「暴れん坊将軍」シリーズのひとつの裏テーマに吉宗の御台所(みだいどころ、簡単に言うと奥さん)選びがある。どのシリーズでもジイ(御用取次)に急かされている。
吉宗も見合いを面倒くさがりながら、実は恋をしている。オレが見ている限り、2回は”プロポーズ”している。しかし、いずれも事情があって、いまだ御台所はいない。
御台所の候補者は大きな藩の大名の娘だったり、大奥のお姫様だったりする。今回は、大奥の一番下の地位にある、吉宗の顔を見る機会も与えられない娘・おみの(青山知可子)が、ふとしたことで吉宗を目にしてしまい、恋心を持ってしまう。
彼女は大工の棟梁の娘。どういう経緯で大奥にお勤めするようになったかはわからないが、偶然にせよ会ってはならない将軍さまに城内で出くわしたためにヒマを出されてしまう。
一方で、市中では幕府発注の橋などの工事で契約より安い木材を使うなどの不正がはびこっており、しかも裏にはまいない(賄賂)をむさぼる若年寄がいた。不正を訴えようとしたおみのの父親は無残に殺されてしまう。
そんなこともあり、娘と何度か会うようになった、市中では徳田新之助を名乗る吉宗は、おみのに親近感を持つように。おみのも新之助が、あの時見た吉宗と気が付いていく。悪者を成敗した後、元気を取り戻したおみのを見た吉宗の笑顔のアップに、若山弦蔵さんは「自分が将軍ではなく徳田新之助だったらと思う吉宗だった」というナレーションで締めた。もう会うことのない町人娘に抱いた気持ちはどんなものだったのだろうか。