東日本大震災:福島第1原発事故 米が推計の累積被ばく線量公表 日本より精緻な分析
◇80キロ圏内で年1ミリシーベルト超え
2011年4月21日毎日新聞 【ワシントン海保真人】米エネルギー省は、東京電力福島第1原発の周辺地域で事故後1年間に受ける推計の累積被ばく線量の予測図を発表した。推計では、日本政府が「計画的避難区域」の基準とした年間被ばく線量20ミリシーベルトの範囲が、原発から半径30キロ圏を超えて北西方向に40~50キロ程度まで広がっており、先に日本政府が示した汚染拡大の予測とほぼ同じ内容となった。一方、30キロから米国が自国民に退避を求めた80キロまでの広範囲で、平常時の人工的被ばく限度1ミリシーベルトを超える恐れがあることを示している。以下続く
文科省「学業継続も考慮した」 福島の学校の屋外活動制限
文部科学省の田村厚雄防災環境対策室長は20日未明、福島県災害対策本部で記者会見し、同省が19日に福島県内の小中学校などで屋外活動を制限する放射線量の暫定基準を「年間20ミリシーベルト(毎時3・8マイクロシーベルト)」に定めた根拠について、「安全と学業継続という社会的便益の両立を考えて判断した」と説明した。
20ミリシーベルトは、国際放射線防護委員会(ICRP)の基準(年間1~20シーベルト)のうち最も高く、原発労働者などと同レベルという。
19日夜の最初の記者会見で、「子供の基準として適切か」「決定の根拠を説明すべきだ」などの質問に対して回答に窮する場面が相次ぎ、未明の再会見となった。
OurPlanetTV 2011/04/21
福島老朽原発を考える会をはじめ3団体の呼びかけで21日、文部科学省が児童の放射線許容量を年間20ミリシーベルトとする安全基準を出したことに関して、その数値を撤回するよう交渉を行った。出席した文部科学省と内閣府原子力安全委員会の担当者は、ほとんどの質問に対して回答することができず、子どもの安全基準の根拠が不透明であり、きちんとしたプロセスがとられていない可能性があることが明らかとなった。
交渉に出席したのは、文部省のスポーツ青少年局学校健康教育課や原子力安全委員会事務局などの係長クラス4人。文部省の担当者に対して、主催者側から「20ミリシーベルトが放射線管理区域よりはるかに上回るレベルであることを理解しているか」との質問に対し、「個人的に、放射線管理区域は存じていない」と回答。管理区域の線量レベルが年間5ミリシーベルトであり、労働基準法上18歳以下が働いてはいけないことになっていることや、20ミリシーベルトは原発労働者が白血病になった際、労災認定されるレベルであることなどを知らなかったことから、会場からは「そんなことを知らずに決めていたのか」との声があがり騒然とした。
また、20ミリシーベルトという安全基準を誰が決めたのかとの質問に対し、内閣府原子力安全委員会の事務局担当者は、19日に内閣府原子力安全委員会が「問題なし」と決定し、助言したと回答。しかし、5人の委員が会合を開いた事実はなく、また議事録も見たことがないという。
更に、国の設定した20ミリシーベルトには食物などや土ホコリなどによる内部被ばくなどは含まれてないことがも判明し、再び会場は騒然とした。
1時間半近くにわたる政府交渉の結果、市民からは、子どもたちは既に校庭で遊び初めており、一刻も猶予がないとして、(1)20ミリシーベルトの基準を撤回して欲しい(2)少なくとも、20ミリシーベルトを安全とする根拠や審議の過程等が示されるまでは、20ミリシーベルトを撤回して欲しい、との提起がなされた。これに対し、政府交渉の調整にあたった福島瑞穂事務所は、すぐに入手可能な回答は今日21日の夕方までに、また新たに検討すべき回答は明日22日の午前10時までに回答を得るようにすると確約、政府交渉は終了した。OurPlanetTVがこの模様をUSTREAM中継をしたところ1300人が視聴。出席した担当者がほとんど回答できないことに対して怒りのツイートが相次いだ。また、若い担当者しか出席しなかったことに対し、「なぜ責任者がこないのか」といった声が殺到。OurPlanetTVの事務所にも、「なぜ、文部科学省は責任者をよこさないのか」と怒りの電話が入った。
学校などの放射能汚染に関しては、原発震災復興・福島会議が福島県に対して、0.6μSV/h以上の学校の授業中止と学童疎開を求めて要望書を提出している。
放射線による被曝、なかでも内部被曝については、細胞分裂が活発な青少年ほどその影響が深刻です。上に出てくるのと同じ国際放射線防護委員会(ICRP)が、1968年には、学校教育上の「18歳までの生徒に対しての学校における放射線防護」について考え方を示し、一般公衆の線量限度の1/10以下にすべきと勧告しています。まして、原発労働者と同じレベルでいいはずがありません。
もともと、「平時」の年間放射線許容量を大人でも1ミリシーベルトとしていたのに、「緊急時」にはその基準を20倍にあげるというのが全く不合理です。緊急時になると人間が20倍も放射線に対して強くなると言うのなら話は別ですが(苦笑)。
上の記事にもあるように20ミリシーベルトは、国際放射線防護委員会(ICRP)の基準(年間1~20シーベルト)のうち最も高く、原発労働者などと同レベルで、20ミリシーベルトは原発労働者が白血病になった際、労災認定されるレベルです。
もともと、私はICRPの基準も甘いはずだと思っています。放射性物質を巡る安全性の問題は、原子力発電だけではなく、核兵器の問題も絡んでいます。たとえば、アメリカの核兵器開発予算は国防総省の軍事費としてではなく、エネルギー省の予算で行なわれている部分が大きいのです。劣化ウラン弾の問題について、戦車を貫く重い爆弾が必要だと言うことで、放射線の影響を過小評価していますが、湾岸戦争症候群といわれる原爆症に非常によく似た症状が米軍丙に出ているのは周知の事実です。放射線の影響を過小に見積もりたいという要請は、電力会社だけではなく、軍部からもあるわけです。ですから、私はICRPやIAEAの基準や判断も怪しいものだと思っており信用していません。
だいたい、学業継続を考慮して、許容される被ばく線量限度をあげて、子どもをかえって危険にさらしてどうするんですか。文科省はバカですか!?
そう考えると、二重三重の意味で、今回の年間20ミリシーベルトを基準とする政府の方針は全くナンセンスだし、子ども未来法律事務所としては黙っていられません。
福島第1原発事故を受け、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)は21日、原発の周辺住民や作業員に「健康管理手帳」を交付し、定期的な健康診断を実施するよう求める要請書を菅直人首相と東京電力、厚生労働省などに提出した。
東京都内で記者会見した田中熙巳事務局長(78)は「被爆者として放射線被害に苦しんできた私たちは非常に心を痛めている。放射性降下物による障害は、相当の時間がたってから現れることがほとんど。被災状況をきちんと記録しておくことは重要だ」と指摘した。
放射線を浴びたとみられる住民と、事故処理に当たっている作業員らに、国が健康管理手帳を発行し、年1回以上の国費での定期健診を保証するよう要望。放射線被害について正確な情報を提供し、風評被害や被災者への差別をなくすよう求めた。
被団協によると、原子力安全・保安院は面会での要請書受け取りを拒否したため、郵送した。
2011/04/21 19:51 【共同通信】