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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

東京地検特捜部による弘中惇一郎弁護士の事務所に対する強制捜査は、刑事弁護人に対する東京地裁と検察庁の見せしめと報復のための八つ当たりにすぎず許されない。

2020年01月30日 | 刑事司法のありかた

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 カルロス・ゴーン氏が日産自動車の労働者に対してやったことは、このブログでも再三批判してきました。

 また、ゴーン氏の今回の逃走劇については、どんな国でやったとしてもこれは違法で許されないし、彼の弁護団のやり方が褒められたものでないことも指摘してきたところです。

衝撃のカルロス・ゴーン逮捕。しかし物言えぬ日産の取締役たちも会社法上の責任を免れない。

ゴーン is  gone!! されど、ゴーン氏がやった日産労働者への人権侵害を忘れない。

「無罪請負人」を自認する弁護士がこういう言動をすることが、刑事弁護に対する市民の理解を阻害する。

 

 

 しかし、それとこれとは別。

 レバノンに逃亡した日産前会長カルロス・ゴーン被告人の弁護人を務めていた弘中惇一郎弁護士の法律事務所に、東京地検が2020年1月29日、「家宅捜索」=捜索差押をしました。

 この、弘中弁護士の法律事務所に対する今回の捜索・差押えは、権力の横暴に外なりません。

 

 

 まず第一に、強大な権力を有する国家機関である警察・検察と対峙して、被疑者・被告人の人権を守り、もって刑事司法全体の適正手続きを担保する弁護人の役割は極めて重要であり、これは憲法上も刑事訴訟法上も繰り返し保障されています。

 ですから、現在の刑事弁護人が弁護することに支障をきたすような捜査を、警察・検察が厳に慎むべきことは将来の被疑者・被告人、つまりは国民の基本的人権を保障するために必要不可欠なことです。

 

 

 また、刑事訴訟法は弁護士が委託を受けて他人の秘密に関わる物を保管している場合、押収を拒めると規定しています。この規定に基づいて、実際に弘中弁護士はすでに1月8日に東京地検の捜索差し押さえを拒否しています。

刑事訴訟法

(押収と業務上の秘密)

第105条
医師、歯科医師、助産師、看護師、弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、弁理士、公証人、宗教の職に在る者又はこれらの職に在った者は、業務上委託を受けたため、保守し、又は所持する物で他人の秘密に関するものについては、押収を拒むことができる。但し、本人が承諾した場合、押収の拒絶が被告人のためのみにする権利の濫用と認められる場合(被告人が本人である場合を除く。)その他裁判所の規則で定める事由がある場合は、この限りでない。

 

 

 弘中弁護士は刑事弁護人として被疑者であるゴーン氏の秘密を保持するための種々の権利が保障されているのですから、それにもかかわらずまた行われた今回の強制捜査に対しても、弘中弁護士が弁護人として当然の権利を行使してこれを拒否することは、東京地検特捜部はもちろん、捜索差し押さえ令状を発布した東京地裁の裁判官も重々承知していたはずの事です。

 それでも、あえて弘中弁護士の事務所に対する強制捜査の令状を東京地裁が発布し、特捜部が強制捜査を断行したことは、両者による弘中弁護士、ひいてはすべての刑事弁護人に対する見せしめの意味しかありません。

 国際的にみても、東京地裁がゴーン氏にパートナーと会わせないという人権無視の不当な保釈条件を出していたことを暴かれ、そのうえ逃走されたことに対する報復として、今回の捜索差し押さえを認めたと見られても当然のこととなります。

全部当たってる。

 

 

 そもそも、ゴーン氏の記者会見の直後に森雅子法務大臣がカウンターで記者会見をしたときに、日本の司法制度が暗黒でないと反論した最大の理由が、日本の捜査機関による身柄拘束期間が長いといっても、それは裁判所による逮捕令状・勾留状発布の際に「公正かつ客観的」な裁判所の審査を受けていることでした。

森雅子法相「ゴーン氏は無罪を証明すべきだ」と言ってしまい、ゴーン氏のフランス人弁護士に皮肉られて大恥をかく。ゴーン is  gone3

 ところが、今回の東京地裁の捜索差し押さえ令状発布により、捜査機関が令状請求をしたら、裁判所はほぼベルトコンベヤーのように令状を出してしまうのが当たり前で、裁判所なんてちっとも客観的でも公正でもないこともバレたわけです。

 これを機会に、日本の刑事司法制度を根本的に見直さないと恥の上塗りの連続です。

ゴーン is gone2 カルロス・ゴーン氏による日本の「暗黒」刑事司法制度批判は全面的に正しい。

 

 

市民の皆さんにぜひわかってもらいたいのは、ゴーン氏の「悪行」があったとして、そして今回の弁護団のやり方に問題があったとしても、それと裁判所や検察庁による権力の濫用の問題は分けて考えてほしいということです。

法治国家においてはまず憲法と法律が守られてこその勧善懲悪。

時代劇とは違うのですから、気に食わない人が懲らしめられてよかったではすみません。

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ゴーン被告逃亡 弘中惇一郎弁護士の事務所を捜索 東京地検

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捜索を受けたのは、日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告(65)の弁護を担当していた弘中惇一郎弁護士の東京 千代田区の事務所です。

東京地方検察庁は、中東のレバノンに逃亡したゴーン元会長が不正な手段で出国したとして、出入国管理法違反の疑いで捜査を進め、元会長の逃亡に協力した人物については、犯人隠避にあたる疑いがあるとみていて29日、この事件の関係先として弘中弁護士の事務所を捜索しました。

弘中弁護士によりますと、東京地検は29日の捜索で、ゴーン元会長が保釈中に面会した人物が記された面会記録を押収したということですが、元会長が使っていたパソコンや、ほかの資料については、依頼者の秘密を守るために法律で認められている権利に基づいて、押収を拒否したということです。

東京地検は、今月8日にも弘中弁護士の事務所を訪れ、裁判所の令状に基づいてパソコンを差し押さえようとしましたが、弁護団は拒否していました。

逃亡後、弁護団は「ゴーン元会長が自主的に日本に帰る見込みはない」という考えを表明し、弘中弁護士らは今月16日に、元会長の弁護人を辞任しています。

関係者によりますとゴーン元会長は、大型のケースの中に身を潜めて出国審査を受けずにプライベートジェットで不正に出国し、逃亡にはアメリカ軍の特殊部隊の元隊員らが関わっていたとみられるということです。

東京地検は押収した面会記録などを分析し、逃亡に至る経緯について解明を進めるものとみられます。

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弘中弁護士 「大変 不愉快 いろいろな思いある」

弘中惇一郎弁護士は29日、午後4時半すぎから報道陣の取材に応じました。

それによりますと、捜索で示された令状には、押収の対象としてゴーン元会長が使っていたパソコンや保釈中の面会記録のほか、ノートやメモなどが記載され、このうち保釈の条件で裁判所に提出する決まりになっていた面会記録以外は、依頼者の秘密を守るために、法律で認められた権利に基づいて押収を拒否したということです。

また、東京地検の係官らが事務所の捜索に訪れた際、弘中弁護士は出張のため不在で、事務所にいた弁護士が立ち入りを拒否したということですが、係官らは合鍵のようなもので事務所の鍵を開け、ゴーン元会長が使っていた会議室にはドリルで鍵を壊して中に入ったということです。

このほか弘中弁護士は数日前「面会記録などについて話が聞きたい」として、検察から事情聴取を要請され、拒否していたことも明らかにしました。

捜索を受けたことについて弘中弁護士は「大変だなとか不愉快だなとか、いろいろな思いがある」と述べました。
 
 
 

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3 コメント

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[権力を使った嫌がらせ] (バードストライク)
2020-01-30 15:07:12
検察は「面会簿を持ち去った」ということですが、弘中氏側は すでに面会簿の写しは提出しているそうなので、嫌がらせなんでしょうね。
村木厚子さんの裁判で、前田検事がフロッピーディスクに工作をした(? 正確な話は忘れましたが)のを見抜いたのが弘中弁護士だとか。
昔から憎かったんだろうなあ、で、「チャ〜ンス!ここで一矢」とばかり、捜索に入る、と。
でもきっとこの話、大多数の国民には「弘中ざまあ」と思われそうな気がする(悲観)
返信する
脱出の正当性が示された (ゴメンテイター)
2020-01-30 18:43:38
日産前会長カルロス・ゴーン被告人の弁護人を務めていた弘中惇一郎弁護士の法律事務所に、東京地検が2020年1月29日、「家宅捜索」=捜索差押をしました。

これでカルロス・ゴーン日産前会長が日本を脱出したことに、ますます正当性が出てきましたね。
そして、在日アメリカ兵が日本で罪を犯しても日本では裁かれない理由が明確になりました。彼らは本国に逃亡してしまいます。日本の司法制度の不備を理由に、アメリカ合衆国は犯罪者であるアメリカ兵ををかくまうのです。この理不尽を、カルロス・ゴーン氏の脱出劇のように大々的に報道してほしいものです。

では、私たち日本国民の大半は、この腐敗しきった司法にどのように対応すればいいのでしょうか。アベ友なら、罪を犯しても無罪放免ですから心配ないのでしょうが、愛媛の女子大生の例もあります。万が一にもでっち上げで拘留されたら。
うーん、その時にはあきらめるしかないでしょうね。何しろ、日ごろ良識ありと思っていた人権派弁護士さんたちも、マスコミ同様、「ゴーン被告の逃亡は犯罪」という言葉から始まるのですから。

「推定有罪」のマスコミ報道、自白強要のための長期拘留、恫喝と脅迫の取調べを行うための弁護士立ち合い拒否、うその自白をさせるための長時間の取調べ、等々、やめさせなければいけないことばかりなのに、野放しです。
弁護士も検察の味方?
でっち上げ逮捕や偽の証拠の提示、うその証言は、犯罪ですよね。私の知る限りでは、そのような事実が判っても、警察官も検察官も誰一人処分されていません。

これでは世界中から「経済三流、司法は四流、政治はランク外」と言われてしまいますね。

ところで、「諸外国の刑事司法制度」の表の中で「取調べの録音・録画」を日本が行っていることになっていますが、「全面可視化」には程遠いのではありませんか。でっち上げの隠蔽や、うその自白の補完に都合よく利用されているだけでしょう。
返信する
次は、 (ゴメンテイター)
2020-02-03 02:58:02
東京高検の検事長の定年が延長されました。

なるほど、では次は衆議院議員の任期の延長ですね。

「当分の間、任期を延期する。」

そんな閣議決定が出そうです。
議員でいつづけたい「野党」議員は、大歓迎でしょうね。情けない。
返信する

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