依頼者・相談者の方や、友人に
「最近、テレビや電車の吊り広告で宣伝している法律事務所がありますけど、あれなんなんですか?」
と尋ねられ、
「コマーシャルに数千万円もお金をかけられるってことは、それだけ儲けているということですから、推して知るべしでしょう」
とお答えしているのですが。
2016年2月16日、消費者庁は景品表示法違反(有利誤認表示)で、消費者金融への過払い金返還請求などを全国で手がける弁護士法人「アディーレ法律事務所」に再発防止を求める措置命令を出しました。
消費者庁によると、アディーレ法律事務所は過払い金の返還請求について、4万円の着手金を無料にするというキャンペーンの広告を「1か月限定」「今だけの期間限定」などとホームページ上に掲載しながら、実際には2010年10月~15年8月の約4年10か月にわたり、表示を続けていたというのです。
この法律事務所は、いつまでも閉店セールをやっているお店と同じですな。
アディーレ法律事務所は、
「消費者庁からの指摘を真摯に受け止め、注意不足を十分に反省のうえ、今後は誤解を招く表示をせぬよう、再発防止を徹底します。ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」
とコメントしていますが、消費者を守らないといけない法律事務所が、消費者庁から措置命令を出されるなんて前代未聞。
弁護士会の恥ですな。
弁護士会の恥と言えば、うちからもリンクさせていただいている澤藤統一郎の憲法日記で、澤藤先生が東京弁護士会の選挙で立候補したアディーレ出身の候補の話を書いておられます。
東京弁護士会副会長選挙における「理念なき立候補者」へ
これによると、東弁副会長選挙に立候補したアディーレ弁護士から
「てか、若手弁護士会費負担 減らせね? そう思った方はもう少し読んでください。」
「てか、弁護士会職員の人件費 高くね? そう思った方はもう少し読んでください。」
というファックスが毎週来たのだそうです。
澤藤先生は
「中学校や高校の児童会・生徒会でも、こんな品位に欠けた乱暴なチラシは作らないのではないか。弁護士会選挙にふさわしくないなどと言うのではない。とても、大人が真面目に書いた文章とは思えない。」
と書いておられますが、謹厳実直な先生が目を白黒されているところが想像できて、ちょっと笑ってしまいました。それにしても品がないですよね。
詳しくは澤藤先生の記事を読んでいただくとして、このアディーレ弁護士が言いたいのは、弁護士会の人権擁護活動はお金がかかってもったいないからやめようということにつきます。
弁護士法1条1項が高らかに謳った弁護士の使命、
「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」
も、そのための弁護士自治もへったくれもないというわけです。
まあ、過払い金法律事務所にふさわしい内容と文体と言えるかもしれません(今ではいろんなことに手を出している)。
どこのレディースコミックや。。。アディーレや。
次に最近の報道で驚いたのは、刑事弁護に特化しているというアトム法律事務所。
まず、この法律事務所がホームページに「漫画でわかる!強姦事件解決までの流れ」というマンガを掲載したことが話題に。
強姦被疑事件の被疑者の弁護をしたという話なのですが、アトム事務所の弁護士の活躍で被害者の方と示談が成立し、起訴はされないことになったので、加害者である依頼者が破顔一笑して、
「よおし!今晩は久々に一杯やるか!」
強姦したことは間違いないのに、弁護士の
「次からは気をつけてくださいね」
というアドバイスや、加害者本人の
「今回のことはだれにもバレてないようだ・・・」
とか、反省のないことおびただしいというか、次からは何に気を付けるんだとか突っ込みどころ満載で、まさに炎上しました。
ところが、この年中無休で1日24時間対応するという、コンビニみたいな法律事務所がやらかしたのはこれにとどまりませんでした。
例の清原和博容疑者の覚せい剤取締法事件が起きたとたんに、代表弁護士がこんなツイートを。
こういうツイートをするのであれば、当然、清原容疑者の事件を受任していると思うじゃないですか。
それが、アトム法律事務所はこの事件とは全く無関係なんだそうです。
弁護人でもないのに、清原選手の逮捕に関するテレビの取材に対応可能ですってどういうこと??!
これぞ、究極の便乗商法。
刑事事件専門というアトム法律事務所の方々に、「詐欺商法」ってどういうものを言うのか、聞いてみたいものです。
たぶん、想像を絶するような巧みな弁護方針があるのでしょう。
参考記事
行政処分を受けた初めての法律事務所として消費者被害の歴史に残ってしまったアディーレ法律事務所の失態と波紋
弁護士が詐欺まがい商法をやっちゃあ、おしまいでしょ。両者がっぷり四つで、報酬もがっぽり。
しかし、この業界で私のようなのがやっていけなくなる日も近いな。
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「今だけ無料」は不当表示 消費者庁、アディーレ事務所処分
過払い金返還請求の着手金を「1カ月限定」「今だけの期間限定」で無料や割引にするなどとキャンペーンの宣伝を繰り返し、実際は5年近く続けていたのは景品表示法違反(有利誤認)に当たるとして、消費者庁は16日、弁護士法人アディーレ法律事務所(代表・石丸幸人弁護士)にこうした表示をしないよう求める措置命令を出した。
同事務所は東京都豊島区の本店のほか、国内に約70支店を開設。債務整理を多く手掛け、テレビCMで知られる。消費者庁によると、弁護士法人や弁護士事務所に、景品表示法に基づく措置命令を出すのは初めて。
「一杯やるか!」事件のあの法律事務所、今度は清原逮捕に「便乗」宣伝活動が波紋&物議呼ぶ
またあの法律事務所がやらかした。強姦事件を起こした犯人が不起訴処分となり「一杯やるか!」と満面の笑みを浮かべる漫画をホームページ上で公開し、猛批判を浴びたアトム法律事務所(2015年12月23日付当サイト記事『強姦犯を不起訴に持ち込む→一杯やるか!あの法律事務所のトンデモ広告に批判殺到!』参照)。
今度は、著名人の事件に便乗した宣伝を疑われる広報が波紋を呼んでいる。
同事務所代表の岡野武志弁護士は2月2日、元プロ野球選手の清原和博容疑者が覚せい剤取締法違反で逮捕された事件について「テレビ取材については、朝10時よりアトム法律事務所新宿支部、同大阪支部で対応可能です。取材希望のマスコミの方は下記までお電話ください。24時間体制で受付対応しています」とTwitterで告知したのだ。
これをめぐって、弁護士の間からは「アトム法律事務所は清原容疑者の弁護を受任しているのか?」と疑問の声が噴出。もし、アトム法律事務所が受任しているなら、マスコミからの取材対応について事前の対策をすることも納得いく。しかし、もし無関係ないのであれば、このような告知を積極的にするのには疑問がある。
そして、別の弁護士が告知に従って同法律事務所に直接問い合わせをするという意外な事態に発展。どういう事情でこのような告知をしているのか聞いてみると同事務所は、「清原事件が報道されて以降、事務所のフリーダイヤルにマスコミからの電話が殺到し、一般のお客様からの相談電話がつながりにくくなっている。このため、岡野弁護士がツイッター上に案内を出した」と回答したという。
しかし、現在のところ、テレビでアトム法律事務所の弁護士が清原容疑者逮捕に関連してコメントを出していることは確認できない。業務に支障を来すほどマスコミから電話が殺到していたはずだが、どうなっているのか。
清原容疑者の逮捕は、世間の注目を集めるホットトピックだ。こうしたテーマで取材を受ければ、事務所のPRにもなる。岡野弁護士は、過去の取材実績についても、「NHKはじめ民放各社からのテレビ取材実績が100件以上ある弊所の弁護士がお応えします。取材慣れしているため撮影は非常にスムーズです」とブログでアピールしている。
一方で、「電話取材限りの案件は受け付けておりませんのでご遠慮ください」として、影響力の高いテレビ出演は引き受けるが、電話取材は拒否している。メディアに好意で協力するというわけではなく、自分の事務所の宣伝になるものだけを受け付けるという姿勢が、さらなる批判を呼ぶ原因となっている。
有名人の事件に絡んで事務所のPRをするとは商魂たくましい限りだが、公共性の高い刑事事件専門をうたう事務所の行動としては不適切との批判が多い。「一杯やるか!」事件から日を空けずに起きた今回の騒動。アトム法律事務所の広報活動は、今後も物議を醸しそうだ。
(文=則本正義/フリーライター)
強姦犯を不起訴に持ち込む→一杯やるか!あの法律事務所のトンデモ広告に批判殺到!
「アトム法律事務所 HP」より
全国展開する刑事事件専門のアトム法律事務所がホームページ上に掲載した漫画が、インターネット上で物議を醸している。強姦事件について、どのようなかたちで刑事弁護のサービスを行うかをわかりやすく伝えるという趣旨のようなのだが、話の流れがあまりにもひどいのだ。
「漫画でわかる!強姦事件解決までの流れ」と名付けられたこの漫画。サラリーマンの男性が、強姦事件を起こして警察の取り調べを受ける場面から物語は始まる。
男性は、「前科がついたら仕事はクビになる」「家族にバレたら家庭は崩壊」「新聞やネットに載ったら人生終了だ」と絶望し、高層ビルの屋上で自殺を考えるのだが、そこに「ちょっと待って!落ち着いてください!!」と弁護士が登場。「私たちに相談すればあなたの不安や悩みを解消することができます!」と自信に満ちた笑顔で諭し、被害者と示談に持ち込んで不起訴に持ち込めばよいと語る。
日本では、一度起訴されてしまえば有罪率は99%以上。有罪になってしまう社会的不利益はあまりにも大きい。不起訴に持ち込めれば、前科もつかず、その後の人生が大きく崩れることは避けられるだろう。
そしてこの漫画では、弁護士の奮闘もあって被害者との示談が成立し、男性は無事不起訴になった。弁護士は「今回事件が無事解決したのは、あなたの素早い判断のおかげです。次からは気をつけてくださいね」と満面の笑み。そして最も問題のシーンは最後だ。男性は以前と変わりなく会社に出勤し、「今回のことは誰にもバレてないようだ…。よおし、今晩は久々に一杯やるか!」とホクホク顔のアップで漫画は終わっている。
これに対して、ネット上では「クズすぎる」「あまりに配慮に欠けている」などと批判が噴出。もちろん漫画の中の被害者は、弁護士の説得により納得した上で示談にしたのだろう。男性が不起訴になること自体は別に問題はない。弁護士は自分の仕事を正当にこなしただけであり、この事務所に相談すればきっとこういう流れになるのだろう。
しかし、これではまるで、強姦しても弁護士に依頼すれば、なんら制裁を受けることもなく社会生活を継続できるといっているようにも受け取れる。しかも最後に「一杯やるか」で終わらせており、男性は強姦事件を起こしたことに対して反省の色も見せていない。こうした内容を、法律事務所の広告とするのは明らかに問題だろう。
あまりにも批判の声が大きく、事態を察知した同事務所は、漫画を削除し、「本サイト掲載の漫画上で、配慮に欠けた表現があったことを深くお詫びします。当該漫画を削除し、今後は再発防止に努めます」と謝罪文を掲載している。
以前からこの事務所は、「事件を起こしても不起訴に持ち込む」ということを売りとして広告を出し、問題視されていた。依頼者の利益のために動くこと自体は問題ないが、今回のような広告をつくっていたら、弁護士は犯罪揉み消しの片棒を担いでいる商売だと思われかねないのではないか。今後は品位が疑われるようなものを掲載しないでもらいたいものだ。
(文=則本正義/フリーライター)
よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!
このような事務所だってメディアもわかっているはずなのに、なんで使うの?と思いました。これを観て「テレビに出てたから信用できる」と思う人もいるのでしょうか?
今、たった今、事務所関連の書籍も紹介されました(悩んでいる人は読みたくなるような書名です)。ちょっとびっくりです。
って思う事が多いです。
まともじゃ弁護士であり続けられなかったり。
まともじゃ議員になれなかったり。
まともじゃ仕事で評価されなかったり。
まともじゃ生きてくのが辛かったり。
この国は、安倍首相とその取り巻き以外の
一体誰を幸せにしてるんだろう。
この国に住む人は
本当はどんな世界で生きたいんだろう。
その世界を実現したくはないのかな。
澤藤先生というのは、本当に熱く、真っ直ぐな方ですね。いわば日本のサンダースか? 弁護士資格を取って間もなくの頃を振り返った話、すぐに自由法曹団に入り、現場に出向き闘った、その心の高揚や使命感が生き生きと伝わってきました。こういう文章を読むのは気持ちがいいです。
だからこそ、弁護士としての理念もなく、ただ報酬が受け取れればそれで良い、社会的使命など何のものかは、負担は少なく利潤は多く、みたいな赤瀬弁護士が許せなかったのでしょう。「目を白黒」どころか、「頭から湯気」な姿が目に浮かびます。
しかし、ゲスいですなあ・・・。
でも弁護士は余っているそうだし、資格はあっても仕事に恵まれない人が、社会的、金銭的に成功している同業者を見ると、自分も見習いたいと赤瀬候補に投票するのだろうか。弁護士として儲かる仕事は、人権擁護、社会正義を実現する案件ではなく、法律の裏を掻いて企業の利益を上げるような仕事なのでしょう。HPに、弁護士になったのは、「フェラーリを買うため」と、何のためらいもなく書くような人が成功しちゃうんだろうな。(だーれだ w )
> 私のような者が、この業界でやっていけなくなる日も近い・・・
ごるぁ~!! そんな寂しいこと、言うたらあかんし。ヒューマニズムの大将なんやから、後進を育てなあきまへんえ。
過払い金請求訴訟は、単純な割りに、証拠が揃っていて勝てば、多額の金額が入るので、多分、割りの良い事件なのでしょう。 でも、恐らく、このような事例は、例外だと思いますけれどね。
それは、弁護士さんが多くなったのは確かですので、昔のように、何方かの紹介が無ければ、業務を受託出来ない、と堅いことを言われる弁護士さんはすくなくなったでしょうが。 依頼を受ける際には、事件の性質と御自分の信条を慮る方が多数だと思いますよ。
私自身の経験からも、お金が命、とされる方は、一般よりもずっと少数には間違いはないことでしょう。
この事例から敷衍する訳ではありませんが、司法試験の難易度を落としてまで、合格者を増やすことは、却って司法制度への信頼性を低下させることに繋がり、法曹三者としては遺憾な事態を招来することになりはしないか、と危惧します。