セリカ魂

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ゆっくり旧車ライフの備忘録

映画「グリーンブック」(ネタバレ)

2019年03月06日 21時30分00秒 | つぶやき

3月6日(水)
MOVIXのポイントが貯まっていたので観て来た。
賞レースを総なめしてアカデミー賞の作品賞も受賞。世界が認めたナンバー1映画ってことか。
今日はレディースデイだからか結構お客さん入っていた。

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白人と黒人が偏見を乗り越えて友情を築くと言えば、誰もが「ドライビングMissデイジー」を連想するだろう。
さて、今作はハッピーエンド or バッドエンド?
より大きな感動を生み出すならバッドエンドだが、黒人の雇い主を守って白人ドライバーが死ぬなんて安直なストーリーはヤダなぁ・・

予備知識は一切なし。何たってドクター役をウェズリースナイプスだと勘違いした位の無知っぷりw
冒頭のタイトルをカタカナで「グリーンブック」は余りにセンスないぞ。いきなりのダサっぷりにテンションが少し下がった。
同時に、この映画が実話を基にしていることが表示された。
ちょっと持ち直したかも。

物語は破天荒なトニーの行動から始まる。
イタリア系の移民でマフィアの香りがして暴力沙汰はお手の物。白人ではあるけれど、社会の底辺に位置していた。
対してドクターはピアノの腕前に加えて頭脳明晰。複数の博士号までも持つインテリだった。でも、黒人。

金に困っていたトニーは背に腹変えられない。運転手兼マネージャー兼ボディーガードとして2ケ月間の南部コンサートツアーに同行することになった。
対照的な二人の奇妙なロードムービーの幕開け。


以下ネタバレ。








ドクターの最初の演奏シーンは本当に弾いている?練習して弾けるようになった?ゆっくり弾いて早回しみたいな特撮とか?
手のアップから顔に切り替わると興ざめ。だから一連の演奏シーンのカットはどうしても必要だった。お陰ですんなり物語に入り込めた。

無理やりフライドチキンを食べさせ骨を放り投げる。一気にトニーのペースに持ち込まれるかと思わせて、紙コップを投げることは許さないことでブレーキ。
トニーは素直にそれを受け容れた。譲れない一線は互いに尊重する空気を自然と描いていた。

忍耐強い聖人君子と思われたドクターだったが警察沙汰になってしまう。浴室で手錠に繋がれ、傍らには白人の男性が居た。敢えての状況描写だけで、何が起きたのかを説明する台詞はない。
「今夜の姿だけは見られたくなかった」
無事に解放されて発した言葉から、男娼を買ったのだとようやく分かった。(それともナンパした?)
黒人のホモセクシャル。
ドクターは実は二重のマイノリティだった。
ところが、夜の街で生きてきたトニーはドクターの秘密を知っても意に介さない。そのフラットな対応にドクターも心を許し始めた。

人種差別による危機は何度も訪れる。
前回は警官を買収して何とか逃れられたが二度目の警察沙汰では投獄されてしまった。
市民を守るはずの警官が人種差別をして容易に敵となる恐怖。抗えない無力感を象徴する出来事だった。

バーで絡まれた時に拳銃を匂わせるトニー。でも、その演技がいかにも「はったり」めいていた。こういう時は後で「実は持っていた」となりがち。ラストで銃が出てくるフラグ?
撃たれそうになったドクターをトニーが庇い、代わりに撃たれて瀕死のトニーが銃を出して反撃。命を賭してドクターを守るシーンを予想していた。
でも、待ち伏せた暴漢にあっさりと威嚇射撃。笑いと共に早々に銃のフラグは回収されたのだった。

終盤、トニーのために帰路を急ぐ二人。ところが再びパトカーに停められる。やはりバッドエンド?最後まで警官が敵になるんだ?そう思っていたら、予想を裏切って紳士的な対応をされた。え?黒人が乗っているのに?
既にここは南部ではなかった!「安全な」北部に戻っていた?今回も説明的な台詞はなかったので北部かどうか分からないけど多分そう。

「前を見ろ」
何度も注意されるトニー。交通事故でバッドエンドに?そういうラストも有り得るなとビクビクしていた。
「もう限界。眠い」
この展開ならきっとドクターが運転代わるな。予想は的中。
ドクターの危機をトニーが救うのはビジネス。運転を代わるのは仕事を超えた行為の象徴。つまり、この瞬間に二人は友人になったのだ。
それ以前から既にその関係は友人同士。お金が伴わない行動をする事で完成した。

なぜ南部で演奏ツアーを?
バンド仲間が背景を匂わせたけれど、具体的な理由はよく分からなかった。
説明的な台詞を省きがち。でも、それは決して不親切ではないと思う。ドクター自らベラベラ語らせるのは蛇足。キング牧師の公民権運動など、敢えて描かれなかった背景があるはずだから。

映画の出来自体は勿論素晴らしかった。
でも、展開は予想の範囲内だった。
バッドエンドではない。かと言って、めちゃめちゃハッピーエンドでもなかった。穏やかで自然な終わり方。
人種差別が穏やかに縮小していく時代、あちこちで似た様なエピソードが起きていたのかも。そんな印象を受けるのは「事実」だからだろう。
フィクションなら予定調和な感動のラストや予想を裏切るドラマチックなラストも可能。でもそうしなかった。
最後まで事実をベースにした映画とした誠実さは評価出来る。でも、そのお陰でエンターテインメント性は低くなった。
それでもラストの奥さんの台詞のお陰で後味は良い。観て損しない。充分「お勧め」と言える作品だった。

 


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