むかし、あるところに
こんもりとした小さな山がありました。
山はいつも、南側からの日射しをたっぷりと受けながら
静かに横たわっていました。
東側の一角は、紅葉が始まり、
金色に染まっていて
その中には一本だけ
大きな木が、長く影を伸ばしていました。
木の根元には、洞窟があり
西側の斜面には、
突き出た小さな岩もあって
どちらも子供たちの
格好の遊び場所になっていました。
ゆるやかな尾根を伝い
流れに沿って下って行ったところには
自然にできたトンネルも
口を開けています。
なだらかな裾野の村には
人間たちが平和に暮らしていましたが
若者たちは
「この山の向こうには、大きな希望があるに違いない」と
夢を膨らませるのが常でした。
何人かの若者は、勇気を出して
山を越えようとしました。
普段は穏やかな山ですが
そこは何といっても自然の生き物。
何かのはずみにふと
牙をむくことが、ないとはいえません。
若者たちは、用心しながら進みます。
やがて
山の向こうに希望の光が見えてきました!!
思った通りだ。「山が当たった」と
若者たちは大喜び。
しかし、近づいてよく見ると
それはただの
「ひと山100円」のバナナなのでした。
「ひと山」当てるつもりの若者たちでしたが
手に入れたのは、わずかな報酬が「関の山」・・・
という、山のお話。
おしまい。
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