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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
<ドン作雑文集より>
平成初めの頃です。
書かれた者には、一人ひとり何物にも代えがたい貴重なその後というものがあるのに、モノ書き連中は、そ知らぬ顔をして次から次へとあたかも蝶が花の蜜を求めるごとく、いいとこ取りばかりして立ち去ってしまう。中には、蜂により交配の恩恵を受ける花もあるだろうが、最後まで責任を持って見てやるのが、蜂と人間との違いではないのだろうか。
私は、ふとした出会いから、京都の夜の街をウロウロしていた下ピーと知り合いになってしまった。その下ピーから、良ヒネの娘が生焼きにされると言ってきている。私は、すぐにはピンとこなかったので、例の「芥川龍之介集」をめくってみた。60頁の半ばごろの「地獄変」のことを指しているのだろう。
1918年(大正7年)、龍はん27歳、2月に結婚して、まだ新婚ほやほやだ。5月までに、この話を完成させて「大阪M新聞」に発表しなければならないようだ。その新聞社と社友契約して、まだ日も浅い。結婚と同じ月に契約しているから、いいところも見せたいのだろう。月に報酬を50円も貰っているのだから、張り切らざるを得ないに違いない。
つづく