あれからどのくらい経ったのでしょう? 私はガムシャラに戦って前に進んでいました。私はただアイさんが言うように進んできただけ。すると……
「こっちこっち」
そんな風に私達に手を振る男性の姿が見えました。勇者さまです。けどその後ろにはなんだか目玉が3つくっついたような化け物がいます。
「危ない!」
私はそう言って駆け出します。でも――「ああ、大丈夫。だってこいつは――」
私が近くに来た時に勇者様は続きを紡ぎます。
「――もう死んでる」
すると、光の線が3つくっついた目玉に走ります。そしてそこから強い光が漏れ出てきて、バッガーン!! と弾けました。どうやらもう終わってたみたいです。
「よかった」
「ありがとう、それよりも……強くなったね」
そういって私に笑顔を向けてくれる勇者様。その瞬間、顔がボッと赤くなったような……熱を持った感覚がありました。何でしょうこの気持ち? なんだか勇者様を直視できません。
私は周囲に頭を回しながら、変な音を出してしまいます。
「あわわ、はわはわ、えっ? え? そのその……」
そしてようやく絞り出した言葉がこれです。
「ありがとうございます……」
下を向ききつつ、ちらっと私は勇者様の方を見ます。すると目があって優しげな瞳で笑いかけてくれました。更に高鳴る心音。まるで脳天を突き抜けたかのような……そんな気がしました。
「サボりですか?」
「そうじゃないだろ。待ってたんだよ。ちゃんとやることはやってるよ。はいこれ」
何かを勇者様はアイさんに渡しました。それを彼女は胸の所に収めます。おっぱいに押し付けると何やら沈んでいったのです。
それを見て勇者様はバッと顔を背けました。そんな様子をみて、何故かチクッと胸が痛みます。なんでしょうこれは。実際はあんまり二人はそんなに仲が良いようには見えません。
会話だってそんなにするわけじゃないです。二人きりで居ても無言の事がおおいです。それか勇者様が会話を振ってるか。アイさんは必要な事、しか喋りません。
でも、妙に勇者様はアイさんに歩み寄ってるような? そんな気がします。いえ、なにせ仲間ですからね。気まずいよりは気安い仲になりたいというのは当たり前です。
それに優しい勇者様はきっと人間関係にも気を使ってくれてます。私にも優しい。だからきっと、気にするようなことじゃない。そのはずです。