『何やら事件のにおいがしますね』
(変なことを言うなよ……)
平賀式部から分かれた途端に頭に語り掛けてくるアースの奴。まあそれは理由がある。元から今日はデートだからと、アースにはその間は向こうからのアクションを禁止にしてたからだ。禁止といっても別に何かリスクがあるような契約をしてた――とかではない。ただの口約束である。
だからその気になればいつだって話しかけることはできた。でも、そこらへんはちゃんと守ってくれたらしい。そしてもうデートは終了――とアースは判断したから、ここからは話しかけてきたんだろう。
『でも、やばそうとは思ってるでしょう?』
(それは……まあ……)
否定したいが、昼間の出来事が野々野足軽の頭によぎる。あの出来事を思い出すと、彼女は大胆な行動をとることが出来る人間だということが嫌でもわかる。つまりはやばい。そう、やばい奴だ。
(あれ?)
けどそこで更なる違和感ってやつに野々野足軽は気づく。
「なんか近いな……」
実際最初見たとき、仮面の男と一緒にいる女性……そしてその背後を歩くやばい美女ってことで、これは鬼気迫ってる瞬間なのでは? と野々野足軽は焦った。けど……少し様子を伺ってるとそれがもしかしたら間違いなのではないか? と野々野足軽はおもってきた。
なぜなら、近いのだ。仮面の男の背後にヤバい美女はいるけど、その距離は人が二人くらい間に入れるか? くらいの距離でしかない。流石にこの距離て気づかないわけない。むしろ、やばい美女は仮面の男に随伴してるような……
(そういえば、あの人別に自分だけであの男を独占したい……とかじゃないんだよな)
『そんなことを言ってましたね。つまりは彼女はあの状態を許容してるってことでしょう。不安なら感情を読み取ってみたらわかるのでは?』
(あの人の感情とか読みたくないんだけど……)
野々野足軽は色々と考えて「はあ」と深い息を吐いた。なにせ今はなかなかに人が多い時間帯である。もしもここであの美女が事を起こしたらどうなるのか――きっと色々と大変だ。めっちゃたくさんの人に迷惑がかかること請け合いである。
そしてそうなると、野々野足軽の性格上放ってなんておけないし、ここで見かけてしまってさらに見逃して何かあったら、やっぱり後悔するだろう。なのであのやばい美女が何もする気がない……と知るためにも、力を使ってやばい美女の心を覗く。その瞬間だった。
「うぷっ――」
思わず前のめりになって口を押える野々野足軽。それだけの衝撃が襲うほどの物をその心に彼女は宿してた。
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