権利としての生活保護法―その理念と実務 [単行本]
森川 清 (著) あけび書房
2012年1月20日午後7時10分ごろ、札幌市白石区のマンション3階一室で女性2人が死んでいるのを、北海道警札幌白石署員が発見しました。
部屋に住んでおられたのは40代の姉妹。
知的障害のある妹とみられる女性がやせ細っていて、同署ではお姉さんが脳内出血で病死された後、妹さんが凍死したとみています。
遺された携帯電話に「111」の発信記録が何度も残っており、障害のある妹さんが警察や救急車に何度も助けを求めておられたようで。。。。なんとも痛ましい話です。
この件について、2012年1月23日付け読売新聞はこう報じています。
姉は2010年6月から11年6月の間に3回にわたって、札幌市白石区役所に生活保護の相談に訪れていたことが23日、同区役所への取材でわかった。区役所は、受給資格はあると説明したが、姉は「できるだけ自分でやっていきたい」などと話し、申請はしていなかったという。
取材が甘いですね。。。。
下の本が暴露しているように、今や、生活保護は窓口でそもそも申請をあきらめさせる「北九州方式」が常識なのを、読売新聞は知らないのでしょうか。
生活保護「ヤミの北九州方式」を糾す―国のモデルとしての棄民政策
「生活困窮者は死ね」と言うのか。「福祉が人を殺す都市」と言われる北九州市。それは国の生活保護政策の手本である。しかし「ヤミの北九州方式」は、旧厚生省天下り官僚の下で造られた、「国の生活保護切り捨てモデル」であり、厚生労働省の指導と通知によって日本全国に広がっている。
その点、2012年1月24日付け毎日新聞は
この姉は約1年半前から3回にわたり区役所に生活相談に訪れ、生活保護申請の意向をみせていたことが、市役所への取材で分かった。姉は自身の仕事や妹の世話をしてくれる施設も探していたようで、その最中に急死し、連鎖的に悲劇が起きたとみられる。
札幌市保護指導課によると、姉は10年6月、11年4月、同6月の計3回、区役所を訪れ「生活が苦しい」と訴えた。2人の収入は中程度の知的障害 がある妹の障害年金だけだったとみられる。昨年6月、姉は「今度、生活保護の関係書類を持ってくる」と言って必要な書類を聞いて帰ったが、その後は相談がなかった。
と報じています。生活保護申請の意向を見せていたけれども、役所がさせなかった、というのが真実でしょう。
妹さんの障害年金は障害2級としても月6万数千円でしょうか。それで大人二人がやっていくのはとても無理です。
どうして、三度も相談に来ているのに、区役所は生活保護申請をさせないで帰してしまうのでしょうか。そして、命が失われていく。
貧困率過去最悪の16% 6人に1人は所得112万円未満 一人親世帯は半分以上貧困 子ども貧困率も最悪
生活保護とは、生活困窮者に対し、憲法25条1項で保障される生存権、すなわち『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を公費で保障する制度です。
これは、人が人たるに値する生活をするための、社会の最後のセーフティネットです。これがなければ、我々はこの生きづらい世の中で安全網なしに空中ブランコするように生きなければなりません。
冒頭の本にあるように生活保護が権利であり、お上から頂くものではないのだということが、生活保護に関する第1の誤解です。
私は一昨年の今頃、兵庫県の川辺でテント生活を送るホームレスの方々に、生活保護申請をするように説得してまわる活動をしたことがあります。テントを一軒一軒?まわるのですが、実に多くのホームレスの方々が、生活保護を受けることを良しとしないで断っておしまいになるのです。
ホームレス生活保護申請始末記2
ホームレスの方々ほど、健康的で文化的な最低限度未満の生活をしている人たちはおられないと思うのに。
そして、住所不定でも生活保護は申請できるし、申請が受理されれば月4万円強の家賃の扶助も出て、路上生活から解放されるのに、ほとんどの人が断ってしまうのです。
下の著作にもあるように、今の日本で生活保護受給者が200万人程度で済んでいるのは、実に、我々が生活保護受給権を生存権に基づく権利だと全く思っていないからだと思います。
現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護 (ちくま新書) [新書]
岩田 正美 (著)
生活保護は福祉事務所に申請して認められれば、食費や光熱費などの生活費、家賃などが支給されるほか、医療費は全額を公費から出してもらえることになっていますが、この申請自体をさせない、受理しないという窓口対応が全国で問題になっているのです。
生活保護を受給する条件がそろっている人が役所に行けばすぐに生活保護を受けられるのだろうというのが、下の本で書かれているように、生活保護に関する第2の誤解です。
厚生労働省によると、2011年7月末に過去最多の205万人を記録し、同年10月末時点では207万人まで数字を更新しました。これは戦後の混乱期を上回る水準です。
その原因は高齢化が進み、身寄りもなく困窮するお年寄りが増えたことや、長引く不況で職を失う人が増加し、働き盛りの受給者も目立ってきたことが要因と見られています。
こうした費用は、国が4分の3、地方が4分の1の割合で負担します。生活保護にかかる費用は年々増えていて、2009年度には3兆円を突破しました。
この費用をなんとか抑制しようと言うことで、国でもどこの地方自治体でもなんとか生活保護件数を減らそうとしているわけです。
例えば、南相馬市など東北の複数の自治体では、被災者が義援金や東電の仮払い保証金を受け取ると収入があったとみなして、生活保護を打ち切ることはやめようとしないのです。
南相馬市 原発の交付金辞退して被災者の生活保護費は打ち切り 優先順位を間違っている
生活保護「改革」ここが焦点だ! [単行本] あけび書房
尾藤 廣喜 (著), 吉永 純 (著), 小久保 哲郎 (著), 生活保護問題対策全国会議 (監修)
生活保護制度に対する攻撃がずっと続いていますし、「税と社会保障の一体改革」なるものの中で、これからますます激しくなると思われます。
たとえば、暴力団員が生活保護を不正受給していたことなどがことさら取り上げられますが、200万人の受給者の中のほんの一握りの不心得者(1000人のうち数人程度と言われている)をクローズアップして、生活保護全体が悪用されているなどと言うべきではありません。
また、医療扶助制度を悪用して、大阪などでは、多くの医療機関を受診して大量の向精神薬を入手した受給者が、インターネットで薬を転売したり、奈良の病院が、架空の治療や不必要な手術で診療報酬を不正受給した事件なども取り上げられます。
確かに、2009年度の実績を見ると、受給者の医療費である『医療扶助』は保護費全体の48・3%でした。過去10年の実績を見ても、医療費は50%前後で推移してい ます。この抑制は巨額の財政赤字を抱える日本では急務です。
しかし、そもそも受給者の3割以上が病気や障害のあるから働けずに生活保護になってしまった方々で、高齢者も4割を超えているので、当然、医療機関にかかることが多い傾向にあるのです。
生活保護では自己負担がないだけに、安易な過剰受診や不必要な検査が横行しているという指摘もあります。
確かに、厚労省が2009年度の受給者の受診状況を調べたところ、2日に1回以上の高頻度で、3か月以上続けて通院した『頻回通院者』が全国で1万8217人で、うち3874人が、自治体に『過剰受診』と判断され指導を受けました。
けれども、全体で200万人中2万人以下、必要があって何度も病院通いする方を含めてもわずか1%未満の話なのです。いかに、日本の生活保護の方々が制度の範囲内で慎ましく生きておられるかがわかります。
下の本に書いてあるように、生活保護受給者のかなりの部分が制度を悪用しているという印象は全く違います。これが、生活保護に関する第3の誤解です。
北海道では、2012年1月12日にも、釧路市のアパートで男性(84)と妻(72)とみられる男女の遺体が見つかり、妻は死後約40日で病死とみられ、夫は死後約20日で、凍死、でした。。。。
人の最期というものはこうであってはいけないのではないでしょうか。
妻は認知症の夫を介護していたということで、釧路署は妻が死亡した後、夫が助けを求められず死亡したとみていますが、このご夫婦は当時、生活保護や介護保険のサービスを受けていませんでした。
冒頭の亡くなられた札幌の姉妹が住まわれていた部屋のガスは昨年11月末に止められ、電気も止まっていたそうです。
これらの方々は、この冬、釧路や札幌でどんなに寒い思いをして亡くなられたのでしょうか。
こんなことが続く日本で考えるべき社会保障の改革って、本当に社会保障費の削減だけなんでしょうか。
東日本大震災 被災者の皆様 積極的に生活保護申請しましょう 福祉事務所の対応に問題あれば法律相談を!
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それに対し、生活保護を受けるべき人が、汚点(stigma)となることを恐れて受けとらない例が多数あるので、本来受給されるべき人は、もっと多いでしょう。
心配なのが、大阪市です。橋下市長は、プロジェクトチームを組むと言ってましたが、この辺の事情を理解しているのでしょうか。困窮して死亡する例が出るのではないでしょうか。もちろん大阪だけの問題でなく、日本の問題です。
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知的障害は成人後にはありませんので、基礎年金になります。
障害基礎年金2級(年額)788,900円+*子の加算
子はいないので(年額)788,900円、
月額6万6千円ありません。
1級で年額96万円です。
それでも生活できません。
10万円あれば生活費だけでしたら何とか生活できますが、役所は固定資産税とか国保税など容赦なく取り立ててきますし、とても生活できるものではありません。
それと福祉事務所で勤務したことがありますが、ヤクザの生活保護受給がかなり多く、国もそれをある程度認めています。
北九州市はそのため日本一の生活保護率でした。
今年から反貧困弁護士になろうと思っています。
ビギナーですのでご指導のほど、よろしくお願いいたします。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120124-00000032-mai-soci
貧困世帯では医療費の3割負担が出来なかったのではないでしょうか。
やっぱり、根本的には景気を良くして財政事情の改善しかないのかもしれません。
ところで、先生のコメントで路上生活者の方々に生活保護申請を勧めたが断られたというご指摘がありました。
以前、うちの近所でおじさんが今日のような寒い日にブルブル震えているのを見かけまして。
家にあった布団を持ち運びがしやすいように、布団入れにいれ、持参しました(布団はキレイです~笑)。
が、
「お兄ちゃん、いらないから持って帰っていいよ」とおじさん。
どうみても、「布団」は必要なんですが断られたのです。
あとで考えてみると、おじさんにも「プライド」があったんだなぁと気がつきました。
同じような状況だったら、自分も断っていたでしょう。
このコラムを読んでふと以前のおじさんを思い出しました
一つ日本でも開業しようと思っている。
誰かわたしと一緒に出資して、新しい商売をしないかな?
興味と関心のある方は、ご連絡下さいませ!これって、本気であり、冗談ではない!
さて、貧困と生活保護問題は、ただ一方的に金銭の勘定でケリのつく、経済財政の問題解決によって、処理できるのではない。
人権保障の主要テーマは、「人間のプライド、すなわち人格の誇りを、いかにして堅持できるのか」、ということに、尽きる。
社会のあり方が、問題なのです。これは、人間社会の核心に迫るところの、文化ないし人倫の道徳哲学が、肝心の課題なのです。
第二次大戦の戦時中、その敗戦後にも、東京都上野公園の山などに、東京大空襲で焼け出された浮浪児が、溢れた。
日本の歴史的倫理・道徳、社会の陰湿な差別意識、人権意識の欠如など、昔から乞食の群れが彷徨い溢れ、生活保護の視点に欠けて来た。
その一番、はっきりと分かるのは、原爆投下二発の後、「二度あることは三度ある」にも拘わらず、第三回目の福島原発事故被曝と、放射性物質の無神経な核分裂の死傷を受け、「核・原子力に呪われた日本人の悲惨な現実だ!」
それでも、なお原子力発電を、日本国政府、地方公共団体は、原発運転停止をストップして、”非核法案”を制定できないのは、なぜか?
ドイツを、見習え!
難しいが、志を集めてやれば、できる。皆さんの後を継いで、勉強してみたい。
長い書き込みになってしまい、自分のブログに記事として書きました。
こちらの記事を紹介させて頂きました。
事後報告で申し訳ありません。
ご不快でしたら記事削除します。
いろいろ考えさせられました。
ありがとうございました。
当の自分のブログのリンクを貼るのを忘れました。
http://blog.goo.ne.jp/t-i801025/e/94d1f11d729ce92a78412d8855cac391
失礼致しました。