松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆自治体行政(OS)の書き換え(三浦半島)

2018-08-25 | 地方自治法と地方自治のはざまで
 国は、2040年頃にかけて迫り来る我が国の内政上の危機に対して、国は自治体行政(OS)の書き換えを目指すという。
 そのことを記した「自治体戦略2040構想研究会の報告」を期待しながら、読んだ。

 この報告をまとめるにあたってのご苦労は多とするが、正直、OSの書き換えになっていないと思った。ソフトのバージョンアップというのが、偽らざる感想である。

 この報告では、2040年頃にかけて迫り来る我が国の内政上の危機をかなり衝撃的に取り上げている。
 1.若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏
 2.標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全
 3.スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラ

 問題提起は鮮やかであるが、問題は、その答えである。

 報告書は,OSの書き換えの方向性を次のように整理している。
 1.個々の市町村が行政のフルセット主義を排し、圏域単位で、あるいは圏域を越えた都市・地方の自治体間で、有機的に連携することが必要
 2.都道府県・市町村の二層制を柔軟化し、それぞれの地域に応じた行政の共通基盤の構築を進めていくことも必要  
 3.医療・介護ニーズの急増や首都直下地震への対応など、東京圏全体のサービス供給体制の構築が必要
 4.公・共・私のベストミックスによる社会課題の解決が求められる。活躍の場が必要な人々が多様な働き方ができる 受け皿を作り出す方策について検討が必要
 5.自治体の業務プロセスやシステムは、大胆に標準化・共 同化し、ICTの活用を前提とした自治体行政の展開が必要

 しかし、2040年頃にかけて迫り来る我が国の内政上の危機に対応するには、もっと根本的なところからOSの書き換えが必要だと思う。
 
 1.自治の基本を民主的統制のくびきから解き放ち、もう一つの柱を構築することである。私はこれは「励ます地方自治」の並立といっている。監視の地方自治ではもう限界である。これは新しい文化を構想することと同じような遠大な試みではあるが、そこに踏み込むしかないと思う。ここが一番のポイントである。

 2.みんなが存分に力を発揮することである。励ますことで、みんなの内発力に刺激を与えることができる。この点は、報告書にも「公・共・私のベストミックス」と書かれているが、もっと直截的に、表現した方がいいと思う。協働の再構築でもある(ここに協働とは、単に一緒に活動することではない)。

 3.励ますという観点に立てば、チームとしての自治体ができる。報告書には、「都道府県・市町村の二層制を柔軟化し」と書かれているが、都道府県・市町村はひとつのチームである。都道府県・市町村どちらがサービスしようと、住民にはほとんど関係ない。チームとなって一体として、住民サービスを担当する。これは厳しい市町村を都道府県が励ます一形態である。
 明治以来、続いてきた、二層制の再構築である。

 
 それ以外のことも含め、最近出した『現代自治体論-励ます地方自治の展開・地方自治法を越えて』(萌書房)に詳しく書いた。5年先は難しいかもしれないが、10年先には、この本の通りになると思う。
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