鍵穴ラビュリントス

狭く深く(?)オタク
内容は日々の戯言
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プラトニックlove好き

ケイトの7

2013-09-21 05:21:50 | オリジナル小説
 ケイトがお姫様のおとりはからいでお姫様のお遊び相手の侍女にと位が上がる、という噂が屋敷の中でなされていました。
「まさか」
 ローザはまじまじとケイトを見つめます。
「なんで?」
「それが…わたしにもわかんねぇです」
「羨ましすぎる」
「ローザ。でも、ローザはわたしの一番の友だちであることには変わらないよ?」
ローザは一瞬無表情になったあと、にっこり笑いました。
「じゃあ蟻んこがどうのこうのって言うの、お姫様にやめさせてくれる?」
「……分かった」
「蟻んこくらい、いていいじゃない。だいたい新しい蔵を増築しないのがいけないのに」
「わたしもそう思う」
 こうして、ケイトはオレンジジュース作り係から、お姫様のお遊び相手の侍女にとなりました。
「おひい様に忠誠を誓います」
「うーん。まず発音ね。わたくしのことおひい様じゃなくて――ああ、自分で田舎くさい発音にするのも嫌なものね――お姫様と呼ぶことができるようにならないと。ねえジル?」
ジルとはお姫様のお遊び相手のお姉様で、23歳でした。レース編みのあのころは実家に帰っていたのです。
「けれどケイトはそこが面白くていいところじゃないかしら?姫様はそうは思わなくて?」
ジルはケイトにこっそりウインクをしました。
「ん…、ま、そうだけど。まあいいわ。レース編みがもうちょっとで出来上がるの、ケイト、教えて頂戴」
「わかりました」
「あと、刺繍もやらなくちゃいけないの。ケイト、できて?」
「もちろんです。妹と弟のシャツにいつも縫い付けてあげていましたから」
「うわー、すごい」
ジルが手をたたいて尊敬のまなざしで見てきます。
「そうでしょうか?」
「ええ」
ジルはふわりと笑いました。優しいお姉様だな、とケイトは思いました。


「何の模様にしようかしら。先生は金色の刺繍糸を大量にくれたけど」
「金色だったら、冠とかはどうでしょう?」
「いい提案だわ、ジル」
「かんむり座って星座ありましたよね、それに似させてはいかがなものでしょうか」
ケイトも一生懸命喋ってみます。お姫様はキラキラとケイトのことを見つめました。
「わたくし、神話にかけては得意中の得意よ。かんむり座はねぇ、酒の神ディオニッソスが、テセウス王子に置いていかれたアリアドネと結婚するとき贈ったものなのよ」
「ほへえ」
呆然とするケイトをみて、ジルは笑います。
「ふふふ」
「いいわ、そうしましょう。ジル、ケイト、手伝って頂戴」
「なんのステッチがいいと思う?ケイトは」
「わたしは…、サテンステッチがいいと思います」
「いいわね!」
ジルがぽんと手を叩いて、お姫様をソファに座らせました。
 今日も楽しい一日になりそうです。


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1 コメント

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こんばんは♪ (万梨羅)
2013-09-22 19:35:04
久々ですね!楽しみにしてました♪
刺繍できる女の子って女の子らしく…羨ましいわ。
かんむり座。つい最近まで知らなかったの。
郵便局で星座シリーズの切手がでてて、それにかんむり座がありました。綺麗で夢があっていいですね(*^o^*)
ケイトちゃん、昇進?おめでとう!

あ、遅ればせながら誕生日おめでとうございます!!
20歳?なのかしら?
素敵な1年になりますように…♪
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