ロシアのプーチン政権がバルト三国のエストニアとの国境を示すブイを撤去。ウクライナとの停戦にはロシア軍がウクライナ領土の18%を占領しているという「地上の現実」をウクライナが受け入れるべきだとうそぶく。
すべてが駆け引きだ。
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東京弁護士会にいるとそういう事件は来ないんですが、兵庫県弁護士会にいると田舎の方での隣地との境界争いの事件が来るんですね。
印象的だったのは、ある高齢の女性が自分のところの田んぼと隣の田んぼの境のあぜ道をスコップで長い時間をかけて崩していって、とうとう双方の土地の境界を示すために測量の時に自治体が埋めた杭を引っこ抜いちゃったという事件(汗)。
そんなことをしても今は航空写真もありますしね。
だいたい田舎の土地なんであぜ道を数十メートルを何センチかずつ削っても、何万円分にもならないんですけど、農家に嫁いだ方の土地への執着ってすごいんですよね~~(-_-;)
わたくし、夜になるとずっとガリゴリ削られてストレス満開だった方々の依頼で、隣地との境界を破壊するのは境界破壊罪といって5年以下の懲役または50万円以下の罰金になる立派な犯罪なんですよと、やんわり𠮟りに行くことになりました。
そんな記憶に埋もれていた事件を思い出させてくれたのが、国境を越えて隣国ウクライナを侵略中のプーチン大統領です。
バルト三国の1つエストニアは2024年5月23日、ロシアの国境警備隊が未明に両国の国境を示す目印になっていたブイを撤去したと発表しました。
エストニアはロシアが2022年2月24日にウクライナ侵略を開始して以来、国境地帯でロシアとの緊張が高まっていると主張してきました。
これに対してロシア政府は他国に侵略するつもりはないと弁明していましたが、現に国境を示すブイを持って行ってしまったのですから、これはまたロシアが国境を越えて今度はエストニアの領土を奪う意図があると言われても仕方がないでしょう。
これについて、EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表(外相)は
「国境での今回の出来事は、バルト3国の海陸の国境などでのロシアの広範な挑発およびハイブリッド行動の一環」
だと指摘し、
「容認できない」
と非難しましたが、プーチン政権の遵法精神はまさにさっきの田舎のおばあちゃん並みです。
さて、エストニアとロシアの関係と言えば、2024年2月12日に、プーチン政権はエストニアのカヤ・カラス首相や同じくバルト三国であるリトアニアのシモナス・カイリース文化相らを刑事事件で「指名手配」しました
その容疑として、ロシア大統領府は指名手配の理由としてカラス氏らバルト3国の閣僚の「敵対行為」を挙げ、ロシア内務省の指名手配被疑者データベースには、「刑法に基づく指名手配」と表示されているそうです。
この件に関して、ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は指名手配を受けた3名は
「歴史的記憶とわが国に対する敵対行為に及ぶ者」
だと説明し、ロシア国営タス通信(TASS)は先に治安筋の情報として、3名は第2次世界大戦時の
「ソ連兵(をたたえる)記念碑を破壊・破損」
した罪に問われていると報じています。
ロシアのプーチン政権がソ連時代の記念碑の撤去を進めたエストニア首相らを指名手配。ロシアでスターリン礼賛が復活。殺人犯を釈放して兵士に、ライバルは政治犯として投獄。ソ連時代に逆戻りするロシア。
近年バルト3国では旧ソ連に占領されていたとの認識から、第2次大戦後に受け継いだ一部の記念碑がソ連時代を拒否する姿勢の表明として解体されているそうです。
そんなバルト3国が国内でソ連時代の記念碑を撤去したら閣僚を指名手配にする、というロシア政府の行為はもちろん内政干渉で、プーチン政権はバルト3国をまだロシア領だと思っているのかということになります。
プーチン大統領がカラス首相を敵対視するのは、かつて自分が大ファンだったテイラー・スウィフトがバイデン大統領を応援するのでトランプ候補が彼女を必死にディスるのと根は同じか(笑)。
テイラー・スウィフトさんがトランプ大統領に戦線布告!「武力で脅して、図々しくも道徳的に優れているふりをするわけ? 11月にあなたを落選させるわ」
エストニアとの国境を示す境界を破壊するとか、他国の指導者を指名手配にするとか、ロシア政府の法感覚は本当に異常で、国際刑事裁判所(ICC)からプーチン大統領などに逮捕状が出たことへの意趣返しのために、同裁判所の特別検察官や裁判官を指名手配したのと同じ発想です。
これらの事実は、まさに今のプーチンロシアは法治国家ではないことを端的に示しています。
そして、国境のブイも撤去するプーチン政権がエストニアなどバルト三国にはなぜか侵略しにいかないという、プーチン大統領の言葉を信じる人はいないでしょう。
逮捕状を出されたプーチン大統領をではなく、逮捕状を発令した赤根裁判官を責める親露派即時停戦派。
国際刑事裁判所(ICC)に逮捕状を出され南アでのBRICS首脳会議にはビデオ出席となってしまったプーチン大統領が、ICCの赤根裁判官を指名手配。法の支配を守るためにロシアの戦争犯罪は見過ごせない。
さて、ロイターが5月24日に「ロシア政府上層部に近い情報筋」の話として
『プーチン大統領は、かつてまとまりかけた停戦合意が西側の干渉で台無しになったことを苦々しく思っている。
情報筋は「プーチン氏は必要なだけ戦うこともできるが、戦争を凍結するために停戦する用意もある」と語った。』
と報道しました。
この情報垂れ流しも、フェイクとアドバルーン情報を混ぜてウクライナと西側諸国を混乱させようという「ハイブリッド攻撃」の一環なのでしょう。
ちなみにタス通信によると、ペスコフ露大統領報道官はロシアの目標達成が軍事作戦の完了条件だとし、ロシア政府が自ら流したであろうロイターのリーク報道を否定してみせました。
プーチン大統領はロシア軍が侵略したウクライナ4州の確保と、ウクライナの非ナチ化=ゼレンスキー政権打倒、非軍事化=ウクライナ軍の武装解除、中立化=NATO非加盟が前提でなければ絶対停戦しない。
またプーチン大統領自身、5月24日に訪問中のベラルーシで、将来的なウクライナとの停戦に関しては、侵略開始直後に行われた一連の停戦交渉でウクライナ側示したNATO非加盟などの立場に加え、
「地上の現実」
に基づいて実現されるべきだと述べています。
つまり、ロシアが停戦に応じるには、ロシア軍占領地域がロシア領だということをウクライナが認めることが必要だというわけです。
ガザ地区を侵攻しているイスラエルに停戦を求めるように、なぜか侵略されているウクライナ側に停戦を求める即時停戦派は、
「たかが領土だ、ウクライナはロシアに占領地をくれてやれ」
と堂々と言うべきなのです。
侵略しているロシアと侵攻しているイスラエルに即時撤退を求めるのが真に公平な立場というべき。
侵略されているウクライナに停戦を求めるなど、パレスチナ人に停戦を求めるようなもので、ダブスタというもおこがましい矛盾だ。
開戦直後の停戦協議が行われていた2022年3月の段階でもロシアが占領地を放棄するなどと言ったことは一度もない。
今ココ。2022年9月にウクライナ4州を併合宣言した以上、領土を返還することはロシア憲法にも刑法にも違反するのだからできるわけがない。
ウクライナ戦争開始から2年。ウクライナ市民の最新世論調査で「領土の割譲もやむなし」という和平派は19%、徹底抗戦派は74%で4倍。停戦か抗戦かを決めることができるのは主権者であるウクライナ人だけだ。
特にこの、「土地を追われるのは、体から魂を奪われるようなもの」という言葉を、何度も思い返している。 https://t.co/C94hkwT7nL
— 安田菜津紀 Dialogue for People (@NatsukiYasuda) January 12, 2024
「たかが」領土ではなく、人間が暮らしていくのは土地の上なのだ。
その土地を奪われるのはパレスチナ人にとってもウクライナ人にとっても身を切られるように痛いことだという現実を傲慢な「リアリスト」たちは直視すべきだ。
それを選ぶとしたらそれは主権者たるウクライナ人だけができることで、外野が押し付けることを許される選択ではない。
イスラエル軍のガザ侵攻から100日。追い立てられるパレスチナの民「自分たちが先に立ち退いてしまえば次は隣が襲われる」「土地を追われるのは体から魂を奪われるようなもの」。「たかが領土」論の傲慢を知れ。
ドナルド・トランプ大統領候補がロシアがNATO加盟国に攻撃してきても米国は支援せず、むしろ「好きに振る舞うようロシアをけしかけてやる」。プーチン大統領に戦争へのゴーサインを出すトランプ氏は最悪だ。
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ロシア、エストニアとの国境示すブイ撤去 EU「容認できない」
ロシア、エストニア首相らを指名手配 「敵対行為」で
【2月13日 AFP】ロシア当局は12日、エストニアのカヤ・カラス(Kaja Kallas)首相らを、刑事事件で「指名手配」したことを明らかにした。ロシア大統領府はその理由として、カラス氏らバルト3国の閣僚の「敵対行為」を挙げた。
ロシア内務省の指名手配被疑者データベースには、「刑法に基づく指名手配」と表示されている。罪名は記載されていない。 カ
ラス氏の他、同国のタイマル・ペテルコプ(Taimar Peterkop)国務長官、リトアニアのシモナス・カイリース(Simonas Kairys)文化相も指名手配されている。ウクライナ侵攻開始以来、ロシアとバルト3国の緊張がさらに高まっていることを示す動きだ。
電話取材に応じたロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)報道官は3氏について、「歴史的記憶とわが国に対する敵対行為に及ぶ者」だと説明した。
国営タス通信(TASS)は先に治安筋の情報として、3氏は第2次世界大戦(World War II)時の「ソ連兵(をたたえる)記念碑を破壊・破損」した罪に問われていると報じた。 近年バルト3国では、ソ連に占領されていたとの認識から、第2次大戦後に受け継いだ一部の記念碑が、ソ連時代を拒否する姿勢の表明として解体されている。(c)AFP
ベラルーシの首都ミンスクで同日行われたルカシェンコ大統領との会談後の共同記者会見で発言した。
プーチン氏はまた、ロシアの侵略で大統領選を延期しているウクライナのゼレンスキー大統領について「(本来の任期である今月20日で)国家元首としての正当性は終了した」と発言。将来的に停戦交渉が再開される前に、誰が正当な国家の代表者であるかウクライナ側が明確にしておくべきだと主張した。
一方、ロイター通信は24日、プーチン氏には現在の前線を停戦ラインとして停戦に応じる用意があるものの、ウクライナが拒否すれば戦闘を続ける意向だとする複数の消息筋の話を伝えた。タス通信によると、ペスコフ露大統領報道官は、ロシアの目標達成が軍事作戦の完了条件だとし、ロイターの報道を否定した。
侵略開始直後の停戦交渉を巡っては、ウクライナがNATO加盟を否定する「中立化」を受け入れる代わりに、ロシアは軍事作戦を停止することで合意間近に至ったものの、露軍による「ブチャ虐殺」の発覚などで最終的に成立しなかったとされる。ロシアは英国などがウクライナに停戦に応じないよう圧力をかけたとも主張している。
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単純な二分法ですね
実際はゲーム「信長の野望」じゃないでしょう、と思います
冒頭の「農家」の話、田舎の「農家」をバカにしていませんか?
さっき、ホトトギスが鳴きました
そちらは、ホトトギスも鳴かないような環境でしょうけど…その方が、本来は異常かと
「4つの類型」の「国境紛争」が今後激化する理由
https://toyokeizai.net/articles/-/475540?page=3
引用開始----
プーチン大統領は、ジョージア国内のロシア語圏の飛び地(南オセチアとアブハジア)の存在によって、「ロシア系住民を、どこに住み、どこで働いていようと守る」という誓約の本気度を示す豊かな機会を手に入れた。
この誓約の最終結果が、ロシアが自国とジョージア、そして問題の飛び地の間の国境地帯に確保した足がかりだ。2018年8月には、現状の国境を示す有刺鉄線のフェンスが一夜にして動かされていることが報告された。闇に紛れてフェンスの位置が変えられ、溝が掘られ、国境の移動を宣言する新たな標識が立てられたのだ。ジョージアの住民によると、その移動可能な国境は、時にはそれまでのジョージア領を何ヘクタールも取り込むほど大きく動かされることがあるという。この種の活動は衰える兆しを見せていない。
引用終わり----
現在、ジョージアは親露派政権が牛耳っている。先日、「外国の代理人法」が可決され国民の大きな反発を呼んでいる。2014年当時のウクライナのような事態になるかどうかだ。
「外国の代理人」法 他国への広がりに懸念も(油井’s VIEW)
https://www.nhk.jp/p/kokusaihoudou/ts/8M689W8RVX/blog/bl/pNjPgEOXyv/bp/p76RNk8Lp7/
親露派政権の動向によっては境界騒動をさらに加速させるかもしれない。
さて、5/21、ロシア国防省がバルト海のロシア海上国境線を引き直す提案をしていたようだ。
「Russia’s Defense Ministry proposes revision of territorial waters in Baltic Sea」
5/22,トルコ:アナドル通信社(Anadolu Ajansı)(表題で検索してください)
内容は、フィンランド湾東部のロシアの島々の南部におけるロシアの海上国境の調整を提案しているとし、「(領海を定義する)これらの地点の地理座標は、20世紀半ばの資料に基づいて作成された小規模な海図から決定されたものであり、現代の地理的状況と完全には一致していない」だとか。
フィンランド湾東部のロシアの島には、Moshchny島があって、WW2大戦の際にも登場する軍事的要衝。その他、フィンランド湾には、いくつかの島があり、中にはフィンランド海岸からわずか35kmにあるGogland島(2019年、軍用ヘリポートと給油所を建設)もロシア領となっている。ソ連・フィンランド戦争の結果であることは言うまでも無い。
スターリンはフィンランド全土を占領するつもりだったか? ここには様々な議論があるようだ。ヒトラーはそれを念頭に置いたか、フィンランドに武器支援を行った。独ソ戦の前哨戦がそこにあった。ソ連崩壊を嘆いたプーチン、ロシアのスターリン再評価……。NATOに加盟したとは言え、フィンランドの危機感は消えないだろう。そしてフィンランドのNATO加盟批判をする親プーチンの一部即時停戦論者の国際政治音痴ぶりも相変わらずだ。
冬戦争
http://trail.tsuru.ac.jp/dspace/bitstream/trair/315/1/KJ00005220947.pdf
その後国防省は理由無く引っ込めた。そしてブイ騒動である。こうしたロシアの揺さぶりはハイブリッド戦争の1コマなのだろう。周辺国を衛星国家とするため、いきなり武力行使するのではなく国内を不安定化させることを目的としている。繰り返されるジョンソン伝説などの情報工作もその一つ。
親プーチンの一部即時停戦論者は、歴史や詳細な情勢を認識した上でプーチンを分析すべきだ。