「あらあら、どうしたの足軽」
暑い外から帰ってきたおばあちゃんはさっきまで近くの畑に行ってたんだろうと思える格好をしてる。頭には布が首まで覆うように垂れてる帽子に服も汚れていいようなものだ。
そしてこんな暑いのに腕や脚も完全防備。絶対に暑いと思えるような格好だ。いつものおばあちゃんは細いから一瞬わからなかった足軽だ。
「いや、なんでも……ちょっと暑さにやられというか……」
「そうね、今日も暑いわね。それじゃあ、美味しい麦茶を入れてあげましょう」
そういって玄関からキッチンの方へとおばあちゃんは籠をもっていった。そしてそこで「あら小頭。お兄ちゃんにも持って行ってあげなさい」とか言われてた。
すると小頭が「んっ」と出てきて足軽に氷がたっぷり入った麦茶を渡してきた。それを足軽も「ん」といって受け取る。そして喉に流し込む足軽。
「プハァ!!」
――と気持ちよくコップの八割を一気に飲み干したら周囲にはもう小頭はいなかった。
(やっぱりショックだよな)
家に帰ってくるまでは小頭はがっちりと……それこそ今まで以上に足軽にくっついてた。けどきっと家に無事に戻ってこれたことで安心したんだろう。それはとてもいいことだと足軽は思った。
それにまだ実は昼にもなってない。だって本当なら三人で弁当をついばむ予定だったからだ。きっとあの村ではなく、もっと風景も雰囲気もいい場所でもあったんだろう。
そこに育代は村の次に行く予定だったはずだ。流石に廃村で弁当なんて……な、と足軽はおもってた。でもあんなことがあって帰ることになった。流石に三人でいるのが怖くなるのは仕方ない。一刻も早く、大人たちがいるところに帰りたいと思うのはなんにもおかしなことじゃない。
話したところで信じてはくれないだろうが、それでも大人というのは子供にとってもとても大きな存在だ。なにせ庇護者だから。だからその傍にいると守られてると思えて安心できる。
きっとそんな風になって、小頭は落ち着きを取り戻したんだろう。そしてそっけないのは……
(きっと恥ずかしがってるだけだな……)
足軽はそう勝手に思って優しい目で見てた。なにせ普段はそんなことないお兄ちゃんにべたべたしてたのだ。我に返ると恥ずかしくなるのは仕方ない。
「さて……」
足軽は玄関の扉を見る。いや違う。足軽が見てるのは玄関じゃない。その先だ。その力を使って遠視をして彼はあの廃村に向けて視線を飛ばしている。