岡口基一判事に下された裁判官弾劾裁判所による罷免判決は不適切な表現行為だけで法曹資格をすべて奪うもので不当。犯罪を犯した裁判官などしか罷免にされてこなかったのに極端に過重な制裁は表現の自由を侵害する。
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ツイッター(現Ⅹ)やブログ・フェイスブックなどへの投稿で殺人事件のご遺族の感情を傷つけたということで、国会に設置された裁判官弾劾裁判所に訴追された岡口基一・仙台高裁判事(58)=職務停止中=の弾劾裁判で、裁判官弾劾裁判所(裁判長=船田元・衆院議員)は2024年3月3日、岡口氏を辞めさせる「罷免」の判決を言い渡しました。
どこからお話しすべきか昨日から迷っているのですが、結論としては、この岡口元判事に対する罷免は不当判決です。
裁判官の独立を脅かし、表現の自由を侵害するもので許されない判断です。
ところが、この弾劾裁判の制度には不服申し立ての制度がなく、一般の裁判のような控訴はなく一発勝負の裁判ですから、この時点で岡口氏の法曹資格喪失は確定なんです。
しかも、この制度では裁判官としての地位を喪失するだけではなく、検事や弁護士にもなれません。
これから岡口氏がどうやって生きていくのか本当に心配になるような制度でして、これまでの戦後7つの罷免判決が出た事案と全く違う今回の判断は問題がありすぎると言えます。
(罷免判決から5年経過すると国会内の弾劾裁判所に資格回復請求ができますが、その判断がどうなるかはわかりません)。
まず、この裁判官の弾劾の制度についてご説明します。
立法・行政・司法の三権が分立してお互いに抑制均衡しあって国家権力の濫用を防ぐという三権分立の中でも、独立公正な判断をする機関として、司法権の独立は強く憲法上守られています(76条1項)。
これは選挙でえらばれる国会議員、その中の多数派から選ばれる内閣が国民の多数意見に影響されやすいのに対して、司法だけは憲法と法のみに従った判断をすることが必要だからです。
そして、その司法権を担う裁判所の中でも、例えばある裁判官が政府に都合の悪い判決を書いたから処分されたり免職されたりすることがないように、憲法は裁判官の独立をも規定し身分が保障されています(76条3項)。
裁判所法でも、たとえ不祥事を起こした裁判官であっても裁判所が科すことができる懲戒処分は戒告か過料までです。
そして憲法78条は
「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。」
と定め、裁判官の罷免、つまり辞めさせるかどうかは国会に設置された弾劾裁判所が判断することになっています。
国会の裁判官訴追委員会は衆・参両院の国会議員で構成され、国民などから裁判官を罷免すべきだという請求があると、対象の裁判官について調べて
「職務上の義務に著しく違反、または職務を甚だしく怠った時」「裁判官としての威信を著しく失うべき非行があった時」
として弾劾裁判を開く必要があると判断した場合、刑事事件の起訴にあたる「訴追」を行います。
訴追を受けて審理する弾劾裁判所も国会議員14人で構成され、罷免すべきかどうかを判断して3分の2以上の多数意見で罷免判決を出せます。
このように司法権の担い手である裁判官に対して民主的コントロールが必要だとしても、裁判官の身分を奪うまでの統制については極めて慎重な制度になっていることがわかります。
裁判官訴追委員会によりますと、初めて訴追された1948年から2023年までに、訴追委員会が受理した請求は2万4500件余りで、このうち訴追された裁判官は10人、罷免になった裁判官は8人、そして岡口判事までに罷免された裁判官7人はすべて犯罪などを犯した裁判官です。
直近の判決は2013年にあり、電車で女性のスカートの中を撮影したとして罰金刑を受けた大阪地方裁判所の裁判官が罷免されました。
2008年12月に罷免された宇都宮地方裁判所の裁判官は、部下の裁判所職員に携帯電話のメールを執ように送ったストーカー規制法違反で有罪が確定していました。
2001年11月には少女にわいせつな行為をした罪で有罪が確定した東京高等裁判所の裁判官が罷免されました。
2000年以前では、事件の処理を放置して略式命令請求を失効させたケースや、担当する破産事件の管財人からゴルフクラブなどをもらったケースなどがありました。
ロッキード事件で鬼頭判事補がニセ電話をかけて罷免になった有名な事件もその一つです。
以上のように、これまで戦後7人の罷免された判事はすべて犯罪か裁判官としてあるまじき義務違反をした人ばかりです。
これに対して岡口氏の弾劾理由は何か。
ツイッターなどへの以下の13の投稿等のうち12個が罷免の理由になっています。
【刑事事件投稿】
2017年12月 女子高校生殺害事件について、ツイッター(当時)に高裁判決文へのリンクと「無残にも殺されてしまった17歳の女性」などの文言を投稿(①)その後も18年3月にかけSNSに関連の投稿(②③)
18年9月 会見で「遺族からの要請で投稿を削除した」とする発言(④)
同年10月 「遺族には申し訳ないが、単に因縁をつけているだけですよ」などと見出しをつけた文章をブログに投稿(⑤)
週刊誌のインタビューに「遺族が4回も傷ついた理由を変えている」などと発言(⑥)
19年3月、ブログに「遺族を担ぎ出した訴追委員会」との見出しの記事を公開(⑦)
同年11月 フェイスブック(FB)に「遺族が洗脳されている」などと書いた文章を投稿(⑧)
数日後に遺族への謝罪をFBに投稿(⑨)し、ブログにも関連記事を投稿(⑩)
【犬事件投稿】
18年5月 犬の所有権をめぐる民事訴訟に関し、「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?」などと投稿(⑪)
同年7月 この訴訟に関する匿名掲示板へのリンクをブログに投稿(⑫)
19年1月 犬事件投稿が読めるFBへのリンクをブログに掲載(⑬)
岡口氏の表現でまず問題にされたのは自分の関わっていない殺人事件について、判決が死刑判決ではなかったことを取り上げて
「首を絞められ苦しむ姿に性的興奮を覚える男」
「無残にも殺されてしまった女性」
などと表現して、死刑判決が望ましいとツイートしたものです。
この時点で岡口氏はご遺族がこの表現で傷つくとは思っていなかったようですし、被害者やご遺族を揶揄するものでは全くないのでそれも当然なのですが、ご遺族はそれでなくても辛いお気持ちなのにこの事件をこのように表現されてさらに傷つかれたということで、裁判所に抗議をされました。
これにより、2018年に当時所属していた東京高裁で厳重注意処分を受けた岡口判事は2019年に
「遺族は東京高裁に洗脳されている」
とまた投稿したんですね。
今回の裁判官弾劾裁判所の判決理由の中で
「執拗かつ反復して遺族の心情を傷つけ、裁判官の威信を著しく失う非行を行った」
としていますが、私も岡口氏の投稿は最初の1本以外は不適切で、人が嫌がっているのになんでそこまで言い続けなければいけないのか、裁判官特有の?傲慢さだと思わざるを得ません。
昔、岡口氏が白いブリーフ一丁の写真をツイッターに投稿したのを見て以来の嫌悪感は、個人的にはぬぐえないどころか増すばかりです。
しかし、だからと言ってこれらの表現が裁判官弾劾裁判に値するか、裁判官として罷免することで裁判官・検察官・弁護士すべてをできなくなる「法曹への死刑判決」を受けなければならないほどの「罪」かと言われれば、それは当然答えはNOです。
これまでの破廉恥な犯罪や違法行為をして法曹資格を失った裁判官たちに比べて、不適切とはいえSNS上での発言だけしかしていない岡口氏に戦後8人目の罷免判決をしたのはいかにも過重な制裁です。
まして、岡口氏はこの4月には裁判官再任を辞退して裁判官を辞任することをあらかじめ表明していたわけで、それで十分ではないですか。
余計なことを言えば、3千万円の裏金をせしめ50億円の政策活動費を使いまくっていた二階俊博幹事長は次の総選挙に出馬しないと表明しただけで自民党内部では今日4月4日の党紀委員会でおとがめなしです。
もっと言えば、自民党の総務政務官だった杉田水脈氏はそれこそ「執拗」に延々とアイヌ民族や朝鮮民族などへの差別発言を現Ⅹで続けていますが、なんの処分もなく国会議員を続けているではないですか。
こんな自民党の国会議員が過半数を占める訴追委員会や裁判官弾劾裁判所の裁判官役の国会議員たちが、SNS上での表現だけで法曹資格をすべて失わせるような判決をする資格があるんですか。
ところで、私は日本反核法律家協会の理事としてアテネに行って、ギリシャの反核裁判官たちと交流したことがあるんですが、そもそも日本では裁判官が核兵器廃絶を主張するとかありえないわけです。
日本で反核裁判官なんて聞いたことがないでしょう?
ところが、彼らギリシャの裁判官は核兵器廃絶を求めてデモ行進したりするんですよ。裁判官が。
しかも、ギリシャの裁判官たちに、日本の裁判官には労働組合がないのは異常だ、どうやって裁判官の独立を守るんだ、と逆に質問されて仰天したんですよ。
ヨーロッパでは裁判官も労働組合を作って裁判所を含む権力と対抗し、また世論からの圧力とも団結して戦ってこそ裁判官の独立は守れるというのが常識なんですね。
そういう裁判官の表現の自由や政治活動の自由のグローバルスタンダードから見ると、日本の裁判官が「政治的中立」を過度に求められて異様なほど萎縮しているおかしな現状があるわけです。
そんな中、裁判所が岡口氏の表現行為を理由に処分と冷遇を重ね続け、とうとう憲法上の制度である弾劾裁判所での罷免にまでなってしまったことは、日本の裁判官の表現をさらに萎縮させるのは確実です。
確かに今回の岡口氏の発言・表現のいくつかはそれは不適切なものでした。私に言わせれば不快でさえあります。
しかし、その不適切度に比べてあまりにも大きな法曹資格喪失の制裁を科したことは断じて許されず、日本の権力分立や表現の自由に対する大きな脅威となる罷免判決だったと言わざるを得ないのです。
ゼロからマスターする要件事実 ――基礎から学び実践を理解する
日本の司法研修所での民事事件の教育は「要件事実論」といって、ある法的効果を導く要件となる事実を原告・被告どちらが主張・立証しなければならないかという技術的分野に偏りすぎていると言われてきました。
例えば、お金の貸し借りで自分は相手に100万円貸したから100万円返してくれと請求することができる返還請求権が存在する、という法的効果を主張する側は、①両者に返還約束があったことと②貸した側から借りた側への100万円の金銭の授受が実際にあったことを主張立証する義務があり、原告がこれができないと返還請求権は認められないのです。
しかし、原告が①と②を立証しても、被告が③返済という抗弁事実を主張立証すると、このいったん発生していた返還請求権は消滅することになるんですね。
そして、司法研修所教官室の歴代の民事裁判教官たちが要件事実論に関して見解を出してこれが通説となっていたんですが、全部の分野の要件事実の教科書がなかなか出なくて。
これに対して、たった一人の裁判官である岡口判事が要件事実論の本を出したら司法修習生にバカ売れ。当時どんな人か知らなかったので司法試験予備校講師をやっていた私も買いました(笑)。
最近うちのブログでは「出来の悪い弁護士」シリーズを連載開始したのですが、岡口氏は要件事実論の本を一人で書き上げる天才性から言っても、能力的には非常に「できる」裁判官だったろうと思います。
しかし、今回問題にされた一連の言動を見ていると、当事者に寄り添うことができる「出来の良い」裁判官ではなかったような気がします。
人として好きか嫌いかと言われれば私は嫌い。
でもだからと言って、罷免にしていいかどうかは別問題。この微妙なバランスが市民に分かっていただけることを願う思いで書きました。
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◆罷免は8人目「表現の自由を逸脱している」
◆判決後、自身のFacebookに「裁判ダメでした」
裁判官弾劾制度 裁判官を辞めさせる唯一の制度。裁判官弾劾法では▽職務上の義務に著しく違反、または職務を甚だしく怠った時▽裁判官としての威信を著しく失うべき非行があった時―に罷免できると定めている。国会の弾劾裁判所で、衆参議員14人が務める裁判員が公開の法廷で審理する。判決は「罷免」か「罷免しない」の二択。3分の2以上の賛成があれば、罷免される。罷免されると、裁判官の身分だけではなく法曹資格も失う。
判決は即日確定し、岡口判事は裁判官の地位を喪失。判事は再任を希望せず任期満了の今月12日に退官する意向だったが、判決により退職金は支払われない見込みで、弁護士や検察官になる法曹資格も失った。
判決によると、岡口判事は2017年、東京都江戸川区の女子高校生殺人事件に関し、ツイッター(現X)に「首を絞められ苦しむ姿に性的興奮を覚える男」「無残にも殺されてしまった女性」と投稿。19年には「遺族は東京高裁に洗脳されている」と書き込むなどした。
船田裁判長は、投稿は岡口判事が量刑に問題があると考える判例を紹介する目的だったと指摘。一方で、遺族が抗議した後も投稿が繰り返されたことを挙げ、「何度も執拗(しつよう)に遺族を傷つけた」と非難した。
裁判官の表現行為については、憲法が保障しているとした上で、SNSには他人を傷つける投稿が拡散する危険性があるのに配慮を怠ったと判断。「表現の自由を行使する手段として甚だ問題だ」として、裁判官としての威信を著しく失う非行に当たると認定した。
罷免には疑問が残るなどとする少数意見があったとし、「裁判員の3分の2以上の多数意見で罷免とした」と述べた。
殺人事件などをめぐってSNSに不適切な投稿を繰り返したとして訴追された仙台高等裁判所の岡口基一裁判官に対し、国会の弾劾裁判所は裁判官を辞めさせる罷免の判決を言い渡しました。裁判官が罷免されたのは8人目で、表現行為を理由とした判断は初めてです。
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仙台高等裁判所の岡口基一裁判官(58)は、女子高校生が殺害された事件の遺族などについて、SNSで不適切な投稿を繰り返したとして国会の弾劾裁判所に訴追され、罷免とすべきかどうか、衆・参両院の議員から選ばれた裁判員による審理が15回にわたって行われました。
これまでの裁判で、検察官役の訴追委員会は「遺族などを傷つける投稿を繰り返したのは非常に悪質で罷免すべきだ」などと主張した一方、弁護側は「これまで罷免判決が出た盗撮などの犯罪行為とは根本的に異なり、罷免にはあたらない」と主張していました。
表現の自由めぐる双方の主張
裁判では、裁判官の表現の自由をめぐっても意見が交わされました。
検察官役の訴追委員会側は裁判官にも表現の自由があることは認めたうえで「今回、罷免にあたらなければ、ほかの裁判官が同様の投稿をしても地位を奪われないという先例になる。今後の裁判官のSNS投稿などに大きく影響を与える観点からも厳正な判断が求められる」と主張しました。
一方、弁護側は表現の自由の観点などから罷免すべきでないとする弁護士会などの声明や意見書が26件出されていることを挙げ、「SNSの投稿の一部が不法行為だったとしても、民事裁判で解決が図られるべきだ。投稿で直ちに司法への国民の信頼を害したわけではない」と主張しました。
「表現の自由として許される限度を逸脱」
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3日の判決で弾劾裁判所は、事件の遺族への岡口裁判官の投稿について「本人に意図はなかったものの、結果として何度も執ように遺族を傷つけることになった。SNSは発信者が想定した趣旨と全く異なって受け止められる危うさをはらんでおり、その危険性を踏まえて他者を傷つけないよう配慮すべきだった」と指摘しました。
そのうえで「遺族からの抗議を受けても反省や改善がなく長期にわたって投稿などを繰り返してきたことは、表現の自由として裁判官に許される限度を逸脱している」と述べました。
そして、裁判員の3分の2以上の多数意見で、裁判官を辞めさせる罷免を言い渡しました。
岡口裁判官は裁判官の任期が満了する今月で職を辞する考えを示していましたが、罷免が決まったことで法曹資格を失い、弁護士としても活動することはできません。
弾劾裁判で裁判官が罷免されるのは2013年以来で、8人目です。表現行為を理由とした判断は初めてです。
船田裁判長「評決はギリギリの数字だった」
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裁判長を務めた船田元衆議院議員と主任裁判員の階猛衆議院議員が判決のあとに会見を開きました。
船田議員は「本人が刑事罰を受けていない中、罷免にあたるかどうか判断する難しさがあった。慎重な議論を続けたがひとつの結論にまとめることができず、最終的に評決をとり、3分の2以上が罷免とした。数は公表できないが、ギリギリの数字だった」と話しました。
階議員は「裁判官は行政府や立法府など権力に対する批判をちゅうちょしてはならないが、犯罪被害者などについてSNSを使う場合は人権に配慮すべきだ。判決では権力者に対する投稿と一般市民への投稿を明確に分けて判断した」と話しました。
最高裁判所「裁判官が職責の重さ自覚を」
最高裁判所は「裁判官が罷免の判決を受けたことは、誠に遺憾だ。それぞれの裁判官が改めて職責の重さを自覚し、国民の信頼にこたえていくよう努めたい」とコメントしています。
事件の遺族「一生の心の傷 忘れることはできない」
判決を受け、事件で亡くなった女子高校生の父親の岩瀬正史さんは「『表現の自由』とは何を言っても許されるのではなく、必ず責任が伴うという今の時代に沿った判決が出て安心しています。岡口氏が今後どのようなSNSの使い方をするのかはわかりません。今回の判決を真摯(しんし)に受け止め、人を傷つけるような投稿は控えていただきたいと願っています」などとするコメントを出しました。
母親の裕見子さんは「訴追が決定するまで2年、そして弾劾裁判も始まってから判決まで2年という長い時間がかかりました。罷免という結果は出ましたが、岡口氏にされた行為の数々は私たちの一生の心の傷で忘れたくても決して忘れることはできません」などとコメントしています。
弁護団「論理が何もない 感情にひっぱられたのでは」
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岡口基一裁判官の弁護団は判決のあと会見を開きました。
野間啓弁護士は「それぞれの行為に関する動機や目的についてはかなり丁寧に認定し、われわれの主張をほぼ全面的に採用している。それにもかかわらずなぜ『著しい非行』にあたるのか、論理が何もない結論になっている。国会議員が感情にひっぱられたのではないか」と批判しました。
また、伊藤真弁護士は「どんなに理不尽な判決でも不服申し立てができないという制度の理不尽さを強く感じた」と話していました。
弁護団によりますと、判決が言い渡されたあと、岡口裁判官はあぜんとした様子だったということです。
専門家「裁判官の情報発信 萎縮させるおそれ」
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憲法が専門で表現の自由に詳しい慶應義塾大学の駒村圭吾教授は裁判官の表現の自由について「裁判官も一般市民であり発言する権利はあるが、公権力を持ち、全体の奉仕者であるという身分上の制約もある」と指摘し、今回の判決について「岡口裁判官が発信した内容が波及して生まれる効果は、本人が負担しなければならない。行ってはならない『非行』と認めたことは不当ではない」と述べました。
一方、「罷免にするほどの『非行』だったという理由については抽象的な内容にとどまっている。この判決が、ほかの裁判官の情報発信を萎縮させるおそれがある」と述べました。
SNS投稿で繰り返し処分 賠償命令も
仙台高等裁判所の岡口基一裁判官は東京高等裁判所などで民事裁判を担当するかたわら、旧ツイッターやフェイスブックといったSNSを使って積極的に情報発信を行ってきました。
SNSでは裁判に関する記事を紹介したり、みずからの白い下着姿の写真も投稿したりしていて、当時のツイッターのアカウントには、2017年12月時点でおよそ3万8000人のフォロワーがいました。
岡口裁判官は、女子高校生が殺害された事件の裁判に関する投稿で遺族から抗議を受け、2018年の3月、当時所属していた東京高裁から厳重注意処分を受けました。
さらに、みずからが担当していない飼い犬の所有権をめぐる裁判についての投稿をめぐっても当事者を傷つけたとして東京高裁から最高裁に懲戒を申し立てられました。
これを受けて最高裁判所は2018年10月、裁判官の処分を審理するための「分限裁判」で、「裁判官にも表現の自由があることは当然だが許される限度を逸脱している」として戒告の処分としました。
その後も岡口裁判官は女子高校生の遺族に関する内容をSNSに投稿し、4年前の2020年に最高裁は再び戒告の処分としました。
去年には女子高校生の遺族が岡口裁判官に賠償を求めた裁判で、東京地方裁判所が一部の投稿について「事実に反し、人格を否定する侮辱的表現だ」と認め、40万円余りの支払いを命じました。2審も賠償を命じ、判決はその後、確定しています。
これらの投稿について国会の裁判官訴追委員会は2021年、罷免するかどうかを審理する弾劾裁判所に訴追することを決定。弾劾裁判所はおととし3月から審理を行ってきました。
弾劾裁判の役割は
裁判官は司法の独立を守る観点から憲法によって身分が保障されています。
不祥事を起こした裁判官であっても、裁判所が科すことができる懲戒処分は戒告か過料までで、罷免、つまり辞めさせるかどうかは国会に設置された弾劾裁判所が判断することになっています。
国会の裁判官訴追委員会は、通常の刑事事件で言えば検察にあたる役割があります。
衆・参両院の議員で構成され、国民などから裁判官を罷免すべきだという請求があると、対象の裁判官について調べ、職務上の義務に著しく違反するなど弾劾裁判を開く必要があると判断した場合、刑事事件の起訴にあたる「訴追」を行います。訴追を受けて審理する弾劾裁判所も国会議員で構成され、罷免すべきかどうかを判断します。
裁判官訴追委員会によりますと、初めて訴追された1948年から去年までに、訴追委員会が受理した請求は2万4500件余りで、このうち訴追された裁判官は10人です。
岡口裁判官を除くと、弾劾裁判でこれまでに7人が罷免と判断されています。
これまでの罷免は刑事裁判で有罪など
これまで弾劾裁判で罷免とされた7人の裁判官は、刑事裁判で有罪となったことや職務上の違反が問題とされてきました。
岡口裁判官のケースを除くと直近の判決は2013年で、電車で女性のスカートの中を撮影したとして罰金刑を受けた大阪地方裁判所の裁判官が「人を裁く立場の裁判官としてあるまじき行為だ」として罷免されました。
2008年12月に罷免された宇都宮地方裁判所の裁判官は、部下の裁判所職員に携帯電話のメールを執ように送ったストーカー規制法違反で有罪が確定していました。
2001年11月には少女にわいせつな行為をした罪で有罪が確定した東京高等裁判所の裁判官が、「司法に対する国民の信頼を限りなく揺るがせた」として罷免されました。
2000年以前では、事件の処理を放置して略式命令請求を失効させたケースや、担当する破産事件の管財人からゴルフクラブなどをもらったケースなどがありました。
弾劾裁判所の判決に対して不服を申し立てる方法はなく、判決は言い渡しと同時に確定し、罷免とされた場合には法曹資格を失うことになります。
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御座います
裁判官と言えども
ある程度の 自由な(個人としての)
発言は わかります
しかし
理不尽とは 言え 何度も
注意を されてるのだから
その注意は 越権行為だと 訴えていれば
結果は 違った かも と 思います
俺も知りませんでした
鬼頭判事補の三木総理へのニセ電話も懐かしくて目からウロコですが、なら昔からあるけど俺らが知らないだけなんだなと
裁判長が「政界失楽園」の船田元だそうですが、国会議員に裁判官の罷免権があるってのも、どうなんだろう、と微妙な印象です
ドリル優子やパンツ高木の裁判長もあり得ますし
事件遺族の岩瀬さんは、最高裁の戒告や高裁の賠償命令だけではそれほど不満なのでしょうか
遺族は勿論慰藉されるべきですが、岡口氏の場合は罷免裁判よりも戒告や賠償でさらに厳しく対応する、でも良かったのではと思います
> でもだからと言って、罷免にしていいかどうかは別問題。この微妙なバランスが市民に分かっていただけることを願う思いで書きました。
前者は感情論で、後者は理性論。
これらは意外と使い分けるのは困難で、人に言われてハッとする事も多いため、とても勉強になる記事でした。
こういうアウトコース系の記事だと、軽~く流し打ちが出来ちゃいますね 笑
これは意表を突かれました。
なんと判決の翌日に発表になり、弁護団のナンバー2だった伊藤真先生、いろいろな意味で
「やるなあ!」
という感じです。
岡口さんを救うことにもなるし、伊藤塾の宣伝にもなるし、もちろんスター講師間違いなしですし。
やはり賢くてやり手です、伊藤先生。
よかったよかった。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/319305