何なのか、いまだ分からず。

彼岸の入り。
仏壇を眺めながら、罰当たりなことを思う。

「こんな狭っこい所に、あのお母さんが、納まってなんか居るかなぁ？」

母は元気で楽しくて優しくて、走るのも大好きだったし、毎日散歩もしていたよ。
もちろん、倒れる前の話だけど。

いろんな所に、一緒に出かけた。
あたしを置いて、スタスタ行っちゃうんだよなー。
その足がまた、速いの。

いろんなことを考え考え、机に向かって両手をキーボードの上に置いたまま
椅子の背にもたれ、しばしぼんやりとしていた。

誰も側にいないのを幸いと、独りごちる。

母さん。
いろんなこと、考えてましたよ。
彼岸の支度も、お寺の行き来も、親類廻りも、遠くの親戚の墓参りも、ずいぶんと
たくさんのことがあるのですね。
団子は、今は買えるけど、母さんは自分で作っていたよね。
あたしは手伝って大小さまざまのをこさえて、笑われたっけ。
あれは、慣れると上手になるけど、最初はなかなか難しいよね。
あんこを煮たり、粉をこねたり、面倒であたしは飛ばしてるけども。

そんな事だけじゃなくて、たっくさんのこと、母さんの仕事って、大変だったんだね。
ろくに手伝わなくて、本当にごめんなさい。
今までのご苦労が、少し分かった気がするのよ。
ここまで育ててくださって、本当に、本当にありがとうございます。


そう、口に出して言ったんだよ。誰も居ない部屋で。
そうしたら、ね。
体は椅子にもたれたままで、キーボードの上に伸ばしてあったあたしの「左手の甲」に、

・・・ぽったん。

大きな滴が、落ちたんだよ。一瞬、何かと思った。水だよ。

あれ？雨漏り？と、天井を見上げたが、どこも濡れてない。
というか、ここ、上は二階だぞ？水道が無い場所だってば。

パソコン周りだから、もちろん、水気は厳禁、どこにも置いてない。
コーヒーはあるけど、こんなに透明な水では無いぞ。

・・・くんくん、におってみた。
何も、におわない。
さすがに舐めなかったんだけど。
あれ、いったい「どこから来た」、「何の水」だったんだろう？

いまだに、謎です。