ミョウガは日陰でも育つので柿の木の下で育てています。8月に入って花が咲き始め収穫の時期を迎えました。
これはミョウガの花。薄黄色で繊細です。見切れている左側の「棒」は、偽茎です。この上に30cmほどの葉をたくさんつけています。食べる部分は花序で、つぼみと苞からできています。その半分以上が地面に埋まっていることも多く、開花していない時はその存在に気づきにくいです。
今回は、花つきのミョウガを収穫しました。
ミョウガは花が一つも咲かないうちに収穫するのが良しとされています。ですが、上記の理由でそのタイミングを逃しやすいのは確か。開花すれば明るい黄色のため薄暗い中でもよく目立ちます。家庭菜園の場合は、最初の開花を目印にするのが良いでしょう。開花の時期は毎年ほぼ同じなので、それを見計らって遠目から見ておけばOK。このミョウガはいくつかの花が咲き終わっていますね。完全に私の怠慢、採り遅れです。
- まずは、花の観察から。
A:花被 B:唇弁(雄しべが変形したもの) C:花被 D:柱頭 E:付属体(葯隔が伸びたもの) F :葯 G:花冠筒
花柱はEの付属体に包まれているのですが、黒矢印の先では花柱の一部が飛び出て湾曲しています。何か意味がありそうです。私が推理すると・・・蜜を求めて頭を突っ込んできた虫がこの湾曲を上に押すと柱頭先端が付属体から飛び出してきて虫のお尻に触れるというもの。でも虫のお尻に予め花粉が付いていないと受粉は成立しないなぁ。この件について今後よく観察したいと思います。いずれにしても5倍体で実ができにくいそうです。
それからBの唇弁と雄しべ・葯との関係を十分に観察しませんでしたので、この件も注意してみたいと思います。
- 次に苞を1枚剥くと・・・
苞の内側に茶色く とろけたような線状の部分が出てきました。悲しい・・これは花が咲き終わって溶けてしまった花冠筒部です。それを包んでいるのが「がく」に当たります(茶色矢印)。苞の接続部分には泥が挟まっている(灰色矢印)ことが多く、食べる前にはよく洗わなくちゃ、ですね。地面スレスレにできるので仕方がありません。A~Eは前の写真の解説を参照。
- そして花序を縦半分に切ってみると・・・
花は外側から内側へと咲き進みます。内部にはこれから咲こうとするつぼみがぎっしり詰まっていました。
- どのくらい詰まっているか調べるために全部バラバラに分解してみると・・・
咲き終わった花が4つ、萎んだ花が1つ、開花中が1つ、つぼみが約10本(中心部分は小さく、また縦に切断後のものだったので不確実)でした。花序一つあたり16個も咲くのかもしれません。全部咲き切るまでを観察したことないので正確なところはわかりませんが、思ったよりもたくさん咲きそうですね。
ここからは、ミョウガにまつわるエピソードを。
- 私の実家は兼業農家で、幼い頃には一緒に市場に連れて行ってもらったことがありました。何十年も前の話です。そこで、「バカ」と書かれた品が並んでいたのですよ。それがミョウガでした。なぜ「バカ」なのかと親に聞くと、これを食べると忘れっぽくなるからと言っていました。その時はそんな食べ物を売ってもいいのかなと心配になったものです。実際のミョウガにはそんな作用はなく、全くの濡れ衣なので心配はいりません。そのいわれを簡単に言うと、元々はショウガがそう言われていたのをショウガとミョウガを取り違えたからとか、お釈迦さまの弟子で物覚えの悪い弟子・周利槃特の墓地からこれが生えてきたからとか、諸説あるようです。落語の茗荷宿で一般にもその話が広がったとのこと・・・。現在の市場ではどうなんでしょうか。昔は色々隠語を使って楽しんでいたのかもしれません。ちなみにお釈迦さまと周利槃特さんのエピソード、私は好きなのですがここでは省略。
- 学生時代、一人暮らしを始めた1年目、ミョウガを買って調理しようと切ってみたら中から あの溶けて変色した花冠が出てきたのですよ。ミミズか何かが入り込んで死んでいるのかと思ってびっくりして全部捨てました。花序の構造と変色が何なのかを知っていれば全く捨てることはなかったのですが、一般常識なかったので気持ち悪くて完全廃棄しましたとさ・・・。
- 現在でも咲き終わった花が閉じ込められたミョウガが流通しているかもしれませんので、経験者からアドバイスを。まず、そのブツが出てきても驚くことはありません。「花冠筒」の部分は非常に傷みやすいのですぐ溶けてしまうのですが、含有成分の影響か がくと苞は非常に傷みにくくなっています。花が終わっても苞とがくは枯れないので宿存性があるともいいます。なので、傷んだ部分だけを外してそれ以外をよく洗って使えばいいのですよ。
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