昨日に続いてお祭りネタです。
お祭りといえば、夜店。夜店と言えば金魚すくい、、、。
サマーセーターを着た少年がライトに照らされた金魚を熱心に覗き込んでいました。
赤い金魚は祭りの明かりに照らされきらきらと煌めいて、生きている宝石のように見えました。
少年は初めてお祭りに来たので金魚すくいの要領がわかりません。
傍らにいるおやじはそんな少年を横目で見ながら ぷかりと煙草をふかしていました。
そこへ浴衣の小学生達が三人やってきました。少年とは同じ年頃でしたが、彼ら...特にリーダー格のやんちゃな顔をした少年は手慣れているらしく早速 夜店のおやじと交渉をはじめました。
「オレら三人だからさ、一人百円づつに負けてくれよ」
「...ん..」
おやじは顔をしかめて煙草をふかしています。
「おい、お前」
浴衣のやんちゃ少年がサマーセーターの少年に気がつきました。
「お前もやるんだよな」
サマーセーターの少年はこくりと頷きました。
「おい、四人ならいいだろ」
「しょうがねえな、お前達だけ、特別だぞ」
「やった!」
三人の浴衣少年は小銭をおやじに渡し、次々に網と椀を手にします。
「おい、お前もだよ」
やんちゃ少年がサマーセーターの少年をつつきます。
「これで...」
サマーセーターの少年が一万円札を差し出しました。
おやじは訝しそうな目でサマーセーターの少年を見ました。
「お前、オレが払っといてやる」
やんちゃ少年が咄嗟におやじに小銭を渡しました。
「お前、そんな金、家から持ってきたんだろ。母ちゃんに怒られっぞ」
そう言ってやんちゃ君はサマーセーターの少年の手にすくい網と椀を渡しました。
「そら、きたきた」
「おっと、一匹目...」
浴衣少年たちは賑やかに金魚をすくいはじめます。特にやんちゃ君は赤い金魚や黒い出目金などを次々と椀に捕獲します。
見様見真似で網を手にしたサマーセーター少年でしたが直ぐに紙が破けてしまいました。
「お前、だめじゃん...いいや、待ってろ」
「うん」
やんちゃ少年は鮮やかな手つきで八匹も金魚を取りました。他の少年たちも漁果はあがったようです。
「半分づつにしてくれ」
やんちゃ少年はおやじに言いました。
「特別サービスだよ」
浴衣少年たちが鮮やかに金魚をすくう様子に気がつくと客が集まってきていました。
四匹づつ、赤い金魚と出目金・琉金がバランスよく入れられたビニール袋をやんちゃ少年はサマーセーターの少年に差し出しました。
「こっちはお前にやるよ」
「ありがとう」
ビニールに入れられた四匹の金魚はきらきらと光っていました。サマーセーターの少年は宝物のように金魚の入った袋を受け取りました。
「何か食おうぜ!」
「いこっ!」
三人の浴衣少年はサマーセーターの少年を仲間に入れてくれたようでした。
四人で食べ物の屋台を物色していると、後ろの方で声がしました。
「坊ちゃま、こんなところで...何をなさっているんです」
サマーセーターの少年はびくりとして振り返りました。中年の女性が仁王立ちしています。
「佳代...」
「坊ちゃまに何か悪さしていないだろうね、この悪ガキども」
「佳代、違う...」
サマーセーターの少年が弁解する前に、やんちゃ少年が舌を出しました。
「何もしてねえよ、ばばア」
「そうだよ、勝手なこと言うなよ」
三人の浴衣少年たちは佳代と呼ばれた中年女性に顔をしかめて見せてから走り出しました。浴衣姿の三人は直ぐに人込みで見えなくなり、金魚の袋を持ったサマーセーターの少年だけが残されました。
「さあさ、お家に帰りましょう」
優しい家政婦の顔に戻った佳代がサマーセーターの少年を促します。
「これを貰ったんだ」
「まあ、金魚、お家に帰ったら鉢に入れましょう...あったかしらね」
折角仲間に入れてもらったのに と、呟いた少年の声は佳代には届きませんでした。
そして、年月が経ち祭りの夜店を見かける度に 青年となったサマーセーターの少年はやんちゃ少年を思いだすのでした。青年の家の水槽には今でも大切に育てたその時の金魚が泳いでいます。
何だか ほろにが初恋編です。今はもう一万円札出しても大丈夫ですが~。年がばれてしまいそうですね。
ちなみに、夜店でとった黒出目君は金魚鉢越しに我が家の猫を見ただけで心臓マヒを起こして死んでしまったことがあります。うちの猫はジーと眺めるだけで手は出しませんでした。
お祭りといえば、夜店。夜店と言えば金魚すくい、、、。
サマーセーターを着た少年がライトに照らされた金魚を熱心に覗き込んでいました。
赤い金魚は祭りの明かりに照らされきらきらと煌めいて、生きている宝石のように見えました。
少年は初めてお祭りに来たので金魚すくいの要領がわかりません。
傍らにいるおやじはそんな少年を横目で見ながら ぷかりと煙草をふかしていました。
そこへ浴衣の小学生達が三人やってきました。少年とは同じ年頃でしたが、彼ら...特にリーダー格のやんちゃな顔をした少年は手慣れているらしく早速 夜店のおやじと交渉をはじめました。
「オレら三人だからさ、一人百円づつに負けてくれよ」
「...ん..」
おやじは顔をしかめて煙草をふかしています。
「おい、お前」
浴衣のやんちゃ少年がサマーセーターの少年に気がつきました。
「お前もやるんだよな」
サマーセーターの少年はこくりと頷きました。
「おい、四人ならいいだろ」
「しょうがねえな、お前達だけ、特別だぞ」
「やった!」
三人の浴衣少年は小銭をおやじに渡し、次々に網と椀を手にします。
「おい、お前もだよ」
やんちゃ少年がサマーセーターの少年をつつきます。
「これで...」
サマーセーターの少年が一万円札を差し出しました。
おやじは訝しそうな目でサマーセーターの少年を見ました。
「お前、オレが払っといてやる」
やんちゃ少年が咄嗟におやじに小銭を渡しました。
「お前、そんな金、家から持ってきたんだろ。母ちゃんに怒られっぞ」
そう言ってやんちゃ君はサマーセーターの少年の手にすくい網と椀を渡しました。
「そら、きたきた」
「おっと、一匹目...」
浴衣少年たちは賑やかに金魚をすくいはじめます。特にやんちゃ君は赤い金魚や黒い出目金などを次々と椀に捕獲します。
見様見真似で網を手にしたサマーセーター少年でしたが直ぐに紙が破けてしまいました。
「お前、だめじゃん...いいや、待ってろ」
「うん」
やんちゃ少年は鮮やかな手つきで八匹も金魚を取りました。他の少年たちも漁果はあがったようです。
「半分づつにしてくれ」
やんちゃ少年はおやじに言いました。
「特別サービスだよ」
浴衣少年たちが鮮やかに金魚をすくう様子に気がつくと客が集まってきていました。
四匹づつ、赤い金魚と出目金・琉金がバランスよく入れられたビニール袋をやんちゃ少年はサマーセーターの少年に差し出しました。
「こっちはお前にやるよ」
「ありがとう」
ビニールに入れられた四匹の金魚はきらきらと光っていました。サマーセーターの少年は宝物のように金魚の入った袋を受け取りました。
「何か食おうぜ!」
「いこっ!」
三人の浴衣少年はサマーセーターの少年を仲間に入れてくれたようでした。
四人で食べ物の屋台を物色していると、後ろの方で声がしました。
「坊ちゃま、こんなところで...何をなさっているんです」
サマーセーターの少年はびくりとして振り返りました。中年の女性が仁王立ちしています。
「佳代...」
「坊ちゃまに何か悪さしていないだろうね、この悪ガキども」
「佳代、違う...」
サマーセーターの少年が弁解する前に、やんちゃ少年が舌を出しました。
「何もしてねえよ、ばばア」
「そうだよ、勝手なこと言うなよ」
三人の浴衣少年たちは佳代と呼ばれた中年女性に顔をしかめて見せてから走り出しました。浴衣姿の三人は直ぐに人込みで見えなくなり、金魚の袋を持ったサマーセーターの少年だけが残されました。
「さあさ、お家に帰りましょう」
優しい家政婦の顔に戻った佳代がサマーセーターの少年を促します。
「これを貰ったんだ」
「まあ、金魚、お家に帰ったら鉢に入れましょう...あったかしらね」
折角仲間に入れてもらったのに と、呟いた少年の声は佳代には届きませんでした。
そして、年月が経ち祭りの夜店を見かける度に 青年となったサマーセーターの少年はやんちゃ少年を思いだすのでした。青年の家の水槽には今でも大切に育てたその時の金魚が泳いでいます。
何だか ほろにが初恋編です。今はもう一万円札出しても大丈夫ですが~。年がばれてしまいそうですね。
ちなみに、夜店でとった黒出目君は金魚鉢越しに我が家の猫を見ただけで心臓マヒを起こして死んでしまったことがあります。うちの猫はジーと眺めるだけで手は出しませんでした。