早紀は最終電車に乗っていた。
仕事に疲れ、人間関係に疲れ…。
その日はけっこうお酒が入っていた。
電車の中は蒸し暑く、澱んだ空気を時々扇風機がかきまぜるだけだった。
彼女の他には誰もその車両には居なかった。隣の車両の蛍光灯が切れかかっているのか、たまに点滅を繰り返す。
彼女は、いわゆるスランプ状態であった。
他人より安い給料で多く働く…
気の弱い彼女は、多くの仕事を押し付けられていた。
もし自分が死んだら… 誰か泣いてくれるか? 誰か困るのだろうか?
漠然と、そう考えた時、少し開いた窓から生ぬるい風が吹いてきた。
地獄の余り風… おばあちゃんが言ってたな…
彼女は窓を全開にして、顔を外に出した。
闇に街灯が浮かび、流れ、消えていった。
次の朝、頭部が無い女性の遺体を発見したのは、始発に乗っていた車掌だった。
不思議なのは、危険なので開かないよう固定された窓が少し開いていたことと、遺体の切断面が何かにかじられたように損傷していたことである。
時々、この世とどこかをつなぐ扉が開くことがある。
そこからは、生温かい風が吹くという…。
一夜 終わり
(この話はフィクションです)
仕事に疲れ、人間関係に疲れ…。
その日はけっこうお酒が入っていた。
電車の中は蒸し暑く、澱んだ空気を時々扇風機がかきまぜるだけだった。
彼女の他には誰もその車両には居なかった。隣の車両の蛍光灯が切れかかっているのか、たまに点滅を繰り返す。
彼女は、いわゆるスランプ状態であった。
他人より安い給料で多く働く…
気の弱い彼女は、多くの仕事を押し付けられていた。
もし自分が死んだら… 誰か泣いてくれるか? 誰か困るのだろうか?
漠然と、そう考えた時、少し開いた窓から生ぬるい風が吹いてきた。
地獄の余り風… おばあちゃんが言ってたな…
彼女は窓を全開にして、顔を外に出した。
闇に街灯が浮かび、流れ、消えていった。
次の朝、頭部が無い女性の遺体を発見したのは、始発に乗っていた車掌だった。
不思議なのは、危険なので開かないよう固定された窓が少し開いていたことと、遺体の切断面が何かにかじられたように損傷していたことである。
時々、この世とどこかをつなぐ扉が開くことがある。
そこからは、生温かい風が吹くという…。
一夜 終わり
(この話はフィクションです)