「罪って一体……おばあちゃんが罪を犯すようには思えないけど……」
おばあちゃんはとても理性的な人……というのを野々野足軽はわかってる。おじいちゃんは感情が先に来るような、そんな昔ながらの男って感じの人だけど、それと真逆なのがおばあちゃんだ。
だからこそ、よく二人は一緒にいるな……と思ったりもする。流石におじいちゃんはおばあちゃんには手を出したりはしてないと思う。尻に敷かれてるが、それでもなかなかにおじいちゃんはカッとなるのが早い。
もしも近所にいたら、雷親父とか言われる部類の爺さんだろうって足軽は思う。だからこそ、一回二回くらいは……ね。おばあちゃんに手をあげたりしててもおかしくは……とか思っちゃう。
だからどっちかというと、おばあちゃんよりもおじいちゃんが罪を犯しそうというか?
「ふふ、私だって普通の人間ですよ。いえ、もう普通ではないのかもしれないですね。こんな力に目覚めてしまったのですから」
そういうおばあちゃんを見てると、なぜか胸が痛くなる足軽。だって足軽はこの力を超能力を後悔したことなんてないからだ。寧ろ感謝さえしてる。この力に目覚めて、日々は格段に楽しくなった。
確かに今は大変なこともたくさんある。でも……決してこの力が目覚めなかったらよかった――とは一度たりとも思ったことはない。だからおばあちゃんがその力をちょっと後悔してるのは、足軽は自分の事のように辛く思う。だってこの力は素晴らしいと足軽はおもってるからだ。
それに……だ。それにおばあちゃんの力は今の足軽ではどうやっても再現できない程の力だ。他の力……それこそ早く移動するとか、炎をだすとか水を出すとか、そういう雷を落とすなんてのは、今の足軽でも工夫すればできる。
直接火を出せなくても、どうして火が起こるのとかその原理は科学で解明されてるわけである。水だってそうだ。早く走ることなんてのはそれこそ無理矢理できる。
けど……若返るということは原理さえわからないから、いくら野々野足軽でもできない。それだけ特別なんだ。
「おばあちゃん……むっ」
「ぐるるるる」
「ぎゃぎゃぎゃ」
足軽がちょっとおばあちゃんに近づこうとすればサルたちがうなってくる。勝てないとはわかってるだろう。けどどうやら彼らは勝てないとわかりつつ、それでも立ち向かう覚悟が在るほどにおばあちゃんの事をすいてるらしい。
「ダメよみんな。その子は私の孫なの。大切な家族」
そういってくれるおばあちゃん。でも今度は足軽の方を観つつ、「けど」――とも言ってくる。
「けど……ね足軽。この子たちも家族なの」
「え? まさかそいつらって俺の従妹とか?」
衝撃の事実。それが本当なら流石に遠慮したいと思った。だってサルだよ? おばあちゃんはまさかそんな特殊な性癖が?