「きゃああああああああ!?」
そんな悲鳴がこの廃村に響いた。その瞬間、足軽はすぐに動いた。けど……
「むぎゃあああ!?」
「うわぁ!?」
悲鳴に続いて悲鳴が起こる。何が起こったのか……それは足軽と幾代が勢いよくぶつかった悲鳴だった。なにせ先の悲鳴を聞いてすぐに足軽は動いた。こんな誰もいない場所で声を上げるのなんて三人の内の誰かしかいなくて、そして今小頭はちょっと離れてた。なぜか……それはあれだ。花を摘んでるのだ。本当はこの村のどこかのトイレでも使えればよかったんだろうけど……外にあったトイレは屋根が潰れて使えたものではなかった。
なので……なので、小頭はちょっと外れの森へとはいったのだ。その際には流石に足軽は離れてるように! ――と言われた。けど完全に一人になるのは怖い小頭。だから小頭と足軽の間には幾代がいたのだ。
悲鳴を聞いてまずは足軽が真っ先に動いた。けどその際、前いた幾代も動こうとして、その体の移動先がちょうど足軽とぶつかった――というのが真相だ。
「いたた……ってちょ!?」
足軽も幾代と同じように地面に手と尻をついてたはずだ。けど幾代が気づいたときにはもう彼は先に動いてた。幾代はまだちょっと体がイタタ――だった。実際男女の差? とか思ったけど、多少はあるだろうけど、痛みは足軽にだってあるはずだ。でもどうやら、そんな痛みは妹の悲鳴の前には兄は押し込められるらしい。
「おい!」
足軽は廃墟の建物裏に行ってその先の木の所にいた小頭を見つけた。何やら木の幹に寄りかかって体を震わせている。
「大丈夫か?」
「どうしたの小頭ちゃん!」
幾代も追いついてきて同じように小頭に声をかける。すると小頭が震える手で森の奥を指さした。
「奥に……何かいて……」
そんな言葉を聞いて足軽と幾代は森へと視線を向ける。それだけじゃない。足軽は力を使って視力を強化。普通は見えない筈の先まで見通す。さらには生命力とか見えるようにした。なにが相手かわからないからだ。
「何もいないみたいだよ。気のせいじゃない? 枝とかが風で揺れたとかさ」
幾代はそういって安心させようとしてる。確かに何かいるように見えたりしても、それを暴いてみたらただの棒だった――とかよくあることだ。それにここには森だけあってそういう勘違いを起こすものは沢山ある。一応の説得力はある。けど小頭はそれになっとくしないようだ。
「私、ちゃんと見ました。変な生き物が木にぶら下がってこっちを見てたの」
それは人間じゃない? 足軽は視界をさらに広く……そして高く取ることにした。なにせ悪魔がいたのだ。ならば幽霊くらいは居てもおかしくない。