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東日本大震災でのいわゆる二重ローン問題の救済策で、住宅ローンの返済免除を受けるために資産の大半を手放さなければならないという現在の条件は厳しすぎるという指摘を受けて、救済策を運営する全国銀行協会や弁護士などでつくる「個人版私的整理ガイドライン運営委員会」は、被災者に最大500万円の現金が残るよう条件を緩和する方針です。
2012年1月23日付け河北新報の記事より
被災者の残金上限、500万円に 債務整理後
東日本大震災の被災者が、新たな債務を抱える「二重ローン問題」で、被災者の債務減免を調停する第三者機関「個人版私的整理ガイドライン運営委員会」が、債務整理後に被災者の手元に残す資金の上限を、500万円にする方針を 固めたことが23日、分かった。運営委が25日に正式に発表する。
破産法で定めている破産者の手元残金の上限は99万円が原則で、大幅な拡大となる。
500万円は、新居の購入費用や事業の再建に向けた資金に使うことができ、事業や生活の再建を支援する狙い。
金融機関と被災者が債務減免を話し合う「私的整理」が円滑に進むよう目安とする。
東日本大震災では、被災した住宅と建て替える住宅とでそれぞれ住宅ローンを抱えるいわゆる二重ロー ンが問題となり、被災者が自己破産せずに住宅ローンの返済が免除される救済策が2011年8月に導入されました。
しかし、住宅ローンの返済免除を受けるにあたっては、当面の生活資金として義援金などを除くおよそ100万円の現金以外の大半の資産は処分することが条件になっています。
この条件が厳しすぎることから、救済策の導入か ら5か月がたっても免除の申請をした被災者は、100人余りにとどまっており、個人版私的整理ガイドライン運営委員会は条件を緩和する方針となりました。
具体的には、被災者が手元に残すことができる現金を、保険金を受け取った後もこの制度を利用できるように、現在のおよそ100万円から最大500万円に引き上げる方向で調整を進めたというわけです。
こちらの記事に窓口の連絡先などをまとめていますので是非ご覧ください。
被災者の皆さん!個人の二重ローンの減額免除!債務の私的整理対策窓口が相談開始!書式追加
津波や地震などの災害の被害に遭うか遭わないかは個人の努力ではどうしようもないことです。
こうした場合に生じる損失を、全国民が広く薄く負担して補うことを、憲法学では損失補償と言います。
東電の違法で過失ある不法行為に対しては損害賠償。誰の違法行為によるものでもない個人の特別な損害については損失補償です。
憲法29条3項が求める完全な損失補償の観点から言えば、被災者が債務整理をしなければいけなくなるのは十分な補償の姿とは言えません。損失を受ける前の状態に戻すのが損失補償ですから。
しかし、500万円まで個人財産が残るというのは阪神・淡路大震災においては考えられなかった制度です。
大前進といえます。
全国に避難されている方々も含めて是非、弁護士などに相談され、生活再建の一歩を歩み始めてくださいね。
東日本大震災 福島原発事故 日本弁護士連合会 全国無料・有料法律相談窓口、電話相談連絡先
■■■一般社団法人個人版私的整理ガイドライン運営委員会■■■
「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」の運用の見直しについて
一般社団法人個人版私的整理ガイドライン運営委員会(理事長:高木新二郎)
では、昨年8月の「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」(以下「ガ
イドライン」)の適用開始以降、相談・申出の受付や登録専門家の紹介などを
行い、個人債務者の生活や事業の再建を支援してきたところです。
当委員会では1月23日に運営協議会を開催し、仙台地裁における自由財産拡
張の認定例の公表を踏まえ、下記の通りガイドラインの運用を見直しましたの
でご案内申し上げます。
今後とも東日本大震災により被災された方々の生活再建、ならびに被災地の
活性化に貢献できるようガイドラインの運営に努めて参る所存です。
記
1 自由財産たる現預金の範囲を、法定の99万円を含めて合計500万円を目安
として拡張します。なお、拡張する自由財産の運用にあたっては、例外的な事
情がない限り500万円を上限とし、また被災状況、生活状況などの個別事情に
よっては減額もあり得ます。
2 現預金以外の法定の自由財産(および義捐金等特別法による現預金等の自
由財産)は、法律の定めに従い、本件とは別の自由財産として取扱います。
3 地震保険中に家財(差押禁止財産)部分がある場合には、状況によって柔
軟に対応します。
4 既に返済したローンの弁済金は、今回の拡張により自由財産になるとして
も返還できません。
以 上
被災者の方々あきらめないで!と思われた方は
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阪神淡路まで遡及して貰いたいのはやまやまですが。
この一歩を踏出すだけでも、どれ程の人々がどれだけの労苦を重ねた事か。
少しずつでも進んで行かなくてはなりません。
道は遠くまた険しい。ここから見るとダラダラ坂みたいだが。
そして、忘れないで下さい。阪神淡路でもいまだ猛威を振い続けている「復興災害」を。
大きな危機と災害を乗り越えるには、ただ単に耐えているだけでは駄目でして、一歩また一歩と一歩後退二歩前進で、前に行くしかない。
ようやく、今年に入って、遅ればせながら復興の兆しが見えて来たので、被災者の方、支援する行政、ボランチアなどが、人権保障の立場を確保する勇気を持って、立ち上がって頂きたい。