の『事例から学ぶ 若者の地域参画 成功の決め手』(第一法規)の書評を書いてくれた。

 本に込めた思いを汲み取り、それを文章に表現する力には、敬服する。わかりやすく言うと、私には、とても、こんな重厚な文章は書けない。感謝、申し上げたい。


【以下、転載  出典:政策法務Facilitator.Vol67.p27】

 著者の松下啓一氏は、職業人生の前半を自治体職員として、後半を大学教員として過ごされた。そのキャリアの中から構想されてくる提言は、自治体経営や市民活動にとっていつも新鮮でフレンドリーな呼びかけに満ちているが、底流には伝来の市民自治社会理論に対する批判的考察が貫かれているように思われる。

 住民は行政機関を監視・統制する回路を通るだけで賢くなれるわけではないし、また行政職員集団も住民の求めに応えさえすれば自治体の民主的運営に長じられるわけではない。市民政府を起動させる信託理論を、そのまま自治体に引き写すことには無理があるのである。自治体は排他的統治権を持つ権力主体ではなく、その行う業務の過半は地域社会の共同事務に根を持つものだからだ。

 このためにさまざまな公共的事業を、行政代行に一方的に委ねれば委ねるほど、地域社会の本来的活力と民主的な市民力は進化の道を閉ざされる。
 ここに「協働」の理論と実践の必要が生まれてきたが、氏はもう一歩進んで「励ます地方自治」を提唱するのである。

 さらに大学進学率が50%以上にもなる社会で、一般的大学教育の役割は、高度専門人材育成の前に「良き市民」を育て、送り出すことに重きが置かれるべきと、地域とのかかわりの中で学生を育ててこられた。

 自治体論、地域社会論、大学・若者論のすべてを有機的に絡み合わせてみると、そこに見えてくるのは、社会を担う全ての人がより良き市民として登場してこれる肥沃な土壌の広がりである。

 「本書は、若者の地域参画の実践に焦点を当てて書いたものである。地域に参画する若者、若者を受け入れる地域組織、若者を後押しする学校、そして若者参画を推進したいと考える行政のためのヒント満載の実践書とした」(著者あとがきより)というとおり、本書は氏にしてはじめて書き上げられ得た本であるとともに、若者、地域、自治体にかかわる人々の背中を押してくれる励ましの書である。

 新城市では氏の提言に導かれて若者議会を立ち上げたのだが、本書によってもっともっと優れた若者活躍社会が随所で出現することを期待したい。  (愛知県新城市長 穂積亮次)

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