まさかあの細腕の女性が筋肉で覆われたような桶狭間忠国の腕を折るなんて……普通なら信じられないことだ。そんなことが現実で起きるなんて……これがまだ同じ様な筋肉モリモリの女性ならあり得……た? と考える野々野足軽。
(いやないか)
そう思い直す。そもそもが普通は片手で骨を折る……なんて熊でもないんだから不可能だろう。それこそ勢いを付けた蹴り……とかならまだワンチャンあると思う野々野足軽であるが、今のはそんな勢いをつける事なんてできない状況だった。首しめられてる女性が、まるでその握力だけで持って男の腕をへし折ったのだ。
その証拠に桶狭間忠国の腕にはくっきりとした指の跡がある。血がどくどく出てて普通は見えないだろう。けど野々野足軽にはわかる。どういう状態か……それを確認することの大切さ……それを野々野足軽は様々な医療行為で学んだのだ。だからこそちゃんと桶狭間忠国の腕の状態を確認した。
力だけで強引におられた腕はおられた……というよりも砕かれた……という感じだ。つまりはまったくきれいに折れてない。けどそれもそうだろう……そん事を気にするようなやつではないんだ。結構な複雑骨折だろう。下手すると後遺症が残ってもおかしくない。
とりあえず違和感が無いくらいには骨を整えておいてやる野々野足軽。けどいきなり完治なんてはさせない。
(痛いだろうけど……今は我慢してもらうしか無いな)
なにせ目の前でいきなり折れた腕が完治なんてしたら、流石におかしい。悪魔はそれをやるだけの存在が居ると……そう警戒するだろう。まあ幸い、桶狭間忠国なら、そこまで野々野足軽も罪悪感を抱かなくてすんだ。
「くっ……なんなんだあんたは……悪魔……みたいな」
「ふふふ、あはははははははははは!」
悪魔……と言い当てられて嬉しかったのか、彼女はそんな風にわらった。高笑いである。どうやら力がかなり高まってテンションアゲアゲ状態のようだ。
「ふふ」
そんな風に恍惚な表情をしたまま、その尻尾でバチンと桶狭間忠国をぶっ叩く悪魔憑きの女性。いやもう悪魔そのもの……と言ってもいいような……と野々野足軽は思う。
流石に桶狭間忠国はふっとばされるとかはないらしいが、体がふらついてるから、それ相応の威力はあるみたいだ。それに……だ。なにやら尻尾が桶狭間忠国に当たるたびに、変な鱗粉みたいな、ピンク色の粉が舞ってるようにみえる。
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