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くたばれ竹中平蔵 論 さらに「失われる十年」 |
藤澤昌一著 | |
駒草出版 |
あいつは結局、そこから逃げてしまった。国民から幸せと340兆円を奪った男。「郵政民営化なくして改革なし」のフレーズを救世主の声のように讃え、小泉・竹中の悪政を許したのは、「B層」と言われる国民だった。
第一部 竹中平蔵慶応大学教授・パソナ会長
わたくし、竹中平蔵氏がひどい人だということは良くわかっていたんです。
なぜなら、竹中氏と言えば、第1次から3次の小泉内閣で経済財政担当大臣や金融担当大臣や総務大臣をやり、さらには郵政民営化担当大臣として、悪名高い郵政民営化をやったりした「学者」兼政治家です(実はほとんど論文を書いていないそうで、ナベテル先生こと渡辺輝人弁護士には政商納言(せいしょうなごん)と呼ばれているw)。
その竹中氏は小泉政権時代には経済担当の大臣なのに
「貧困が一定程度広がったら政策で対応しないといけませんが、社会的に解決しないといけない大問題としての貧困はこの国にはないと思います」
と発言したことで有名です。
あと、最近では、
『私が、若い人に1つだけ言いたいのは、「みなさんには貧しくなる自由がある」ということだ。「何もしたくないなら、何もしなくて大いに結構。その代わりに貧しくなるので、貧しさをエンジョイしたらいい。ただ1つだけ、そのときに頑張って成功した人の足を引っ張るな」と。』
と発言して、世間をアッと言わせました(2012年11月 東洋経済オンラインにて)。
で、また、そんな発言をしたばかりの竹中氏を安倍政権は2013年1月8日、日本経済再生本部の「産業競争力会議」メンバーに選び、竹中氏は民間議員という立場にあります。さらに2014年1月からは、国家戦略特区の特区諮問会議メンバーとしても活動をしています。
竹中氏が主要メンバーとして引っ張ったこの産業競争力会議から、今回の労働者派遣法改悪案が出てきたわけですが、なんと竹中氏って今は大手人材派遣会社パソナの会長なんですね。いつの間に!?
それにしても、こんな派遣業界の人が派遣法の話し合いに出たらダメでしょう?
だって、自分の会社に都合のいいことばかり言うに決まってるんですから。
今回の労働者派遣法改悪案では、派遣先の会社は永久に派遣労働者を使い続けることができ、派遣労働者は一生派遣のままというとんでもない改悪がされようとしているのですが、これだと雪崩を打って正規社員が派遣労働者におきかえられるのは間違いありません。
つまり、派遣業者に登録する労働者が飛躍的に増え、また派遣契約先も爆発的に増大することは間違いないわけです。
このまま、派遣法が改悪されたら、派遣大手のパソナはウッハウハ。給料が上がって、持ち株の株価も上がって、竹中氏も大儲けでしょう!
2014年5月10日放映のテレビ番組「激論!コロシアム」で、経済評論家の三橋貴明氏の「なぜ諮問会議などで民間議員という名の民間企業の経営者が、自分の会社の利益になるような提案をするのか」というような質問に対して、「企業の代表としてではなく、有識者として入っているんですよ」と返答していましたが、更に三橋氏が「竹中さんだってグループの取締役会長ではないですか!疑念があってもしょうがないでしょう。労働規制の緩和とかしているんだから」と追い打ちをかけたところ、竹中平蔵氏は「失礼だ!無礼だ!」と激怒しました。
竹中パソナ会長、TVで顔を真っ赤にしてブチ切れる!竹中平蔵「失礼だ!無礼だ!」
そして、この新自由主義者(ネオリベ、ネオリベラリスト。弱肉強食の競争社会でこそ経済成長できると唱える人)であるこの竹中氏と、次回登場する長谷川幸洋氏(東京新聞副論説主幹)が、派遣法改悪のために、派遣労働者に関して異口同音にデマをまき散らしています。
曰く
「派遣労働者は正規社員になることを望んでいない」
これには、あの田原総一郎氏でさえ
「本当かなあ、それ?」
と言ったのですが、これは、竹中氏が「正社員をなくしましょう」と発言したことで評判になった今年元旦の「朝まで生テレビ 元旦激論 2015 ド~なる?!雇用・賃金」でのことでした。
竹中平蔵 朝まで生テレビで「正社員をなくしましょう」 これが安倍政権が目指す新自由主義経済だ
竹中:それはね、さっきから根本的に重要なことをみなさん無視しているんですよ。
まずはみんな多様な働き方をしたいんです。いろんなアンケート調査があって、アンケート調査にバラつきがあるんですけれども、例えば協会がやったアンケート調査によると、派遣でやっている人の7割は「当面派遣でやりたい」というふうに言っています。
厚生労働省が派遣についてやった調査では、「正社員に変わりたい」という人と「非正規のままのほうがいい」という人を比べると、実は「非正規」と答える人が多いんです。数字はね。
辻元:えっ、それ何の調査?
竹中:これは厚生厚労省の調査です。つまりね、多様な働き方があるから、派遣でいるのがなんか悪いとか、かわいそうだとか、その前提はちょっと捨ててほしい。それはケース・バイ・ケースだということ。正社員で雇われたい人もいますよ。でも、そうじゃない人も多いんだということをまず大前提にしてほしい。
そしてもうひとつね……、
田原:本当かなぁ、それ?
竹中:本当なんですよ。田原さん、もうひとつ大事なことがある。どうして派遣が増えたかというと、それは簡単なんですよ。日本の正規労働は世界の中で見て、異常に保護されているからなんですよ。
1979年の東京高裁の判例でそのように解雇の4要件が示されて、同一労働・同一賃金を目指すと言うんだったら、
「正社員をなくしましょう」って、やっぱり、あなた(辻元氏)、言わなきゃいけない。
全員を正社員にしようとしたから、大変なことになったんですよ。
ログミーの竹中平蔵氏「正社員をなくしましょう」は暴論なのか? 問題部分を全文書き起こしより
今引用した書き起こしの、正社員をなくしましょうというところがクローズアップして噂になったのですが、問題はどうしてそう言えるかという根拠の部分です。
竹中氏が言っている厚労省の調査で
厚生厚労省が派遣についてやった調査では、「正社員に変わりたい」という人と「非正規のままのほうがいい」という人を比べると、実は「非正規」と答える人が多いんです。数字はね。
正社員で雇われたい人もいますよ。でも、そうじゃない人も多いんだということをまず大前提にしてほしい。
という部分が真っ赤な嘘なんですね。
竹中氏が応援していた橋下市長の大阪「都」構想説明会やタウンミーティングでもそうでしたが、話の途中でいきなり嘘のデータを出す。辻元議員が「えっ、それ何の調査?」だとか田原氏が「本当かなぁ、それ?」と、直感的におかしいと気付きはするのですが流されてしまうわけです。
誰だって、派遣の人が正規社員になりたがってないだなんておかしいと思うわけですが、厚労省のそういう調査結果があると言われたら、その場で確かめようがないですからね。
では確かめてみましょう。厚生労働省の
平成22年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況:結果の概要から
第8図 今後の働き方に対する希望(労働者割合)
(正社員以外の労働者で「現在の会社」又は「別の会社」で働きたい労働者=100)
どうですか?
派遣労働者の中で、現在の就業形態を続けたい人は41%、正社員に変わりたいは50.9%。正社員に代わりたい人が約10%多いことがわかります。
はい、竹中平蔵、嘘つき決定!
ちなみに非正規社員の中でも、パートの方が正社員になりたい率が18.8%、バイト=臨時雇用者の方が19.1%なのに、派遣労働者では51%ですから、その倍をはるかに越えていることがわかります。
なのに、竹中氏が会長をやっているパソナでは一生派遣のままにして、労働者からピンハネしようとしているわけですね。
ちなみに、下の表にあるように、派遣労働者の方々が正社員になりたい理由の1番は
正社員の方が雇用が安定しているから 84.2%
2番が
より多くの収入を得たいから 65.3%となっています。
つまり、期限付きは不安定だし、派遣業者のピンハネも嫌だということです。当然ですよね。みんな安定した雇用を求めているんです。
表16 正社員になりたい理由(労働者割合)
(正社員以外で、「正社員になりたい」労働者)
では、なぜ派遣労働者になっておられる方々が派遣労働を選んだかというと、下のグラフで分かるように、当然ながら、
正社員として働ける会社がなかったから 44.9%
が断トツの一位になっています。
これもパートタイム労働者では「自分の都合の良い時間に働けるから」が50.2%で飛び抜けて多いのと好対照になっています。派遣労働者ではこの理由の人は20.6%しかいません。
次回の、「労働者派遣法改悪 派遣労働者は派遣のままでいたいと嘘をつく竹中平蔵氏と長谷川幸洋東京新聞副論説主幹」2の長谷川幸洋編では、ここが大いに問題になってきますから覚えておいてくださいよ。
派遣労働者の方々と、パートタイム労働者の方々とは就業の目的やライフスタイルがまるで違うということです。
派遣労働者はフルタイムで働いている方が多いわけですから、正社員になれた方がいいんです。しかし、時間を区切って働いているパートやバイトの方はその方が都合がいい方も多いということです。
第7-2図 主な就業形態の現在の就業形態を選んだ理由(労働者割合、複数回答3つまで)
(各就業形態の労働者のうち、回答があった労働者=100)
以上、「厚労省の調査では派遣労働者の中で正規社員になりたい人より非正規のままでいたい人の方が多いんです」、と公共の電波を使って堂々と言ってのける竹中平蔵氏がどえらい嘘つきだということは、よくわかっていただけたと思うのですが、どうでしょうか。
竹中氏はこの番組の中で、厚労省の調査以外に
例えば協会がやったアンケート調査によると、派遣でやっている人の7割は「当面派遣でやりたい」というふうに言っています。
と言っているんですが、これはどこの協会のことだかわかりませんw
逆に、派遣労働者の方々が正規社員になりたいと思っておられるという実態は、民間の調査ではよりはっきりしています。
2013年4月に発表された楽天リサーチ「派遣労働者実態調査」結果報告書によると、派遣の方の本当は希望する働き方は
「正社員として働きたい」が断トツ首位で、60.7%。
と6割以上で、厚労省の調査よりさらに10%多くなっています。
今のままの働き方がよいは2割未満で19.3%です。
派遣会社で無期限がいいが19。2%、無期雇用の準社員などが19.0%ですから、いかに安定した働き場所を求めているかがわかるというものです。
[調査対象] 楽天リサーチモニターより、現在派遣社員として就労している全国20~69歳の男女
[調査日時] 2012年12月12日~2013年1月1日(インターネット調査)
[有効回収] 4000サンプル
しかも、派遣労働者の方々の中で、一回も派遣を止めて直接働かないかと打診されたことがないという方は70%になっています。
さらに、その打診されたことがあるという人の中で正社員にならないかと言われた人は17%しかいなくて、あとは契約社員にならないかとかパートをしないかなので、83%の派遣労働者は正社員にならないかと言われたことが一度もないことになります。
今回の労働者派遣法では、派遣先の会社は永久に派遣労働者を使い続けることができ、派遣労働者は一生派遣のままという改悪がされようとしているのですが、その代わり、派遣元業者に対し、派遣労働者のキャリアアップのための教育訓練の実施したり、または3年に達した労働者を派遣先に直接雇用するよう依頼したり、または新たな雇用先を紹介したりするなどの措置も求めています。
しかし、現にこれまでも8割以上の人が一回も正社員にならないかと誘われていないという事実からすると、派遣元の業者が正規雇用のための教育をしたり、派遣先に直接雇用してくださいと依頼するようにしても、全く意味がないことは明らかです。
さて、うちからリンクさせていただいている井上伸さんのブログ記事「世界で一番派遣会社パソナが活躍しやすい国」へ竹中平蔵氏肝いり派遣法改悪-若者は貧しさをエンジョイ?に、竹中氏の著書からのこういう引用がありました。
竹中 僕はニューヨークの5番街がすごく好きなんです。ミッドタウンから北のほうに向かって行くと、そこには人生と社会の縮図があります。このストリートに住むこともできるし、あちらのストリートに住むこともできる。それはあなた次第ですと。そこには生活の違いがあります。でも日本人は…。
幸田 格差って言いますものね。そんな違いがあったら格差だって(笑)。
竹中 住むストリートが違うどころじゃなくて、それこそ1メートル離れているだけでも格差だって言うでしょう(笑)。
確かに競争が厳しくなると、辛い思いをする人が出てくる。しかし、結果的に社会全体としての雇用は増えている。
幸田 新たに職を得られる人が出てくるわけですからね。
竹中 痛みをこうむる人もいれば、必ずメリットを受ける人がいて、経済全体としてはプラスの効果を間違いなく受けている。そういう社会を考えないといけない。
竹中平蔵・幸田真音著『ニッポン経済の「ここ」が危ない!』(文藝春秋、2008年2月刊)
実に、実に心寒くなる、1%の人々同士の会話ではありませんか。華やかなニューヨークの超豪華な高層階のビルの上から、はるか下に小さく見える99%の人々を見下ろしている人の言葉です。
わたくし、これを読んで、宮崎駿監督の名作アニメ「天空の城ラピュタ」のムスカの言葉を思い出してしまいました。
彼ら派遣業者の儲けのために、派遣の方が一生派遣に固定される、それどころか、正社員など直接雇用だった人がどんどん派遣労働におきかえられる、そんな社会には絶対してはならないと、あらためて強く思ったことでした。
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市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像 |
佐々木実 著 | |
講談社 |
第45回大宅壮一ノンフィクション賞受賞作品! 第12回新潮ドキュメント賞受賞作品!
「構造改革」「規制改革」という錦の御旗のもと、いったい何が繰り広げられてきたのか? その中心にはいつも、竹中平蔵というひとりの「経済学者」の存在があった。
“外圧”を使ってこの国を歪めるのは誰か? 郵政民営化など構造改革路線を推し進めた政治家・官僚・学者たちは、日本をどのような国に変えてしまったのか?
8年におよぶ丹念な取材からあぶり出された事実から描ききった、渾身のノンフィクション。
竹中平蔵こそ証人喚問を 佐高信 七つ森書館
竹中を証人喚問すべきだと思う理由は主に3つある。1つは木村剛を金融庁の顧問にし、彼が会長となった日本振興銀行が破綻したのに、その責任を問われてコメントを回避していること。2つ目は、郵政「民営化」にからむ「かんぽの宿」のオリックスへの払い下げ問題。そして、3つ目が“逃税疑惑”等の個人的な問題である。
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小泉純一郎と竹中平蔵の罪 佐高信の政経外科XI |
佐高信著 | |
毎日新聞社 |
参考記事
うちからリンクさせていただいている井上伸氏(国家公務員一般労働組合執行委員)の
【派遣法改悪】正社員を望む派遣労働者は6割と非正規の中で突出して多いのにデタラメ流布する長谷川幸洋氏
竹中平蔵氏肝いり派遣法改悪が強行されると「世界で一番派遣会社パソナが活躍しやすい国」が完成してしまう
うちからリンクさせていただいている渡辺輝人弁護士(日本労働弁護団常任幹事)の
パソナ竹中平蔵氏肝いりの労働者派遣法の規制緩和を許していいのか
違法な派遣企業を救済するための派遣法改正法案だった
今回新たにうちからリンクさせて頂いた佐々木亮弁護士(ご存知、ブラック企業被害対策弁護団代表)の
竹中平蔵パソナグループ会長の「正社員をなくしましょう」発言と派遣法改正案の関係
「くたばれ竹中平蔵」にも書いてますけど、悪いことをした人を逃げ切らせてしまうのが日本の本当に良くないところ。
「失われた20年」の戦犯竹中平蔵なんて、いまだにテレビに出たり、政府の委員をしているのがおかしい。
よろしかったら大変お手数とは存じますが、上下ともクリックしてくださると大変うれしいです!
竹中平蔵氏「正社員をなくしましょう」は暴論なのか? 問題部分を全文書き起こし
1月1日放送の『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)にて、竹中平蔵氏が「正社員をなくしましょう」と発言したことが議論を呼んでいる。非正規社員の待遇をテーマに討論されていた同番組内で、この言葉がどのような文脈から発せられたのかを検証するため、問題となっている竹中氏の発言部分の前後を含め書き起こしました。(画像は竹中平蔵氏公式HPよりhttp://www.takenaka-heizo.com/)
【スピーカー】
慶応大学教授 政府産業競争力会議議員 竹中平蔵 氏
自民党 参議院議員 山本一太 氏
民主党 衆議院議員 辻元清美 氏
獨協大学教授 経済アナリスト 森永卓郎 氏
ソフトブレーン創業者 宋文洲 氏
【モデレーター】
田原総一朗 氏
派遣法改正の議論が進んでいる
田原総一朗氏(以下、田原):派遣法がね、また緩むんでしょ? いつ緩むの?
辻元清美氏(以下、辻元):これは次の国会でどうなるかというところですね。
田原:なんで派遣法をもっと緩めるの?
山本一太氏(以下、山本):派遣法を緩めるかですか?
田原:もともと派遣法が緩められたのは小泉内閣でだよね?
森永卓郎氏(以下、森永):それは政府と派遣業界が癒着しているからですよ! 簡単に言うと。
山本:それは全然違いますよ!
森永:派遣業界と政権が癒着しているから、どんどん広げているんです!
竹中平蔵氏(以下、竹中):森永さんね、そうやって発言しているんだから、それは具体的に何なんですか?
森永:具体的に言うとですね、私は1986年のときに経済企画庁にいて、派遣法を最初につくったときの企画庁側のメンバーだったんですよ。そのときに有識者も含めて何と言っていたか。
戦後の口入れ稼業のような―ピンはねするような悪質な業者があったんですよ―、その被害を二度と繰り返してはいけないからポジティブリストで例えば、国際会議の通訳さんなんかは技術も高いし、ピンはねの恐れもないということで、逆に必要なときにだけ仕事を回したほうがはるかに働く人のためになりますね、と言って限定列挙していったんですんね。
それがネガティブリストっていう原則自由になって、そのときの議論で絶対に手を染めてはいけないと言っていた製造業への派遣労働を小泉内閣のときに解禁したんですよ。それが派遣切りの大きな……。
竹中:違うよ(笑)。まずは年代が違っている。何年に改正したっていう事実が違っていて、派遣法を改正したのは1999年だからね。はるかに前ですよ。
森永:ネガティブリストになったのはそうですよ。製造業への派遣は……、
竹中:1999年に決まっているんですよ。
森永:でも、実際に解禁したのは小泉さんでしょ。
竹中:それは法律で前に決まっていれば、予定通りにやるわけだから。
森永:止めようと思ったら、止められたでしょ。
竹中:基本的に申し上げたいのは、派遣とか色んな業種・働き方があるわけですけれども、正社員でも中小企業で不利益を受けている労働者がたくさんいると私も認識しています。
だから、そういうことに関してはブラック企業も含めて労働監督をきちんとしていかないといけないし、基本的には同一労働・同一賃金にもっていかなければいけない。これは一致した意見なんですよ。
同一労働・同一賃金の整備は可能か?
田原:わかるけど、それは建前でそんなことできるんですか? 同一労働・同一賃金なんてできるんですか?
竹中:オランダはそれをやったわけで、日本版オランダ革命をやりましょうというのが、実は第一次安倍内閣のときからずっと議論されているわけです。
田原:できるのそんなこと?
山本:党内と政府内でも議論しているんですけど、なかなか現状ではできにくい。正規と非正規で非常に働き方の区別がつきにくかったり、判断基準が難しい。
方向性としては辻元さんや竹中さんがおっしゃったように同一労働・同一賃金にもっていくべきだと思うし、給付付き税額控除は、マイナンバー制度が導入されればこれもやっていくべきだと決まっているわけです。ただ現実にはそんなに簡単にはいかないんですよ。
田原:同一労働・同一賃金っていうことを盛んに言っている新聞があるんですよね。非常に権威のある新聞ですよ。その権威のある新聞社の幹部に聞いたの。
その権威のある労働者の組合がボーナス闘争をやって、ボーナスの回答が出たと、しかしそのボーナスの回答を社内に張り出せなかった。なぜならそれに該当しない従業員がいっぱいいるから。権威のある新聞ですよ。だから、そういう問題があるのよね。
派遣法改正に関する議論の問題点
辻元:山本さんね、先ほどその方向に向かうことは一致しているとおっしゃったんですけど……、
田原:一致してるかな~……。
辻元:今回派遣法の改正案を出して、先ほどおっしゃられなかった点で、今まで非正規で3年間働いてこられた方はですね、3年経ったら正社員にという道が普通で、これは改正してそうなったわけですよね。
ところが、今回は3年間働いてきた人を別の部署にして、別の人をカチャっとここへはめこめばずっと派遣で働かせ続けられるように改正案を出そうとしている。
これは、今おっしゃっているのと反対の方向じゃないですか? だから、少なくとも同一労働・同一賃金の方向へ進むんであれば、安倍政権は逆のことをしようとしていると思うのでこれについて山本さんに答えてほしいです。
山本:今の制度だとね、3年経った人が正規になれるとは限らなくて、他の部署に移されたら延長されるわけでしょ。
辻元:されないですよ。その人は、会社として「正社員になりますか?」ということを聞いて、正社員への道筋を立てるというのが今の法律なんですよ。
だから、非正規で働く人にとっては希望だったわけですよ。きっちり真面目にやっていけばなんとかなるねって。ところが、そこをね……、
田原:それは違うと思う。今は3年経ったらクビにするんですよ。正社員になれっこないよ!
辻元:それでも法律ではできていたわけ。今ね、山本さんたちがやろうとしているように、3年でそうすれば(部署移動させれば)ずっと派遣で働き続けることを促進するんじゃないかということを懸念してみんな反対しているんです。
田原:辻元さん、今の派遣法で3年経った後で正社員になっていると思う?
辻元:でも、そういうことを更に規制緩和しようとしているんです。
山本:部署を変えて派遣を続けている人もいるんです。
辻元:今でもそういう現状なのに、これを合法的に3年たったら別の部署にとすればですね、続けられるというですね……、
宋文洲氏(以下、宋):辻元さん、そんな小手先の議論するよりも政治家としては、例えば日本は今5人に2人が非正規労働者なわけです、業種によって違ってもいいけど、そこを10人に1人にするとかそういう規制にしたらいいんじゃないですか?
同一労働・同一賃金を目指すなら「正社員をなくしましょう」と言うべき
竹中:それはね、さっきから根本的に重要なことをみなさん無視しているんですよ。
まずはみんな多様な働き方をしたいんです。いろんなアンケート調査があって、アンケート調査にバラつきがあるんですけれども、例えば協会がやったアンケート調査によると、派遣でやっている人の7割は「当面派遣でやりたい」というふうに言っています。
厚生厚労省が派遣についてやった調査では、「正社員に変わりたい」という人と「非正規のままのほうがいい」という人を比べると、実は「非正規」と答える人が多いんです。数字はね。
辻元:えっ、それ何の調査?
竹中:これは厚生厚労省の調査です。つまりね、多様な働き方があるから、派遣でいるのがなんか悪いとか、かわいそうだとか、その前提はちょっと捨ててほしい。それはケース・バイ・ケースだということ。正社員で雇われたい人もいますよ。でも、そうじゃない人も多いんだということをまず大前提にしてほしい。
そしてもうひとつね……、
田原:本当かなぁ、それ?
竹中:本当なんですよ。田原さん、もうひとつ大事なことがある。どうして派遣が増えたかというと、それは簡単なんですよ。日本の正規労働は世界の中で見て、異常に保護されているからなんですよ。
1979年の東京高裁の判例でそのように解雇の4要件が示されて、同一労働・同一賃金を目指すと言うんだったら、「正社員をなくしましょう」って、やっぱり、あなた(辻元氏)、言わなきゃいけない。全員を正社員にしようとしたから、大変なことになったんですよ。
法改正の目的は、解雇に関するルールの明確化
田原:竹中さんの言った正規社員を解雇するときの4要件というのは、人員削減の必要性、解雇回避の努力、人選の合理性、解雇手続の妥当性。4つないといけない。
竹中:実はそれが判例なので、非常に不明確だというところに問題があるんです。だから、大企業のように、訴訟リスク……これやると訴訟をされると思うところは、なかなか解雇できない。
田原:そして本当に訴訟に負ける。
竹中:そうです。一方で、うちなんかは訴訟されるわけがないと思っている中小企業は、平気で正社員といえども解雇しているんですよ、今。だからそのルールをきちんとつくることが重要なんですよ。
森永:竹中さんの言っている事実認識がすごく違うのは、実はOECDが雇用者保護の厳格性を綿密に調査して比較しているんですよ。さっき竹中さんがオランダモデルにしろと言ったんですけど、正社員の雇用保護の厳格性は、日本よりもオランダのほうが圧倒的に高いんですよ。
つまり、ものすごく厳しいんですよ。解雇には、地方労働委員会の許可が必要なのですよ。ほとんど認められないんで。
竹中:それは日本の場合、中小企業にそれが適用されていないからなんですよ。だから、OECDの調査ではそうなるわけで、厳しいルールも必要なんです。ただ、今は「ルールが明確ではない」ということが重要なんです。
宋:その通り。
竹中:それを明確化しようと言ったら、解雇自由化という議論に歪められるんですよ。
(該当部分ここまで)
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