幻想小説周辺の 覚書

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読書レビュー 佐々涼子 エンジェルフライト

2022-07-08 07:44:00 | 書評 読書忘備録
エンジェルフライト国際霊柩送還士 佐々涼子 284頁
読ませていただきました  ★★★★★

今まさにパキスタンでテロ事件があり遺体が羽田に帰還した本日にこの本を読了した。
この本は佐々さんのノンフィクションライターデビューの作品だという。
ほとんど家族経営の日本で唯一の国際霊柩送還の会社に文字通り寝泊りし寝食を共にし彼等と同じ目線で同じ思いを共感してこのルポルタージュを仕上げている。

デビュー作らしく佐々さんの入れ込み過ぎる思いが文章の間から立ち上ってくる。
絞れば滴るようだ、というのは常套句であるが、このルポルタージュほどこの慣用句が当てはまるものは少ない。

この本の存在価値と存在意義はこの取材対象を初めて掘り起こした佐々さんの発見力と、彼等の仕事の崇高さと、それを沢山の人に知らしめたいという原石のような惚れ込みようでである。
従って僕はこの本や著者が入れ込み過ぎて主観に流れているという批判には賛同しない。
繰り返すが、それこそがこの本のコア:核であるからだ。

以降の作品、紙つなげ、等につながる佐々さんの取材対象へ惚れ込み、共鳴して自分の感じたことを冷静に書こうとしながら抑えきれず行間に叩きつけるようになってしまうスタイルはこのデビュー作で確立されていたようだ。
いろいろな意味で彼女の原点であり出発点であるファーストワークである。

確かにこのルポルタージュでは遺体に相対する彼等の姿に強く打たれ過ぎたためであろうか、記述の多くは日本に帰還した遺体への修復手当と遺族とのドラマに割かれていた。
しかしながら、タイトルに国際霊柩送還士とあるようなのに海外の地から日本へ還る(又はその逆もある)遺体の送還、輸送と出入国、現地でまつわる記事はいささか少ない。この点が本書の残念なところだ。

この側面にもきっと重大な知るべき実態、想起される共感、制度への価値ある問題提起もきっと多くあるはずなのだ。
そしてその点から言えば筆者も、エアハース社もこの本の上梓以来の成長と物語があるはずである。
可能であれば、筆者には是非その面にスポットをあてて次作を書いて欲しい。

記初に書いたような、今の国際テロが繁発している現在のリアルタイムでの彼等の物語を、彼女の経験を積んだペンでルポルタージュしてもらいたいと願うのは、この本を読んだ
僕だけではない、多くの読者が抱く強い思いであろう。
                            2016年07月06日




映画レビュー 炎のランナー

2022-07-08 07:34:00 | 映画レビュー
@映画のお部屋  より@
[炎のランナー] 1981年 監督ヒューハドソン



1980年のモスクワオリンピックのころ撮られた名作です。当時の僕は高校生、映画にはハナも引っ掻けてなかったがバンゲリスのサントラはカセットテープが千切れて絡まるまで聴き込んでました。 



 今見返すと実に丁寧に丁寧に作られてます。登場人物達のそれぞれの走る為の動機の違い、境遇や人生への視点の違い、。。。そう、この話は当然の様に違う生き方をしてきた様々なアスリートと、そしてその家族達がオリンピックという一つの場所に集い、それぞれが持つものをぶつけあって闘って、闘い終わるまでが描かれています。





 
映画の最初と最後のに海岸を走るイギリスのランナー達が映されます。泥んこで無邪気に走るアンドリュー、天を向いて苦しげに楽しそうに走るリデル、険しい顔で何かに挑んでいるように走るエーブラハムズ。。既にこの各人の走るシーンだけでこのドラマを語り尽くしています。傑作の所以。傑作は開幕と終幕だけで傑作なのでした。




立ち止まって昨年を振り返って見れば 我が国の五輪とその準備スキャンダルでの嘆かわしいまでの迷走ぶりだったこと!!
偉そうなオバさんオッサン達よ、この映画見て初心を思い出すべし。

読書レビュー 木下昌輝 宇喜多の捨て嫁

2022-07-08 07:15:00 | 書評 読書忘備録
@ほんのささやかな本の紹介状@
「宇喜多の捨て嫁」木下昌輝
高校生直木賞というのがあるのだが御存知でしょうか?


全国の高校の図書部?約20校が自分達の大賞を自ら読み込んだ選書の中から賛否討論をして毎年1冊を選ぶというもの今年で2回目でこの作品が今年の大賞です。へへん・・高校生ならラノベとかじゃねえの・と甘く仕合ったら、この打ち込みですよ。奴等、本気と書いてマジって読むやつですわ。ちょいと見直しました。




裏切りと謀殺を繰り返し業を重ねる宇喜多直家、自分の娘4人も全てその道具として利用し抜きます。1編目で末娘の婚礼から直家自身の破滅までを描き、2編目以降で幼少期の直家:八郎が如何に苦悩し、運命に人生を塗り込められてゆきこのようになってしまったのかを描き明かしてゆきます。その筆致と世界観たるや・・そう!スターウオーズエピソード3のダースベーダーの悲劇の構成そのもの。。。


身奮いして喰い入るように一気読みしてしまいました。目が離せませんでした。BGMは是非ジョンウイリアムスで・・・・