横須賀市の地域福祉計画がパブコメにかかった。いくつか気になるところがあるが、「支える人を支える」という観点から意見を出してみた。
対象は、「(2)地域福祉に関わる専門職等の確保・養成」の部分である。
計画の「施策の方向性」では
複合化・複雑化した福祉課題に対応するため、福祉事業所等の合同企業説明会への参加支援などの人材確保及び福祉分野の専門職等に対する研修の充実に取り組みます。と書かれている。
「現状と課題」では
少子・高齢社会の到来等により、福祉サービスに対するニーズはますます増大することが見込まれています。
また、核家族化や価値観の多様化から福祉サービスも多様化しています。
福祉の各分野では利用者本位の質の高い福祉サービスの提供が求められることから、サービス提供の根幹である福祉分野の専門職等の確保・養成が極めて重要です。
一方で、2025年以降は全国的に「高齢者人口の急増」という局面から「生産年齢人口の急減」という局面に移行すると見込まれています。
このため、専門職等の確保・養成に加えて高齢者をはじめとした多様な就労・社会参加の促進やサービスの質の向上、従事者の負担軽減が課題となっていると考えられます。としている。問題意識はその通りだと思う。
なお、関連してボランティア等を中心とする福祉団体の活動支援の記述がある。
「(3)福祉団体の活動の支援」
施策の方向性
地域の多様な福祉団体の活動の周知等を支援していきます。
また、本市における地域福祉の中心的な役割を果たす市社会福祉協議会について、運営支援を行うとともに情報共有や活動の支援を行います。
なお、市社会福祉協議会では、地域福祉推進のために活用されている「赤い羽根共同募金」等の共同募金事業を引き続き推進していきます。
要するに、問題意識に対する回答が、これで足りているかである。
私の意見は次の通りである。
こんにちは ごくろうさまです。とても大事な計画だと思い、特に気になって点をコメントします。
(2)地域福祉に関わる専門職等の確保・育成について
コロナ禍で明らかになりましたが、どんな制度も担い手がいけなければ動きません。その点、これまでの地域福祉計画は、受援者の立場で書かれているため、福祉を支える側の視点が極めて弱いと考えています。
本計画でも、この点は「福祉事業所等の合同企業説明会への参加支援などの人材確保及び福祉分野の専門職等に対する研修の充実」という消極的記述にとどまっています。
ボランティア等の福祉団体の「活動の周知等を支援していく」ことも重要ですが、「専門職等である福祉従事者がやりがいを持って働き続けることができる施策」にもっと積極的に踏み込むべきではないでしょうか。そうしたプロの活躍がないと、「現状と課題」で示している、2025年以降の福祉困難時代に対応できないと思います。
具体的には、次のような施策・事業を横須賀市がリーダーシップをとって、積極的に推進していくことを明示してほしいと思います。
(1)たとえば「新城市福祉従事者がやりがいを持って働き続けることができるまちづくり条例」第8条に規定する
・支え手の資質及びサービスの質の向上を図る施策
・支え手になろうとする者及びそれを事業として始めようとする者を支援する施策
・支え手の活動を知り、及び学ぶ機会を創出する施策
・支え手及び市民、各種団体、行政の相互の連携及び協力の関係を構築する施策
・支え手及び事業者等を支援し、これらのものの社会的評価の向上を図る施策
のようなプロとしての福祉従事者を後押し、応援する施策を市が積極的に打ち出し、動かす仕組みをつくり、関係団体等をリードしていく旨を明確に打ち出せば、みなの励みになると思います。
(2)福祉も産業であるという視点を忘れてはいけないと思います。
・プロとしての福祉従事者が、「安心して働くことができる職場環境」「技術やノウハウを福祉業界全体で共有し、質の高い福祉サービスに取り組む」ことが必要です。
・ただ、福祉の経営基盤は、全体に極めて脆弱なので、経営基盤の強化策も地域福祉の重要な施策です。
・「福祉・介護のベテラン専門職員イコール経営者、管理者には必ずしもなり得ない」ことから、福祉技術とは別に経営知識や経営技術を学ぶ機会をつくることも重要かと思います。
できる範囲から、がんばってください。
パブコメは数を競うものではない。これまで気がつかなかった視点や指摘から、これまでの検討を考え直す機会である。その意味では、これは大事な指摘だと思う。
他方、これまでパブコメをたくさんやってきた経験から言うと、今頃言われてもという現実もある。何度も検討を重ねてきたのに、枠組みを変え、あるいは、大きな変更は、やりにくい。時間的にも、多くの場合、パブコメ後、1回か2回の検討機会しかないのが普通なので時間的にも間に合わない。
とくに今回の私の指摘は、そもそもの検討の組み立てからやっていかないと議論にならないことである。横須賀市も専門職のヒアリングをしているが、それは「福祉従事者を支える」という観点からではない。本来ならば、基礎調査から、専門職が抱える課題の調査をやっていかないと、そもそもの議論にならないだろう。
この点は、今後の地域福祉計画の検討プロセスに修正を迫るものである。新城市の福祉従事者条例は、地域福祉計画の内容とともに、策定プロセスに影響を与えるものである。今度の地域福祉学会で、ぜひ発表しようと思う。
さて、このパブコメ意見を受けて、横須賀市と検討委員会は、どうするのか。困ったと思うのか。困らせるつもりはないので、できる範囲で取り入れられれば良いと思っている。しかし、最悪は困ったと思わず、スルーされてしまう場合だろう。ともかく考えてほしいと思う。