角界、死活かけ総点検…来場所開催危ぶむ声も

力士や親方らの自己申告によって、計65人の賭博行為が明らかになった財団法人・日本相撲協会。
背後に暴力団の介在もあると指摘される野球賭博には29人がかかわっていた。相撲協会は21日、理事会と外部有識者で組織する調査委員会を設置して実態の解明に乗り出すが、7月11日に愛知県体育館で初日を迎える名古屋場所開催を危ぶむ声もある。
◆「中止なら…」
「名古屋場所が中止なら死活問題」。相撲界の賭博汚染が日々、波紋を広げる中、観戦チケットを扱う相撲案内所の関係者からは悲鳴にも似た声が上がる。
今月27日には力士一行が名古屋入りする予定だ。21日から外部調査委が聞き取り調査を始め、29人を順次呼び出すようだが、27日までは実質6日間の時間しかない。当初、「休場させれば個人が特定される」(出羽海理事)などと、相撲協会は内輪の論理で出場を認める決定を下したが、監督官庁の文部科学省から「撤回」を指導され、親方衆ら協会員を外した外部委員による総点検を受ける。
「親方や力士がどんな賭博をしたのか、しこ名も番付も分からないまま土俵に上がるのは、公益法人としても社会の理解を得られない」。文科省から理事会へ開示と公表を求められた相撲協会は、賭博内容の精査が出来なければ、「名古屋場所中止」も真剣に検討しなければならない。
元々、自己申告による賭博実態の調査は、野球賭博への関与を一貫して否定していた琴光喜に圧力をかけて認めさせることが背景にあった。しかし、琴光喜が関与を認めた後も、ほかの64人について相撲協会は、「警察の捜査妨害」を理由に公表を拒んだままだ。相撲協会のある幹部は「目的は大関を脅迫している暴力団の摘発。公表して捜査を妨害するのは避けなければならない」と警察との連携の重要性を強調する。
文科省と警察から両極の注文を突きつけられた中での実態解明は、難航を極めそうだ。今後、しこ名などを伏せたとしても、力士を国技館に呼んだり、名古屋から呼び戻すなど、事情聴取の過程で個人が特定されることもあり得る。混乱を加速させるばかりだ。
◆仕分け困難か
65人の「仕分け方」にも難しさがある。相撲協会関係者の話では、野球賭博の29人の中には、「高校野球の勝ち負けを仲間内で賭けた」申告が、「野球」という言葉から野球賭博に取り込まれたり、比較的軽微とされる36人が申告した花札やマージャンには、100万円単位の金が動いたケースもある。三役経験のある幕内力士の一人は、「三賞の賞金(各賞とも200万円)を3日ですった」と悪びれることなく話した。金銭感覚が欠如した力士たちの賭博行為を、本人たちの証言だけで、どこまで追及できるのかも疑問だ。
年に1度の名古屋場所では、力士らが現地入りした後、各部屋が宿舎を置く地元住民らが歓迎会を開くのが恒例だ。北の湖部屋の宿舎になる名古屋市熱田区の自治会は28日に歓迎会を開く予定だが、自治会役員の男性は、「名古屋場所を取りやめて問題を解明し、ウミを出し切るべきではないか」と憤る。こうした真の相撲ファンの声に相撲協会は<RB>真摯</RB><RP>(</RP><RP>)</RP>に対応する必要がある。