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2013年12月B定期(デュトワ指揮)

2013年12月12日 | N響公演の感想(~2016)
12月12日(木)シャルル・デュトワ指揮 NHK交響楽団
《2013年12月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
1. ラヴェル/組曲「クープランの墓」
2. デュティユー/チェロ協奏曲「遥かなる遠い世界」
 【アンコール】
 プロコフィエフ/「子供の音楽」~行進曲
Vc:ゴーティエ・カプソン
3.ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調Op.92

N響12月定期の指揮台に立つのは今年もデュトワ。フランスものとベートーヴェンを対比させたプログラミングがおもしろい。最初の「クープランの墓」は、さらりとした感触のタッチで淡々と綴られていった。オーケストラの流麗な動きが心地よい後味を残した。曲が終わって、見せ場の多いオーボエパートを見事に果たした茂木さんにデュトワが歩み寄っての抱擁シーンが微笑ましい。

次は今年の5月に97歳で死去したフランスの作曲家、アンリ・デュティユーのチェロ協奏曲。初めて聴いたが、曲も演奏も素晴らしかった。現代の作品は癒し系、攻撃系、無機質系、ゴージャス系などに分けたくなる曲が多いが、この作品はそれらのどれにも属さず、エモーショナルな熱っぽさと洗練された感覚がほどよく同居し、いずれもがとても真摯に訴えかけてきた。なかでも第2楽章や第4楽章での静謐な佇まいはベルクのバイオリンコンチェルトを思わせる透明感と温もりを伝えて心に沁みた。時間が止まったような弦楽合奏の清らかな響き、ミュートをかけた金管による、温かく柔らかで天から響くコラールのようなハーモニー。

そんな素敵なオケをバックに、カプソンのチェロが一点を見据えた芯のある音で朗々と歌う。カプソンのチェロの音は、美しく濃密で、深いところに熱いハートが息づいている。繊細な表情でもダイナミックな表現でも、役者が自分の役を完璧に演じ切るような巧さを感じた。難解な音楽ではないが、決して聴衆に媚びる音楽ではないデュティユーのこの作品で、聴衆は大きな喝采をいつまでも送ったが、これはカプソンのチェロの妙技とデュトワ/N響の的確で柔軟な演奏の賜物に違いない。

後半はベト7。デュトワのベートーヴェンというのはあまりイメージが湧かないが、冒頭の一撃の抜けの良い輝かしい響きが会場を満たして、「おっ、これは!」と期待が膨らんだ。けれど、うーん、この印象は長くは続かなかった。

デュトワのベートーヴェンは、流行のピリオド奏法とは一線を画しているが、古き良き伝統に則ったオーソドックスな演奏とも違う。毛羽立ったところがなく、刺激が少なく、強圧的な押しもないし、濃厚な歌や語りも聴こえてこない代わりに、音楽が滑らかに繋がり、先へ先へとサクサク運ばれて行く。楽章間での休みを取らず、アタッカのように繋げて演奏したのも、デュトワの音楽の流れへのこだわりの表れかも知れない。だけど、こうした刺激の少ない、淀みないベートーヴェンだとインパクトが小さい。特にこのシンフォニーでは「芸術は爆発だ!」みたいな衝撃が欲しくなる。それでも、フィナーレの終盤ではエネルギー全開でまい進して、大きなクライマックスを築き、会場も盛り上がったが、個人的にはそれまでの物足りなさを完全に穴埋めしてくれるまでには行かなかった。

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