セリカ魂

「初代セリカに乗りたい!」
ゆっくり旧車ライフの備忘録

万延元年のラグビー

2011年01月16日 00時45分00秒 | 歴史

「どわしっ」「こんどら」「が、ぐ、ふぬ」「ずびずば」「ふぐむが、ぐ」「しゃばどす」など、筒井康隆氏お得意の擬音が盛り沢山な歴史系不条理作品。

あらすじ

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万延元年三月三日、水戸脱士による「桜田門外の変」が勃発。討ち取られた大老・井伊直弼の首は、ひょんなことから遠藤但馬守の元に転がり込んだ。
主君の首を返して貰おうとしたが、牛肉の恨み(!)を晴らすべく、但馬守は許さなかった。

首を持ち去られるなどお家の恥と、主人の死を隠した井伊家。将軍家には病気の届けを出して誤魔化す。だが、襲撃犯は既に自訴していて井伊大老の死は世の知るものとなっていた。
「首を取り戻すまでは」と病気の届けを出し続ける井伊家。そうと知りながら人参など見舞いの品を送りつける将軍家。次第にプレッシャーが井伊家を追い詰める。

思い余って首を盗み出す計画を立てると、お庭番の工藤半吉が命ぜられた。半吉は配下の者らに肉体訓練を課して異国のスポーツ「ラグビー」を習得させ、チームプレイで臨むことにした。

満を持して首級を盗み出すと、ラグビー技を駆使して守る半吉チーム。対する敵の追っ手は遠藤家お庭番の笠原重夫チーム。驚いたことに彼らもラグビー技の使い手だった。しかも本場イギリス人(!)で編成されたドリームチーム。
シーザース・パスや巧みなドッジングを駆使するドリームチームに半吉チームは翻弄される。それでもウイングが懸命のタックルを決めて反撃するなど、一進一退の攻防が続く好試合が繰り広げられた。

ハイ・パントで高く蹴り上げられスクラムでヒール・アウト。表皮はずるずる、見る間に肉塊と化す井伊大老の首。密集から転がり出て川岸から濠に落ちると、それに続いて両チームの選手も飛び込んだ。
それを見て「ウォーター・ポロの練習もさせておくんだった」と呟く半吉。
「今は1860年だ。ウォーター・ポロはまだ、ない」笑いながら重夫が答えた。

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中高生の頃、筒井康隆の文庫本は片っ端から読んで主だった作品は殆ど読んだ。久々に読み返したくなってアマゾンで古本を購入(¥1)。三十年振りに読んだら当時と違った印象。細部を違った構成で覚えていたことも分かった。
しかし、腹を抱えて笑い転げたのは当時と同じ。秀吉の中国大返しを描いた「ヤマザキ」も抱腹絶倒!

私ら世代の本好きなら筒井作品はマストだった。今の若い世代は読まない?「時かけ」は別かな?でも、筒井作品の真髄はスラップスティックな怪作にこそあるのだ。



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