花穂を伸ばし始めた青しそ
今回はシソ(シソ科シソ属)の葉が香る理由についての調査です。
まず、葉身に触れない状態で香りを確かめるとほとんど匂いませんでした。そこで葉の表と裏を片側ずつティッシュペーパーでそっと擦ってみます。すると、香りは裏側を擦った時のみ感じられました。このことから香りの元は葉の裏側に存在し、軽く触れるだけで香るので葉肉細胞などの組織破壊で起きる酵素反応ではないことも推測されました。ニンニクやわさびが香る機序とは異なるということ。
それを踏まえて顕微鏡での観察です。まずは葉裏・・
すると、このように小さな凹みに一つの球がはまっているものが散在していることが観察されました。
倍率を上げてみると・・
このようにやや黄色みのある透明な球です。これは油胞と呼ばれるもので この中に香りの元になるペリルアルデヒド、リモネン、ピネンなどの精油成分が蓄積されているそうです。油胞の周りは放射状の細胞が取り囲んでいるように見えました。
2011年9月のNHKの番組「ためしてガッテン」では「こりゃ驚き!青じそにまさかの裏技が!!SP」というテーマで特集されていました。そこでは香りを溜めている部分は「腺鱗」と紹介されていたそうです。私も、当時見ていた記憶があるのですが細かなことはすっかり忘れていました。キッチンバサミで切ると香りが飛ばずに美味しく食べられるということぐらいは覚えていました。
次に葉表の観察・・
葉上の右側から斜光を当てています・・表面には凸部があり、その山の左側に影が出ています。中央に右から伸びる細長い影は白く光っている毛によるものです。油胞は葉の表面にはほとんど観察されませんでした。
次に同じ部位を透過光でみると・・
このように透過光では裏側の油胞も観察でき、葉表で山になっているところでは葉裏に油胞があることが分かりました。油胞は葉裏の凹んだ所にできるのでその凹みが葉表の凸部として現れるということです。
次はバジル(シソ科メボウキ属)。バジルも同様に葉の表と裏の香りをチェック。するとシソと違って葉表・葉裏ともに香りました。特に表側の方が良い香りに感じました。
香りの成分としてはリナロール、シネオール、オイゲノールなどが報告されています。配合が複雑なようです。
葉の表を顕微鏡で観察すると・・
香りチェックの予想通りにバジルでは葉表にも油胞がありました。油胞の周りには放射状の構造も観察できます。
次に葉裏では・・
同様に葉裏にも油胞がありました。
ペパーミント(シソ科ハッカ属)も香りチェックをするとバジルと同様に葉の両面から香りました。メントールの香りです。
写真は省略しますがバジルと同様に葉の両面に油胞が観察されました。
今回、顕微鏡で見ていて驚いたのは、シソ科の葉にも少数ですがダニが住んでいたということ。それに細かな埃がついていることもあるのでパッと見がきれいでも食べる前には洗った方がいいでしょう。ただ香りを失わないように油胞が潰れないように注意を払う必要がありますね。強く洗わないこと、そしてもしキッチンペーパーで水を切るのならシソの場合は油胞のない葉表をペーパー側にすると良いかも。一方バジルの場合は葉表にも油胞があるので葉表をペーパーにつけるのは避けましょう。バジルでは葉脈による反りでカバーできるので葉裏の方をペーパー側にしてそっと置くのが良さそうです。
あと、特にしそやバジルを食べるときに気になるのは、葉の苦味ですよね。これは油と共に調理すると良いらしいですよ。苦味は油でマスクされるし、香り成分は脂溶性なので調理の油に溶けて揮発量が減ってなお良いとのこと。
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